第18話 猛虎族の子供のジオを助けました
ライに髪飾りを買ってもらって私は再びライと手分けしてザキの捜索をしていた。
いろんなお店に聞き込みをするが誰も「猛虎族」を知ってる者はいない。
これだけ探しても手がかり無しかあ。
少なくともこの「火祭り」にはザキは来ていないのかも。
ドオオオオーン!!
その時火祭りの広場に轟音が鳴り響いた。
それと同時に人々の悲鳴が聞こえる。
な、なに!?何が起こったの!?
轟音のした方向を見ると火祭りをやっている広場の中央から大きな火柱が上がっていた。
祭りに来ていた人たちはみんな一斉に辺りから逃げようとパニック状態になっている。
「ミア!君はここで待っていろ!」
近くの出店で聞き込みをしていたライが私に叫ぶとライは広場の中央の火柱を目指して走って行く。
ライには待ってろと言われたが何が起こったのか私も知りたい。
私はライの後を追おうとしたが広場の中央から逃げ出してくる人波に呑まれてしまう。
ここで私が「透明人間」になっても意味はない。
なぜなら透明人間になっても私の身体はそこに存在するので逆流してくる人波をすり抜けられるわけではないからだ。
「ライ!」
ライの名前を呼ぶがライは巧みに人波を避けながら火柱に近付いて行ってしまった。
無理しないで、ライ!
あなたがケガするところなんて見たくないんだから!
私にはライの無事を祈ることしかできない。
すると私の耳に子供の泣き声が聞こえた。
声のする方に顔を向けると5,6歳の男の子が地面に倒れて泣いている。
おそらく逃げ惑う人々によって押し倒されて転んでしまったのだろう。
「わ~ん!うわ~ん!お兄ちゃ~ん!」
男の子はケガをしたのか立ち上がる様子がない。
このままじゃ、他の人にあの子が踏まれてしまうかも。
助けなきゃ!
私はその男の子に素早く近付いて抱き上げるようにして立たせる。
「大丈夫?」
「うわあ~ん!痛いよお~!」
男の子は足を押さえている。
足をケガしたのかしら?
骨折とかしてたら大変だわ。
だがこの場で男の子の足を確認しようにも逃げ惑う人波はまだ私と男の子に押し寄せて来ている。
ここではケガの確認はできないわね。
まずは広場から外に出ないと。
「ねえ、君、名前は?」
「ぐすん…ジオ」
「ジオね。お姉ちゃんはミアって言うの。あなたを安全な所に連れて行くからお姉ちゃんの背中におんぶさせてくれる?」
「うん…」
ジオという名前の男の子は私がしゃがんで背中を向けると私の背中につかまった。
そのまま私はジオをおんぶして立ち上がる。
これぐらいの体重なら大丈夫ね。
さっさと広場を出ないと。
なるべく急いで私は広場を出た。
通りにも広場から逃げて来た人々がたくさんいる。
仕方ないわね。一度、人のいない路地に入りましょう。
ジオを背負ったまま私は細い路地に入る。
そこには人はいない。
よし、まずはジオのケガを確認しないとね。
「ジオ。下に降ろすわよ。自分で立てるなら立ってみて」
「うん」
ジオを地面に降ろすとジオは一人で立てている。
どうやら骨折のような大きなケガではなさそうだ。
「ちょっと足を見るわね」
私はジオの足を確認すると膝が擦りむけて多少血がでているが他にはケガはない。
「これなら大丈夫ね。たいしたケガはしてないわ。ジオのお家に帰ったら傷薬を塗れば平気よ」
「でも、痛いよ、ミアお姉ちゃん」
再びジオは涙目だ。
「大丈夫よ。ジオは男の子でしょ?少しくらい痛くても我慢しないとダメよ。泣き虫の男じゃ女の子に笑われちゃうわよ」
「ぐすん…うん、お兄ちゃんにもよく言われる。僕は猛虎族の男なんだからすぐに泣くのはダメだって……」
え?今、猛虎族って言ったの?
「ジオは猛虎族なの?」
「うん。そうだよ」
もしかしてこのジオのお兄ちゃんがザキだったりするのかしら?
「ねえ、ジオのお兄ちゃんはどこにいるの?」
私はジオの兄がザキかもしれないと聞いてみた。
するとそこへ男の声がする。
「こんなところにいたのか。まったく逃げ足の速いガキだな。手間をかけさせやがって」
声のした後ろを振り返ると路地の入口から三人の人相の悪い男たちが近付いてきた。
こいつら誰なの?ジオの知り合い?
私はジオを自分の後ろに庇いながら男たちと対峙した。