第17話 ライから贈り物を貰いました
火祭りが行われている広場までやって来た。
広場の中央には大きな火が焚かれて祭壇らしきものもある。
やはり人も多い。
「ライ。ここにいる人たちに猛虎族を知っているか聞いてみるんですか?」
「ああ。とりあえず出店を出している者に聞いてみようと思う。猛虎族が客として来てないかどうかを」
なるほど。変わり者って言われてるザキもお祭りに来ている可能性はあるわよね。
「それなら手分けしてお店の人に聞いた方がよくありませんか?」
「しかし、それではミアとはぐれる可能性もあるし…」
「大丈夫です。ライの姿が見える場所にはいるようにしますから」
心配して渋るライを安心させるように私はニコリと笑みを浮かべる。
「う、うむ。それならば、お願いしようか。何かあったら必ず私を呼んでくれ、ミア」
「はい。ライ」
私とライは繋いでいた手を離して私は近くの出店に向かう。
この出店は髪飾りや腕輪などを売っている。
品物はけして高級品ではない。
目利きのできる私はそう見抜くが考えてみればお祭りの出店で高級な装飾品を扱っているはずはない。
それに値段を見れば品物に合った良心的な値段だ。
このお店の主人は正直者なのかもしれない。
主人に声をかけようとした時に私は一つの髪飾りが目に入った。
小さな桃色の花を模った可愛い髪飾りだ。
うわ~!この髪飾り可愛いな。
買って帰ろうかしら。
だがそこで自分の目的を思い出す。
いけないいけない、今はザキ探しが優先よね。
「すみません。ちょっとお聞きしたいことがあるんですが」
「いらっしゃいませ。お嬢様にお似合いの物がたくさんありますよ。どうぞお手に取って見てください」
出店の主人は笑顔で私に商品を勧めてくる。
「いえ、ちょっと聞きたいことがあるんですが」
「何でしょうか?」
「この辺りで猛虎族の人を見たことありませんか?」
「猛虎族?う~ん、記憶にないなあ」
主人は考えるように唸ったがすぐに笑顔で私に再び商品を勧めてきた。
「それよりこちらの髪飾りなどいかがですか?お客様の髪にお似合いになりますよ」
勧められた髪飾りは先ほど私が気になった髪飾りだ。
主人の目は人から情報を聞きたい時はタダでは教えてもらえないんだよと言ってるようだった。
ここの主人は抜け目がなさそうね。
仕方ないからこの髪飾りを買ってもう一度聞いてみようかしら。
そう思っているとそこにライがやって来た。
「ミア。有力な情報はあっただろうか?」
「あ、ライ。いえ、今、こちらの主人に聞き込みをしていたところです」
「お!旦那がこのお嬢様の恋人ですか?どうですか、旦那。恋人のお嬢様にこの髪飾りを贈ってみたら」
店の主人は今度はライに向かって髪飾りを勧める。
ちょっと!私とライは恋人じゃないわよ。
変なこと言わないでよ、恥ずかしいじゃない!
私はライが私の恋人と間違われて気分を害するのではないかと思い、ライの顔色を窺う。
ライは店の主人が勧めている桃色の花の髪飾りを見ていた。
「私は彼女の恋人ではない」
「それなら旦那。この髪飾りを買って交際を申し込んだらお嬢様の心を掴めること間違いなしですよ。旦那もこの髪飾りはお嬢様にお似合いだと思いませんか?」
「こ、交際の件はともかくとして確かに、これはミアに似合うかもしれないな」
「そうでしょ?旦那も男だったら女性に髪飾りぐらい贈って喜ばせてあげないと!」
ライは少し迷っていたが一瞬だけ私の方を見てから主人に声をかけた。
「よし、主人。この髪飾りをくれ」
「へい、お買い上げありがとうございます」
え?この髪飾りを買っちゃうの?
この主人に騙されてるんじゃ。
戸惑っている私のことなど気にせずライはその髪飾りを買ってしまう。
そして私にその髪飾りを渡してきた。
ライの顔は真剣だ。
「ミア。君の髪にこれを着けてくれないだろうか?」
「え?あ、は、はい」
私の心臓はバクバクと音を立てていたが私は受け取った髪飾りを自分の髪に着けた。
するとライはとても嬉しそうな笑みを浮かべる。
「やはり可愛いミアには可愛い花が似合うな。この髪飾りは私に協力してくれたお礼にミアに贈るからこれからも着けてくれるだろうか?」
「は、はい……ライ」
突然のライからの贈り物に私は顔が真っ赤になってしまう。
私のことを可愛いって…ライは私に本気で好意を持ってるのかな。
そうだったら嬉しいけど。
満足そうに私を見つめて笑顔を浮かべるライの顔から私は視線を外せなくなっていた。