第14話 ディオンとはそんな仲ではありません
「こんな美味しいお団子は初めてだよ。ありがとう、ミア会長」
「いえ、お気に召していただき嬉しい限りです」
するとそれまで黙っていたライガー将軍が口を開いた。
「ミア殿。少しばかり二人で話をしたいのだがよろしいだろうか?」
私はライガー将軍の方を見た。
きっと昨日ライガー将軍とタクオス獅子王が話していた鍛冶師ザキの捜索の件に違いない。
「はい。私はかまいませんが」
「タクオス兄上。ミア殿を連れて行ってもよろしいか?」
「ああ、いいよ。それじゃあ、ミア会長。悪いけど私の弟のライガーの話を聞いてあげてくれる?」
「はい。もちろんでございます」
「ではミア殿。こちらの部屋へ来て欲しい」
「はい」
ライガー将軍が扉を開けて部屋を出たので私はタクオス獅子王に頭を下げてからディオンには先に商隊に戻るように言ってライガー将軍の後を追いかけた。
廊下をどんどんと進んで行きライガー将軍が私を連れて来たのは昨日と同じライガー将軍の部屋だった。
「どうぞ。中へ」
「はい。失礼します」
二回目ということもあるし私はライガー将軍のことを信頼しているのでためらうことなく部屋に入る。
ライガー将軍に勧められてソファに座ると向かい側のソファにライガー将軍も座った。
「今回は珍しい食べ物を献上していただき私からも礼を申す」
「いえ、獅子王様たちがお気に召していただいて良かったです」
私がそう言ってライガー将軍を見つめると「コホン」と咳払いをしてからライガー将軍は話し出した。
「実は昨日、タクオス兄上にマクシオン商会のシャナールにザキ探しを依頼したことを話したのだ」
「そうですか」
そのことは私も知っている内容なので特に驚きはしない。
「それでタクオス兄上からシャナールを頼るのも良いがやはり自分たちでもザキを探した方がいいという話になってな。で、できれば、ミア殿も私と一緒にザキ探しをしてもらえないだろうか?」
ライガー将軍のためにも今回の件に関して協力をしたい私はすぐに返事をする。
「はい。喜んで協力させてもらいます」
「ほ、本当か?マクシオン商会の仕事が忙しいなら断ってもらってもいいのだが…」
「ああ、それなら私には優秀な側近がいるので大丈夫です」
ごめんね、ディオン。
またあなたに商売のことを任せることになっちゃって。
心の中でディオンに謝りながらも私の心は決まっていた。
私はライガー将軍を助けたい。
「側近というのは先ほど一緒にいた男性か?」
「え?あ、はい。ディオンはいつも私と一緒にいてくれる頼りになる男性ですので心配しなくても大丈夫です」
「……そうか」
なぜかライガー将軍の表情が曇る。
どうしたのかしら?そんなに私に迷惑をかけるのが悪いと思っているのかな。
「コホン!わ、私と共に行動するとその男性は気分を害するのではないか?ミア殿」
「え?ディオンがですか?」
「そ、その、ディオン殿はミア殿と恋仲なのでは?」
はあ!?私とディオンが恋仲なんてありえないわよ!
ディオンのことは好ましいとは思っているけどそれは家族の情に近いものだもの。
「いえ!私とディオンは恋人ではありません。確かにディオンはいつも一緒にいますがディオンに抱く感情は家族の情と同じものです」
「そ、そうか!すまん!変なことを聞いてしまって!」
ライガー将軍は慌てて私に頭を下げる。
「別に気にしてないので頭を上げてください。ライガー将軍様」
「うむ」
ああ、びっくりした。
まさかディオンと恋仲かって疑われると思ってもみなかったわ。
「それでは話を戻すが準備ができたら私と共に町に出てザキ探しをしてくれるか?」
「分かりました。町は馬での移動ですか?歩きですか?」
「町の人にも話を聞きたいから歩きで行きたいのだが」
「それなら一度、商隊に戻って馬を置いて来ます」
「うむ。できるなら町娘が着るような服装だとありがたい」
「分かりました」
私の今の服は獅子王に挨拶することで離宮を訪れたのでそれなりに豪華な服装を着ている。
確かにこれでは町の中では目立つだろう。
「私も準備ができたらミア殿を迎えに行くから待っていてくれ」
「はい。お待ちしています」
私は一度離宮から商隊へと戻る。
でも私は地味な服装すれば目立たないけどライガー将軍は黄金の髪に黄金の瞳だもんね。
どんな地味な服を着たって目立つような気がするけどどうするのかしら。