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第13話 ウサギと言えばアレです

「う~ん、どうしようかなあ」


 離宮から商隊に戻った私は明日タクオス獅子王とレア王妃に献上する品物を考えて悩む。


 ライガー将軍から獅子王の剣についての騒動を聞いたのでタクオス獅子王に武器類を献上することはやめた。


 タクオス獅子王は気にしないかもしれないけど「剣」を見ることで獅子王の剣のことを思い出させるのは可哀想に思ったからだ。


 たぶん、ライガー将軍も同じ気持ちだったから私が珍しい剣を献上することを考えていることを察して遠まわしに武器類の献上をしないようにと言いたかったのかもしれない。


 だがそうなると何を献上すればいいのかしら。


 ディオンに作ってもらった献上品の候補が書いてある紙を見て私は溜息を吐く。

 時間は既に夜になっていた。


「う~ん、ちょっと外の空気を吸って頭をスッキリさせようっと!」


 私は会長用のテントを出て夜空を眺める。

 夜空には綺麗な月が浮かんでいた。


 この世界は私の前世の世界とは違っても同じような物はたくさんある。

 太陽もあるし月もあるし夜には星空も見えた。


 完全に違う世界と分かっていてもそれらがあることで私はなんとなくホッとしてしまう。


 前世では不本意な死に方をした私だったけど転生したこの世界では立派に生き抜こうと思っていた。


 月はほぼ満月に近い丸い形をしている。

 その月を見て私はふとあることを思い出した。


 そうだ!アレを献上品にしよう!


 私は再びテントに戻ると献上品の候補リストを確認する。

 リストの中には私が思い付いた物があった。


 これで明日のタクオス獅子王とレア王妃との謁見がうまくいくといいな。


 そう思いながら私は眠りに着いた。





 次の日。ディオンと共に献上品を持って離宮にやって来た。


 自分の名前とタクオス獅子王とレア王妃に会いに来たことを話すと侍従が謁見の場所へ案内してくれる。


 ここは離宮なので正式な謁見の間は無いということで私とディオンはタクオス獅子王の部屋に直接行くことになった。


 侍従が案内してくれたのは昨日私が「透明人間」になってタクオス獅子王やレア王妃を見た部屋だ。


 重厚な扉が開かれて私は頭を低くしながら部屋に入る。


「ようこそ。マクシオン商会の会長殿。頭を上げてください」

「はい」


 タクオス獅子王の許しを得て私は頭を上げた。

 中央のソファにはタクオス獅子王が座りその隣りにレア王妃がいる。


 そしてタクオス獅子王の少し後ろ側にはライガー将軍が立って控えていた。

 一瞬だけライガー将軍の黄金の瞳と視線が合って私の心臓がドクンッと高鳴る。


「マクシオン商会は新しい会長になったとは聞いてたが君が新しい会長なの?」


 タクオス獅子王の言葉で私はハッと我に返る。


 いけないいけない。今はタクオス獅子王との挨拶に集中しなきゃ!


「はい。私が新しいマクシオン商会の会長のミア・マクシオンです」


「まあ、今回は可愛い女性が会長なのね」


 私が挨拶をするとレア王妃も笑顔で私に言葉をかけてくれる。


「まだ若輩者ではありますがこれから商人としても頑張りますので今後もマクシオン商会をよろしくお願いします」


「ええ、もちろんだわ。先代の会長さんも私たちには良くしてくださったもの。私たちこそよろしくね。ねえ、タクオス」


「そうだな。今後ともカシン王国での商売をお願いするよ」


「ありがとうございます。これは心ばかりの献上品です」


 私はディオンから箱を受け取りレア王妃に渡した。


「まあ、私にくれるの?開けていいかしら?」


「もちろんでございます」


 箱を受け取ったレア王妃は瞳を輝かせる。

 そして箱を開けた。


「まあ!綺麗なお団子だわ!」


「これは海龍族に伝わる『雪塩ゆきじおの団子』です。海龍族が特別な方法で作った塩が練り込まれたお団子で甘さを抑えた見た目も美しい美味しいお団子ですのでどうぞ」


 私が贈ったのは海龍族だけが作り方を知っている「雪塩」という塩を使ったお団子だ。


 お団子だから基本的には甘いのだが雪塩が入っているのでしつこい甘さのない美味しい団子なのだ。


 見た目も雪のようにふわりとしていて可愛いし女性は甘い物が好きなはず。

 それでいてこれは甘過ぎないのでタクオス獅子王などの男性が食べても美味しいと思うはずだ。


「うん!おいしいわ!タクオスも食べてみて」

「どれどれ。うん、これは美味しいね」


 レア王妃はまず自分でお団子を食べてからタクオス獅子王にもお団子を渡しタクオス獅子王もお団子を食べて気に入ったようで笑顔だ。


 昨日、月を見て私が思い出したのは前世での月にはウサギがいるという話とお月見のお団子の光景だった。


 それをヒントにこの品物を選んだのだが二人とも喜んでくれて良かったと私は少しホッとした。

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