第12話 結婚を勧めたのはライガー将軍です
ライガー将軍が部屋を出て行った後にライガー将軍が出て行ったのとは違う部屋の奥側の扉が開いた。
そして白銀の髪に銀色の瞳で頭に白いウサギのような耳がある女性が部屋に入ってくる。
なんか、この人って見た目からしてウサギの獣人っぽいよね。
もしかしてこの人が雪兎族の王妃様なのかな。
私が見ているとその女性は優雅な仕草でタクオス獅子王の前のソファに座った。
「ねえ、タクオス。奥の部屋で聞いてたけどあんまりライガー殿をイジメるのは良くないわよ」
「大丈夫さ。レア。これはイジメではないよ。ライガーに幸せになってもらいたいという私からの命令さ」
タクオス獅子王は女性のことをレアと呼んだ。
確か王妃の名前はレアだったはずよね。
じゃあ、やっぱりこの女性がレア王妃か。
見た目からして「雪のウサギ」って感じね。
「それならいいんだけど。ライガー殿には私も恩義があるし」
「それは私も一緒だよ。君との結婚を悩んでいた時にライガーが「兄上の愛する女性なら種族など関係ありません。他人がなんと言おうと兄上とレア様は私がお守りします」って言ってくれたから結婚する決断ができたんだから」
へえ、タクオス獅子王にレア王妃との結婚を勧めたのはライガー将軍だったのね。
でもライガー将軍の気持ちは分かるな。
私はギオンのことを思い浮かべる。
ギオンは私とは違う竜族。それでも私はギオンが好き。
そして同時に私は先ほどまでこの部屋にいたライガー将軍の姿も思い出していた。
二人の男性を同時に好きになるのはおかしなことかもしれないけど私の心にはあの「黄金の獅子」のライガー将軍のことも好きだという気持ちがあることにこの時気付いた。
でもライガー将軍も獣人族。
私とは種族が違う。
それでもこの二人のことは好き。
種族が違うからという理由では恋する気持ちは止められない。
そう思えばタクオス獅子王が自分と違う雪兎族のレア王妃を好きになってもおかしくないし両想いなら結婚させてあげたいと思ったライガー将軍の言動は理解できる。
「そうよね。そしてその言葉通りに私たちを守ってくれているし」
「ああ。だけどそのせいでライガーは自分は結婚しない方がいいと思い込んでしまっている。次の獅子王がライガーの子供でも私たちはかまわないのに」
「でもあなた。マレオ殿はそれを承諾するかしら?」
そうだ。タクオス獅子王とライガー将軍の間にマレオっていう異母兄弟がいたのよね。
しかもライガー将軍の話ではマレオは野心家だって言ってたからタクオス獅子王の後継者がライガー将軍の子供だってことに素直に納得しない気がするわ。
タクオス獅子王もそう思っているのか渋い顔になる。
「簡単には承諾しないだろうな。だからこそ『獅子王の剣』のからくりさえ分かればそれを理由にライガーの子供を獅子王にすることができるかもしれない」
「ではタクオスは最初からそのつもりでザキを探しているの?」
「そうだよ。私が完全な獅子王になるというよりはライガーの子供を私は獅子王にしたいんだ。だって本来ならライガーが獅子王になるべきなのだから」
強い眼差しでタクオス獅子王はレア王妃を見つめる。
レア王妃も僅かに頷いた。
「そうですわね。それが未来の獅子王家のあるべき姿だと私も思います」
タクオス獅子王は自分が獅子王として完全に認められた存在になるより将来の獅子王家のことを考えているのね。
それなら私も頑張ってザキを見つけて獅子王家の問題を解決する手伝いをしてあげよう。
そしてライガー将軍にも自分の好きな女性と結婚できるようにしてあげたいし。
たとえそれが私じゃなくても。
そう思った私の心に小さな棘がチクリと刺さったような痛みを感じたが私は気付かないフリをした。
まずはライガー将軍からの依頼を果たさないと。
あ!それに明日のタクオス獅子王との謁見もきちんと済ませないとね。
「では私は自分の部屋に一度帰るわね」
レア王妃がそう言って部屋を出て行く時に私も一緒に外に出て離宮から商隊のいる場所に帰ることにした。