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第11話 人間族は万能族です

「へえ、ライガーが初対面に近い人物をそこまで信頼するなんて珍しいこともあるもんだ。明日は雨でも降るかな」


 タクオス獅子王は少しからかうようにライガー将軍を見る。

 途端にライガー将軍はムスッとした表情で腕を組んだ。


「そんなことはない。私はいつも誰かを疑って生きているわけじゃないからな」

「そうかな。ライガーは私なんかよりも勘が鋭いし、ライガーが気に入らないと感じた人物は後々私たちを欺いていたりすることが多いじゃないか」


 やっぱりライガー将軍は「野生の勘」が鋭そうね。


「確かにそれはあるがそもそもそういう奴らは笑顔を浮かべていても瞳が濁っている奴らばかりだ。ミア殿の瞳はとても澄んでいて綺麗だった。ミア殿は信頼する人物に値する」


 ライガー将軍はキッパリとタクオス獅子王に言い切った。


 私は思わず顔が赤面する。

 私の瞳が澄んでて綺麗なんて嬉しいけどちょっと恥ずかしい。


「なるほど。ライガーはそのミア会長を気に入ったんだね。もし今回のことが片付いたらライガーのお嫁さんにしたら?」

「なっ!?」


 っ!?


 タクオス獅子王の言葉にライガー将軍は慌てたように声を上げた。

 私も思わず声を出しそうになって慌てて両手で口を押える。


 お嫁さんって!?ライガー将軍が私なんかを相手にするわけないじゃない!

 タクオス獅子王って冗談が好きなのかしら?


「冗談はやめてください!タクオス兄上。私はただ純粋にミア殿は信頼できる人物と言っただけで彼女を妻にするなど…」

「ハハハ!分かってるって。ライガーはいつも妻を持たないと言ってるもんね。でもその理由が私に子供がいないことなら遠慮しなくていいんだよ。ライガー」


 え?ライガー将軍は妻を持たないって言ってるの?

 王弟の身分なら妻になりたいという人は多そうなのに。

 それにその理由がタクオス獅子王に子供がいないことと何か関係あるのかな?


「タクオス兄上。そのことは……」

「だってさ。私の妻は雪兎族だ。種族が違う者同士の子供ができにくいのは分かっている。ライガーは特殊能力を持っていないとはいえ獅子族であることに変わりはない。だからライガーの子供は特殊能力を持つ可能性は高い。それなら元々獅子王の素質のあるライガーの子供が次代の獅子王になるのは自然なことだろう?何も必ずしも次代の獅子王が私の子供である必要はない」


 そういえばタクオス獅子王の奥さんは雪兎族だったわね。

 種族が違うと子供ができにくいのか。


 それでライガー将軍の子供を次代の獅子王にって考えるタクオス獅子王の考えも分かるわね。

 でもそれじゃあ、人間の私と仮に結婚しても子供はできにくいんじゃないかな。


「ミア殿だって人間族だ。獣人族同士の異種族間でも子供はできにくいのにミア殿と私との間に子供ができるとは……」

「確かに同じ獣人族の獅子族よりは子供ができにくいかもだけど、人間族はこの世界では唯一の「万能族ばんのうぞく」だ。それを忘れてないかい?ライガー」


 万能族?人間族が万能族っていったい何のこと?


 私は今まで「万能族」という言葉を聞いたことがない。


「それは確かに獅子王家に伝わる文献には「人間族は唯一他種族の子供を産める万能族」と書いてはあるがそれが本当かどうか分からんだろ?」

「そうだけど実際に古来から存在する竜族、獣人族、魔族、翼人族、海龍族、妖族の種族が異種族婚しても子供が産まれないのにこの六種族と人間族との間には子供が産まれている例はあるじゃないか」


 へ?人間族以外の異種族同士では子供が産まれないの?


 私の習った知識では異種族と人間族が結婚した場合は子供はどちらかの種族の特徴を引くことになるということだけだ。

 だからギオンの側近のラムセスは私とギオンの間に産まれる子供が竜族でしかもレッドドラゴン種である可能性は低くなるからと私をギオンの正妃にすることに反対していた。


 なのでこのタクオス獅子王の言葉に私は驚きを隠せない。

 そもそも異種族婚をした場合に子供が産まれるのはどちらかが人間族に限られるとは知らなかった。


「そうかもしれないがそもそも私はミア殿のことを妻にするとは言ってない」


 ライガー将軍が呟くように言った言葉が私の心に棘のように刺さる。


 私ったら、ダメよ!ライガー将軍のことは素敵だと思うけどギオンもライガー将軍も好きなんて言ったらおかしいだけじゃない!


 ギオンのことはもちろん好きだが私はライガー将軍に惹かれている自分にも気付いていた。

 一度に多人数の男性に恋するなんてこの時の私には想像できなかったのだ。


「まあ、すぐに結論を出すことはないさ、ライガー。でもミア会長のことを気に入ってはいるんだろ?」

「……それは……まあ……」


 ライガー将軍は小さな声で答える。

 頬も赤くなっているようだ。


「それならそのマクシオン商会のミア会長と一緒にザキ探しをライガーに命じる」

「え?」


「これは獅子王命令だよ。シャナールに探してもらうのと同時にミア会長と一緒に探せば早く見つかるかもしれないしね」

「し、しかし……」


「おや、獅子王命令に逆らうのかい?ライガー将軍?」

「……分かりました。タクオス獅子王様」


 ニヤニヤ笑うタクオス獅子王を睨みつけるようにしてライガー将軍は承諾する。


「では明日はミア殿が獅子王に挨拶に来るだろうからその時に一緒にザキを探してもらうことを頼むことにする」

「頑張ってね。ミア会長とのデートがうまくいくことを願っているよ」

「っ!」


 ライガー将軍はソファから立ち上がり扉を開けて出て行く。

 私は唖然としてその様子を見ていた。


 ライガー将軍が私のこと気に入ってるって本当なのかな?

 それにしてもタクオス獅子王も一筋縄ではいきそうにない人物ね。

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