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第10話 野生の勘に要注意です

 透明人間になって離宮に入った私は離宮の奥へと進む。


 タクオス獅子王がどんな人物かを一度確かめてみたいわよね。

 ライガー将軍は自分の兄のタクオス獅子王は獅子王に相応しい人物だと言ってたけど本当にそんな人物なのか知りたいもんね。


 だが私はまだタクオス獅子王の顔を知らない。

 なので離宮の奥の方まで来て悩む。


 え~と、獅子王の部屋なんだから護衛兵とかが扉の所にいると思うんだけどな。


 私がキョロキョロと辺りを見回した時にこちらの方に歩いて来るライガー将軍の姿を見つけて思わず私は柱の陰に隠れた。

 別に今は「透明人間」になっているので見つかる訳ないのだが私は「透明人間」の時は全裸だ。


 見えていないと分かっててもライガー将軍の前で全裸でいるのは恥ずかしい。

 もちろん私のことなど気付かずにライガー将軍は廊下を歩いて来る。


「まずはタクオス兄上にもマクシオン商会のシャナールにザキ探しを依頼したことを話しておくか…」


 ライガー将軍の呟きは私の耳にも届いた。


 これからライガー将軍はタクオス獅子王に私へ依頼したことを報告するつもりなのね。

 それならライガー将軍の後をついて行けばタクオス獅子王の部屋に行けるわね。


 私は「透明人間」のままライガー将軍の後をついて行く。

 すると突然ライガー将軍が後ろを振り向いた。


「誰だ!」


 廊下に響いたライガー将軍の声に私はその場で身体が固まる。

 私の身体は透明で見えないはずだがライガー将軍の黄金の瞳は私を見つめているように感じた。


 やだ!見ないでよ!


 私はライガー将軍に自分の裸を見られている気がして顔が赤くなってしまう。


「ん?気のせいか。誰かの気配がしたような気がしたが…」


 何事もなかったかのようにライガー将軍は再び歩き出す。


 ああ、びっくりしたわ!

 姿が見えなくてもライガー将軍は気配に敏感なのね。


 獣人族だから野生の動物が持つような「野生の勘」が鋭いのかな。

 気を付けないとだわ。


 私はそっとライガー将軍の後ろについて行く。

 少し歩くと兵士のいる豪華な扉の前にやって来た。


 ライガー将軍は扉をノックする。


「どうぞ」


 中から声が聞こえたのを確認してライガー将軍が扉を開けて中に入った。

 そして私も滑り込むように一緒に部屋の中に入る。


 そこはライガー将軍の部屋よりもさらに豪華な部屋だ。

 あちらこちらに金を使った装飾がされている。


「やあ、ライガーだったのか」


 ソファに座っていた男性がライガー将軍に声をかけて来た。

 男性の見た目は30歳くらいだ。


「忙しいところすまない、タクオス兄上。報告があってな」

「別に忙しくはないよ。この離宮に来た表向きの理由は休養だからね。休養中の私が仕事をバリバリやってたらおかしいだろ?」


 タクオス兄上ってことはこの人が獅子王か。


 獅子王はライガー将軍と同じ金髪だが瞳は黄金ではなく青い。


 獅子族ってみんなが金髪に黄金の瞳ってわけじゃないのね。


「タクオス兄上にはいろいろ不便をかけてすまないと思っている。私が特殊能力を使えないばかりに…」

「その話はもういいよ、ライガー。とりあえず座ってよ」


 ライガー将軍もソファに座る。


「それで私に話とは?」

「ああ。鍛冶師ザキの捜索をマクシオン商会のシャナールに依頼したということを伝えようと思って」

「マクシオン商会のシャナールに?」


 ライガー将軍は先ほど私とやり取りした内容をタクオス獅子王に話をした。


「なるほどね。私たちよりもシャナールの方がいろいろ情報を持っているかもしれないね。でもそのマクシオン商会のミアって会長は信頼できる人物なのかい?これは王家の根底に関わることだよ。他の者にバレたら大変だ」


 タクオス獅子王は真面目な顔でライガー将軍を見つめる。


 タクオス獅子王の心配はもっともよね。

 王家の秘密に関することを私が他人に話したら大騒動になりかねないもんね。


 だがライガー将軍は怯むことなくタクオス獅子王を見つめ返す。


「それは大丈夫だ。私はミア殿は信頼に値する人物だと判断した。私はミア殿を信じる」


 ついさっき会ったばかりの私のことを「信じる」と断言したライガー将軍の言葉に私は自分の心の中に熱い何かを感じた。

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