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第9話 鍛冶師ザキの捜索の依頼です

「頼みとは何でしょうか?」

「うむ、実はな。私は今鍛冶師のザキを探しているのだ」


 は?鍛冶師のザキって言ったらライガー将軍の短剣を作った人物よね。

 このカシン王国だけじゃなくて商人の間でも有名な鍛冶師だけど、その人を探してるってどういうことかしら?


「鍛冶師のザキはこのカシン王国にいる鍛冶師ですよね?ザキはカシン王国のどこかに住んでるんじゃないんですか?」

「ああ、先代のザキは自分の家を持ち定住して剣を作っていた。だが今のザキはどこにいるか分からないのだ」


 先代のザキ?ザキって個人の名前じゃないの?


「あの、ザキって個人の名前じゃないんですか?」

「え?ああ、ミア殿はそのことは知らないか。ザキというのは鍛冶師のザキの一族の中で最も剣を作る腕がいい者が代々受け継ぐ名前なのだ」


 へえ、そうなんだ。じゃあ、現在のザキを名乗る人物が行方不明か何かになったってこと?


「では現在ザキの名前を受け継いだ人物の居場所が分からないということですか?」

「そうだ。現在のザキは一族の中でも変わり者らしい。そして私もいろいろと情報を集めてみたらどうやらこのルールドの町にいるらしいことが分かった」


「え?この町にですか?」

「ああ、それでタクオス兄上と一緒にザキを探しにこの離宮に来たのだ」

「タクオス獅子王様とですか?そもそもなぜ鍛冶師のザキを探していらっしゃるんですか?」


 私はタクオス獅子王とライガー将軍と鍛冶師のザキの関係が分からないので聞いてみた。


「うむ、それは先ほども話した通り獅子王の剣は獅子王にしか抜けない。だがそのからくりは謎なのだ」


 ライガー将軍に言われて私は獅子王の剣を見る。


 確かにそうよね。普通の剣だったら特定の人物しか抜けないなんてことはないわよね。


「そのからくりと鍛冶師のザキに何か関係があるんですか?」

「実はこの獅子王の剣を初代獅子王に献上した人物が初代ザキだったと言われている」

「え?そうなんですか?」


 その話が本当ならザキの一族って相当古くから鍛冶師の技術を受け継いできた一族になる。


「ああ。私はこの獅子王の剣が獅子王にしか抜けないからくりはザキならば知っているのではないかと考えたのだ。もしからくりが分かればタクオス兄上でも剣が抜けるようになるかもしれない」


 なるほど。剣が抜けるか抜けないかのからくりが分かれば確かにタクオス獅子王にも獅子王の剣が抜けるかもよね。


「ライガー将軍様はタクオス獅子王様が剣を抜けるようになって名実ともに獅子王になられることを望んでおられるのですか?」


 私の質問にライガー将軍は黄金の瞳で私を見つめて答える。


「そうだ。私はタクオス兄上こそが真の獅子王になるに相応しい方だと思っている。だからタクオス兄上には獅子王の剣を抜ける正統な獅子王になって欲しいのだ」


 黄金の瞳には揺るがない強い意志を感じた。

 ライガー将軍が心の底からタクオス獅子王を信頼しているのが私にも伝わってくる。


「獅子王の剣の案件さえ片付けばタクオス兄上の治世は完全なものになる。絶対にマレオ兄上に獅子王の座を奪われる訳にはいかないのだ」


 強い意志を持って輝く黄金の瞳に私は心臓が高鳴る。

 やっぱり私はライガー将軍を助けたい。


「ライガー将軍のお気持ちと獅子王の剣と鍛冶師のザキとの関係は分かりました。それで具体的に私に頼みたいこととは何ですか?」

「これは先代獅子王の父上から聞いたのだがマクシオン商会には優秀なシャナールがいると…」


 その言葉に私は少し緊張する。

 マクシオン商会に優秀なシャナールがいること自体はそれほど秘密ではないが私がシャナール自身だということはライガー将軍にバレる訳にはいかない。


「はい。確かにおりますが」

「ではそのシャナールに鍛冶師のザキを探してもらう依頼をお願いできないだろうか。もし可能ならザキから獅子王の剣のからくりについて情報が聞けたならその情報が欲しい」


 鍛冶師ザキの捜索と獅子王の剣のからくりの調査か。

 確実にできるか分からないけどこれはカシン王家に関わる重大な案件だもんね。


 よし!この依頼を受けるわ!


「承知しました。ライガー将軍様。うちのシャナールに話をしてみます」


 あくまで私は自分以外のマクシオン商会の者がシャナールであるかのように装う。


「それで鍛冶師ザキの特徴で分かっていることを教えてください」

「それがザキは若い男で種族はこの獣人族でもとても希少な「猛虎もうこ族」と言われている。猛虎族は我々獅子族同様に外見は完璧な人型を取るので見た目で見分けるのは大変なのだ」


 若い男性で種族は猛虎族か。

 見た目で判断が難しいなら見つけるのも大変そうね。


 しかし私のライガー将軍を助けたい心は変わらない。


 とにかく一度商会に戻って作戦を練らないとだわ。


「分かりました。とりあえずその特徴をシャナールにも伝えます」

「うむ。よろしく頼む。では今日はこれで話は終わりだ。マクシオン商会まで送って行こう」


「いえ、帰りは自分で帰れます。明日の獅子王様への献上品の参考にまだ町を見たいので」

「そ、そうか。では離宮の出入り口まで送ろう」


 ライガー将軍に離宮の出入り口まで送ってもらった私はそこでライガー将軍と別れる。

 そして私は離宮から町の方に歩きながら人の目がないところで建物の陰に隠れた。


 とりあえずライガー将軍の言っていることに嘘はないだろうけどもう少しカシン王家のことを知りたいから「透明人間」になって離宮に潜入してみよう。


 私は「透明人間」になると今出て来たばかりの離宮の中へ潜入を開始した。

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