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第6話 王家に伝わる古代剣です

 ライガー将軍の後について離宮の建物に入る。

 離宮とはいってもそこは王家所有の建物だけあって豪華な造りだ。


 竜族の王宮のように無駄に広く造られているわけではないが廊下にも絨毯が敷かれているし所々に置かれている調度品も一級品の物ばかり。

 その中を王者の風格で歩くライガー将軍はやはり「黄金の獅子」というイメージだ。


「ここが私の部屋だ」


 ライガー将軍は一つの部屋の前まで来ると私を振り返って言う。

 扉を開けてライガー将軍は中に入った。

 私もその後に続く。


 そこは豪華な部屋ではあるが落ち着いた色彩でまとめられたいかにも男性の部屋という感じだ。


「まずはソファに座って少し待っていて欲しい。ミア殿」

「はい」


 私は素直にライガー将軍に勧められるままソファに座った。

 ライガー将軍は奥の方にある別の扉を開けてそちらに行ってしまう。


 この奥にある部屋はライガー将軍の寝室か何かかな。


 ライガー将軍のことを信頼したのは自分だがやはり男性の部屋にいるのは緊張する。

 再び奥の扉が開いてライガー将軍が現れた。


 手には大きな剣を持っている。

 ライガー将軍は私のソファの前にあるテーブルにその剣を置いて自分も私と向かい合う場所のソファに座った。


「ミア殿はこの剣がどんな剣か知っているだろうか?」


 ライガー将軍に言われて私は目の前に置かれた剣を見る。

 金の装飾がされたとても綺麗な剣だが最近作られた物ではないようだ。


 この装飾の文様は古代剣の特徴があるわね。


 私は専門家ではないがある程度なら剣などの武器類の知識も持っている。

 商人として物の価値が分からなかったら商売にならない。


 だから商人の町に住んでる時にいろんな物の価値の見分け方について勉強した。

 この世界の剣は大きく二つに分類できる。


 古い時代に作られた「古代剣」と呼ばれるものと新しい時代に作られた「新剣」と呼ばれるものだ。

 大きな特徴は古代剣は儀礼用に作られていることが多く新剣は実戦用に作られているということ。


「これは古代剣の一種だと思いますが……」

「さすがマクシオン商会の会長だけあるな。その通りこれは現存する古代剣の中でも最も古い時代の物だと言われている剣だ。そしてこれはカシン王国の王家に伝わる剣で「獅子王」だけが使える剣なのだ」


 え?獅子王だけが使える剣?

 ライガー将軍は獅子王の弟だけど獅子王ではないわよね?

 何でライガー将軍が獅子王だけが使える剣を持っているのかしら。


「獅子王様だけが使える剣ですか?」

「ああ、代々の獅子王になる者がこの剣を使える。ミア殿、この剣を鞘から抜いてみてくれ」


「え?私が抜いてもいいんですか?」

「ああ」


 私は目の前の剣を手に取った。

 ずっしりと重さを感じるが持てない重さではない。


 そのまま剣を抜こうとした私だったが剣が鞘から抜けない。


 ちょっと待って、なんで抜けないの?

 中が錆びたりしてるのかしら。


 私が四苦八苦してるとライガー将軍が私に声をかける。


「私にその剣を渡してください。ミア殿」

「え?あ、はい」


 素直に私は剣をライガー将軍に渡した。

 剣を受け取ったライガー将軍はその剣を難なく抜く。

 錆などなく剣は綺麗に光を反射していた。


「え?あんなに抜けなかったのに!?」


 思わず声に出してしまった私にライガー将軍は衝撃の言葉を続けた。


「この剣は獅子王しか使えない剣。つまり獅子王しかこの剣を抜くことはできない」

「で、でも、あなたは獅子王様の弟君ですよね?」

「そうだ。私は獅子王ではない。だが私はこの剣が抜ける。そして現獅子王の兄上はこの剣が抜けぬのだ」


 え?ライガー将軍が獅子王しか使えない剣が抜けて現在の獅子王がその剣を抜けないってどういうこと?


「獅子王様に抜けないってどういう意味ですか?」

「言葉通りの意味だ。代々の獅子王になる者はこの剣が抜けるはずなのだ。その他の者が抜くことはできない。だがミア殿が見ての通り私はこの剣が抜ける。そして獅子王である兄上は剣を抜けない。それが今の王家が抱えている問題でな」


 ライガー将軍は剣を鞘にしまった。

 そして深い溜息をつく。


「これから私が話す内容は生涯ミア殿の心の中にしまっておいて欲しい。約束してもらえるだろうか?」

「はい。私は商人です。秘密は厳守します」


 一流の商人は顧客の秘密を守る義務もある。

 私は商人としてもシャナールとしても一流になりたいので絶対に秘密は守るつもりでライガー将軍を見つめた。


「では話そう。現在のカシン王家が抱えている問題を」


 そう言ってライガー将軍は話し始めた。



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