第4話 武器の需要が高そうです
私はディオンと共にタクオス獅子王とレア王妃に献上する品物を選んでいた。
「ねえ、ディオン。獣人族は何を好むか知ってる?」
「そうですねえ。獣人族は種族によってかなり好むモノに違いがあります。獅子王のような獅子族は食べ物で言えば肉類が好きですが王妃様のような雪兎族は菜食主義だったりしますし」
それはなんとなくイメージで分かるわ。
獅子がお肉を食べてウサギが野菜を好むというのはこの世界も私の前世の世界にいた動物の好むモノと大差ないってことね。
だけど獅子王にお肉を上げて王妃に野菜を上げるのでは単純過ぎてマクシオン商会の面子が潰れる可能性がある。
マクシオン商会でしか取り扱いがないような珍しいモノを献上した方がタクオス獅子王の心証も良くなるだろう。
「何がいいかしら……」
マクシオン商会の品物の中から獅子王と王妃に相応しい物を探していた時に私はふと思った。
そうだ!獣人族が何を好むのかは獣人族を知ることができればより具体的に決められるわ。
ライガー将軍が来るのは明日だし一度ルールドの町に出て少し獣人族の生活を見る時間はあるわよね。
「ディオン。獅子王様たちに何を贈るかの参考にするために少し町に出て獣人族の生活を見て来るわ」
「町に出てですか?まあ、このルールドは町として大きな町ですしいろんな獣人族がいますからミア様がそうしたいならそれでかまいませんが」
「じゃあ、行って来るわね」
「一人で大丈夫ですか?」
「平気よ。私には『奥の手』があるもの」
「分かりました。お気を付けて行ってらっしゃいませ」
私はディオンと別れてマクシオン商会が滞在している広場を歩いて出発した。
ルールドの町はあまり高い建物はないが町の中央には立派な宮殿のような建物が見えた。
たぶんあそこが王家の離宮だろう。
町の道を歩きながらすれ違う人たちを見るとやはり獣人族の特徴である身体の一部に獣の部分がある者が多い。
顔は人間と変わらない者が多いが手足に獣の毛が生えていたり尻尾があったりいろんな獣人族がいる。
とりあえず獣人族の国では何が売ってるか見てみようかな。
商店を見れば獣人族が生活で何を必要としてるか分かるに違いない。
私は商店街だと思われる場所に着いた。
食べ物屋もあるし生活用品を売ってる店もあるが一番多いお店は武器屋のようだ。
そこで私は一番手近なお店に入ってみた。
お店に入ると武器や防具などが置いてあった。
ここがこの国の武器屋か。
品揃えが豊富だわ。
剣だけを見ても大小様々な大きさがあり長い物短い物装飾のある物などたくさん置いてある。
斧や槍なども品揃えが多い。
これだけ品揃えが良いということはこの国では剣士とかが多いのかな。
それとも何か争い事が多いとか。
武器が売れる場所はそれだけ武器の需要があるということだ。
ディオンにはこのカシン王国の全てのことを聞いたわけではない。
獣人族と言ってもいろんな種族がいると言っていたから種族同士の揉め事があっても不思議じゃないわね。
「いらっしゃいませ。何かお探しですか?」
店員らしい獣人族の人が私に話しかけてきた。
その人は犬のような耳と口に鋭い犬歯を持っていながらもにこやかな笑顔の人だ。
この人は犬か狼系の獣人かな。
「あ、すみません。旅をしてる者なんですがこの国に初めて来たんでお店を見て回っていたんです。この国では武器の需要は多いんですか?」
「ああ、そうだったんですか。旅の御方は知らないかもしれませんがカシン王国は獅子王様を中心とした国ではありますがいろんな種族がいますので小さな小競り合いのような戦はいつもどこかで起こっているような国なんですよ。なので護身用や戦用の武器はよく売れます」
そうかやはり種族同士の揉め事が多いのね。
マクシオン商会にも武器や防具の商品はある。
有名な鍛冶師が作った剣などもあるからそれらを献上したら少なくとも獅子王は喜ぶかもしれない。
私がそう思っていた時にお店の入り口の扉が開いた。
開いた扉から入って来た人物を見て私は驚く。
「ライガー将軍!?」
そこには先ほど別れた金の獅子のような人物のライガー将軍が立っていた。