第3話 ルールドの町に滞在します
「マクシオン商会の会長は代替わりしたとは聞いていたが本当に貴殿が会長なのか?」
男性は黄金の瞳で私を見つめる。
どこか不審そうな表情を浮かべているのは私の勘違いではないだろう。
まあ、この反応は仕方ないか。
有名なマクシオン商会の会長が14歳の小娘なんだもんね。
「はい。私は先代のナルファの娘のミア・マクシオンと申します。現在のマクシオン会長に間違いありません」
胸を張って私が答えると私の後ろにいたディオンが一歩前に進み出た。
「お久しぶりです。ライガー将軍様。このミア様は間違いなく現在のマクシオン商会の会長にございます」
ディオンがそう言って黄金の男性に頭を下げた。
え?ライガー将軍ってさっき獣人族のおじさんが言っていた獅子王の実弟よね。
この黄金の男性がライガー将軍なの?
「貴殿は確か以前も我がカシン王国に来て先代会長と一緒に商売をしていた者だったな?」
「はい。覚えていてくださりありがとうございます。私の名前はディオン・ルードと申します。現在私はミア様の後見人を務めております」
ディオンの言葉で黄金の男性は納得したようだ。
ひらりと馬から降りて私に近付く。
「無礼を申して申し訳なかったな。ミア殿。私はカシン王国軍の将軍を務めるライガー・バル・カシンだ」
やっぱりこの人がライガー将軍なのね。
「いえ、気にしておりませんので大丈夫です。それより私どもの商会の検査をするのに一般の方に迷惑がかからないように特別な計らいをしてはもらえないでしょうか?」
ライガー将軍は私の後ろに控えるマクシオン商会の人や荷物を見た。
「確かにこの荷物や人間を検査するのは時間がかかるな。よし、特別にマクシオン商会の者は検査なしで通過してかまわない」
え?検査なしで通過していいの?
そこまで特別扱いを受けるとは思ってなかったので私は驚いた。
「検査なしでよろしいんですか?」
「ああ。マクシオン商会は我が国にいつも有益をもたらしてくれているからな。特別に私が許可を出す」
その時に初めてライガー将軍が笑みを浮かべた。
今までは冷たい感じの表情だったが笑みを浮かべたライガー将軍を見て私の心はドキンっと高鳴った。
思わず私は顔が赤くなってしまう。
ライガー将軍ってこんなに笑顔が素敵なのね。
ああ、でも今はそのことよりお礼を言わないと。
「あ、ありがとうございます」
私はライガー将軍に頭を下げる。
「だがその代わり私の願いを聞いてくれないだろうか?」
「ライガー将軍様のお願いですか?」
お願いって何だろう。
難しいお願いじゃなければいいけど。
「実は義姉上はマクシオン商会が来るのを毎回楽しみにしておられるのだ。なので今回はルールドの町に滞在して離宮に来て義姉上の要望の品物を売ってはくれないだろうか?」
えっと、ライガー将軍は獅子王の実弟だから義姉上というのは王妃様のことよね。
それはこっちにとってもありがたい話だわ。
「もちろんでございます。ぜひ、離宮でタクオス獅子王様と王妃様にご挨拶をしたく存じます」
「良かった。それでは私の後にマクシオン商会はついてきて欲しい」
「はい。承知しました」
ライガー将軍はまた馬に乗ったので私やディオンも馬に乗った。
そしてライガー将軍の先導で私たちはルールドの町に入ることができた。
ルールドの町の中央の辺りまで来ると広場があった。
「ミア殿。この広場にマクシオン商会は滞在するといい。獅子王への挨拶については明日でかまわないだろうか?」
「はい。ライガー将軍様。挨拶の準備を整えておきます」
「うむ。ではまた明日迎えに来る」
ライガー将軍は兵士と共に行ってしまった。
さて、とりあえずはここを拠点にしましょう。
私とディオンはマクシオン商会の者たちにこの広場に滞在することを知らせた。