表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

51/95

第1話 獣人族の国を目指します

「ねえ、ディオン。今度の国のカシン王国って『獅子王』の治める国なんだっけ?」


 私は馬上から隣りで馬に乗っているディオンに声をかけた。


「そうですよ。カシン王国は獣人族の国です。獣人族をまとめて統治してるのが獅子王です」

「獣人族って人間と獣の間のような姿よね?」


「ええ、でも竜族同様に力のある獣人族は人間の姿にかなり近いですよ。獅子王の種族である獅子族はほとんど人間の姿と変わりません」

「そうなんだ」


 私も獣人族の人とは会ったことがあるがどの人も身体の一部に獣の特徴が出ていたのを思い出す。

 耳が犬のような獣人もいたし尻尾のある獣人もいた。

 でも力の強い獣人族は人型を取れるなら竜族のギオンたちと同じなのかもしれない。


 そこで私は別れたギオンのことを思い出し少し切なくなる。

 ギオンと別れた方が今後ギオンが竜王として生きていくのにギオンのためになると頭では理解しても私の心は揺れる。

 だってギオンのことは私も好きだったのだから。


 私は想い出を消すように再びディオンに話しかけた。


「今の獅子王ってどんな人なの?」

「現在の獅子王の名前はタクオス様です。実年齢は私も知りませんが見た目はまだ若い方ですよ」


「獣人族は見た目で年齢が分からないの?」

「まあ、そうですね。ある程度は外見から想像もできますが獣人族に限らず人間以外の異種族は外見で年齢を判断するのは難しいです」

「へえ、そうなんだ」


 そういえば竜族のギオンだって正確な年齢は分からなかったな。

 まあ、竜族の中では若いんだろうけど。


「タクオス獅子王には子供とかいるの?」

「いえ、まだ御子はいないようですね。でもそれが獅子王家にとっては問題になってるとも噂になってます」


「なんで?まだタクオス獅子王が若いならこれから子供だってできるでしょ?」

「ええ、それはそうなんですが問題はタクオス獅子王の正妻が獅子族ではなく雪兎族ゆきとぞくだということですね」


「雪兎族?」

「簡単に言えば雪兎族はウサギの獣人です」


 え?獅子族の王の奥さんがウサギの獣人って獅子族に食べられたりしないのかな?

 だって獅子族ってあの猛獣の獅子の獣人でしょ?


「雪兎族の獣人は獅子族の獣人に食べられたりしないの?」

「ミア様。獣人とはいえ私たち人間と文化的にも知能的にも変わりはありません。単純に獅子がウサギを襲うというのは動物の中での話ですよ」


 ディオンは溜息をつきながら私に説明してくれる。


 それもそうね。獣人だからって人間より知能が劣るわけじゃないわよね。

 だってちゃんと王様がいて国を形成して文化的生活を送ってる人たちだし。


「でもそれなら獅子王の奥さんが雪兎族の何が問題なの?」

「獣人族もやはり同じ種族の血筋を大切にするんです。それはその種族しか使えない特殊な能力もあるので。なので獅子族に雪兎族の血が入るとその子供が獅子族の特殊能力を使えない場合も考えられます」


「じゃあ、特殊能力の血筋を守るために同じ獣人族と言っても獅子族は獅子族と雪兎族は雪兎族で結婚するのが普通ってこと?」

「通常はそうですね」


「だったら何でタクオス獅子王の正妻は雪兎族の人だったの?」

「なぜそうなったかは私も分かりません。ただそのことを良く思わない者たちもいるという噂は聞いてます」


 う~ん、なぜタクオス獅子王が雪兎族の奥さんをもらったかは気になるところね。

 でも同じ「獣人族」と呼ばれていても何の獣人かで差別とかあったりするのかな。

 人間だって同じ人間の中で身分で差別したりするもんね。


「カシン王国の王都に行ったらタクオス獅子王にも挨拶するのよね?」

「そうですよ。この旅の目的の一つはミア様のことをマクシオン商会の会長だと各国の王様に知ってもらうことなんですから」


 そうよね。それにもしかしたらタクオス獅子王の奥さんにも会えるかもしれない。

 ウサギの獣人だから見た目が可愛い人なのかな。


 私はそんなことを考えながらカシン王国の王都カシザランを目指して旅をしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ