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第49話 ギオンからの求婚です

「ディオン。出発の準備は順調?」

「はい。ミア様。明日には出発できます」


 ルクセル竜王と二人の王子が王位を巡る事件で捕らえられたという情報が国民に流れるとやはり大きな騒ぎになった。

 ギオンはその対応に追われているらしい。


 私にできることはもう無いので私はマクシオン商会の商売の仕事をしていた。

 そして一通りこの国での商売が落ち着いたのでディオンと相談して次の国に行くことになった。


「出発は明日か……」


 私は商会の皆が荷造りをしている様子を見ながら呟いた。

 ギオンとはルクセル竜王たちを捕らえてから会っていない。


 まあ、今回は竜王家を揺るがすような事件だものね。

 ギオンに別れの挨拶をしたかったけどギオンは忙しいから無理を言っちゃダメね。


 結局ギオンとの仲も中途半端なままだ。

 以前、ギオンは私のことを「正妃」にするなんて言ってたけど今は結婚話なんてできる状態ではないだろう。


 そうは思うもののギオンの顔を思い出すとなぜか心に寂しさを感じる。


 ダメよ。ギオンは次期竜王になる者なんだからたかが人間の商人の娘である私を正妃にすることはできないんだから。


 私は自分自身にそう言い聞かせた。


「ミア」

「え?」


 私が名前を呼ばれて振り返るとそこにはギオンがいた。


「ギオン!」

「久しぶりだな。ごたごたが続いて王宮を離れられなかったからなかなかミアに会いに来れなかった。すまん」

「平気よ。今は王家が大変なのは分かっているもの」

「マクシオン商会が次の国に行くと聞いたから今日はラムセスに無理を言ってここに来たんだ。少し二人だけで話せないか?」

「ええ。じゃあ、私のテントに行きましょう」


 私はギオンを自分のテントに案内する。

 ギオンにお別れの挨拶ができないことが心残りだったから最後にギオンに会えて良かったわ。


「ギオンには私もお別れの挨拶がしたかったからちょうど良かったわ」


 そう言って私はテントの中の簡易ソファに座る。

 ギオンも隣に座った。


「なあ、ミア。今日はミアにハッキリと言っておきたいことがあって来たんだ」

「言っておきたいこと?」

「俺はミアを愛してる。俺と結婚してくれないか?」


 私は息を呑んでギオンの顔を見た。

 ギオンの赤い瞳には熱情が感じられた。


「ギオン……」

「確かに今すぐには結婚はできない。王家のごたごたが片付いて俺が「竜王」の座に就くためには時間がかかる」

「ええ、そうね」

「だからそのごたごたが片付いたらミアを正妃として迎えたい」


 それはちょっと無理ね、ギオン。


 ギオンのことは私も愛してる。

 でも竜王の正妃に人間の私がなったら更なる混乱が起こるに違いない。

 そのことでまたギオンの負担になるようなことはしたくない。


「ギオン。私を愛してくれるのは嬉しいけど、結婚のことは私が成人したら考えるわ」

「そうか……。ミアはまだ成人前だしな。分かった。それまで待とう。ミアが成人するのは18歳だよな?」

「そうよ」

「じゃあ、それまでには必ずこの国の混乱を収めてミアに改めて求婚する。その時にミアの気持ちを聞かせてくれ」


 ギオンはそう言って笑みを浮かべた。


「分かったわ」

「じゃあ、悪いがすぐに王宮に戻らないといけないから明日からの旅も気を付けてな。何か困ったことがあったら手紙をくれ。協力するから」

「ありがとう。ギオン」


 ギオンは立ち上がった。

 私もテントの外までギオンを見送りに出る。

 ギオンは自分の馬に乗り王宮へと帰って行く。


 その姿を私はいつまでも見ていた。


 ギオンの気持ちは素直に嬉しいし私もギオンを愛してる。

 でも私が成人するまでにあと数年はある。


 竜王になればギオンには結婚話はたくさんあるはずだ。

 きっと私のことなど忘れてしまうに違いない。

 でもそれがこの国のためにもギオンのためにも良いはずだ。


 ギオンとのことは私の中の宝物としてしまっておくわ。


 私はそう思って自分のテントに戻った。


 さあ、明日は次の国に出発ね。


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