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第48話 竜王を捕らえました

『どけえぇ!小娘!邪魔をするなあ!』


 ルクセル竜王の声が響いて同時に黒い雷が私を襲う。


『ミア!』


 しかしルクセル竜王の放った黒い雷は私には当たらなかった。

 直前でギオンが放った赤い雷が黒い雷を撃破したのだ。


 それでもある程度の衝撃波が私を襲う。

 私は両足を踏ん張って衝撃波に吹き飛ばされないようにした。


「ルクセル竜王様!ギルバード王子は貴方の息子です!ご自分の息子を殺すのですか!」

『うるさい!ギルバードさえ産まれなければ私はレオラを殺さずに済んだのだ!!』


 レオラってギルバードのお母さんよね。

 なるほど、そういうことか。


 私は今のルクセル竜王の言葉で理解した。

 ルクセル竜王は自分の妻であるレオラを愛していたのだ。

 そのレオラが自分を裏切って自分の父親との間にギルバードを産んだと勘違いを起こしレオラを殺さずにはいられないほど愛していたに違いない。


 愛情は時に憎しみを産みそれは殺意にさえ繋がる。

 私はルクセル竜王に叫んだ。


「ルクセル竜王様!貴方がレオラ様に裏切られた怒りでレオラ様を殺めなければ気が済まなかった気持ちは分かります!だからと言って貴方がレオラ様を殺めた罪は消えません!しかしそれならなぜギルバード王子を殺さなかったのですか!」

『なんだと!?』

「ギルバード王子は確かに最強のレッドドラゴン種ですが幼いうちに本気で貴方が殺そうと思えば殺せたはずです!なのにギルバード王子の命を狙いながらも貴方が本気を出せなかったのは心のどこかでギルバード王子が自分とレオラ様の実の子供ではないかと思っていたからではないのですか!」


 その言葉にルクセル竜王は怯んだ。


 私は以前から心に引っかかっていた。

 ギオンの命を本気で狙うならギオンがまだレッドドラゴン種の力を完全に使えるようになる前に殺せば良かったのだ。

 ギオンに幾度となく刺客を送りながらどこか詰めの甘い部分がある襲撃はルクセル竜王の「迷い」から生じたものに違いない。


 レオラは怒りのまま殺してしまったかもしれないがギオンは今となってはレオラの忘れ形見と言ってもいい存在だ。

 だからルクセル竜王は心のどこかでギオンを殺すのに躊躇っていた可能性がある。

 わざわざロイバルト王子をけしかけたのも心の奥底で自分自身でギオンを殺したくなかったのかもしれない。


 ルクセル竜王の動きが止まった瞬間ルクセル竜王の身体に赤い縄が絡みついた。


『ぐわああ!!』


 赤い縄に身体を拘束されたルクセル竜王は苦しそうな悲鳴を上げてルクセル竜王の身体が光を放った。

 次の瞬間にはルクセル竜王の姿は人の姿に戻っていた。

 その側にはスルヴィスがいる。


 うまくいったわ!


「貴様!よくもやってくれたな」


 ルクセル竜王は憎々し気にスルヴィスを睨む。


「観念してください。ルクセル竜王。ミアが言ったように貴方はレオラ様を今でも愛していたからギルバードを殺せなかったのでしょう?これ以上罪を重ねないでください」

「くっ!」


 ルクセル竜王はスルヴィスから顔を背けた。

 

「よくやった!ミア、スルヴィス」


 ギオンも人の姿に戻っていた。

 その時にスルヴィスが静かに言った。


「私が幼い頃にレオラ様に聞いたことがあります。レオラ様の好きな人は誰かと。レオラ様は迷わず答えましたよ。『ルクセルよ』と」


 ルクセル竜王はスルヴィスの顔を見た。

 そして一言「レオラ」と呟いた。


 全ては一つの勘違いが起こした悲しい事件。

 でも犯した罪は消えない。


「お前も罪を問われるがお前も俺と戦うか?セランドール」


 ギオンは部屋の片隅に立っていたセランドールに声をかける。


 そうだった。セランドールはルクセル竜王やロイバルト王子を使って王位を手に入れようとしてたんだっけ。


「私はこれでも往生際はいい方でね。今回のことがうまくいったら竜王になるのもいいかなと思ったけど失敗したのなら竜王は諦めますよ。最強のレッドドラゴン種に私が敵うはずがないしね」

「そうか。おい、セランドールを拘束しろ!」


 ギオンの命令で部屋の隅に逃げていた兵士たちがセランドールを拘束した。


「とりあえずはみんな捕らえたけどこれからが大変だな。ギオン」

「ああ、分かってるさ。スルヴィス」


 そうね。現竜王が罪を犯したのだからそれが国民に伝われば混乱は避けられない。

 状況から見て次の竜王になるのはギオンしかいないだろうし。

 この騒動の後片付けには時間がかかるだろう。


 でもギオンならきっとこの困難を乗り切れるに違いないわ。


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