第46話 スルヴィスの出生の秘密です
私たちはロイバルトを連れて王宮に向かう。
その道中で兵士の一団と出会う。
兵士の一人がラムセスに近付き報告をした。
「ラムセス様。妖族の薬師のチャールを捕らえました」
「ご苦労。王宮に一緒に連れて行く」
「は!」
さすがラムセスね。
別部隊で薬師のチャールを捕まえておいたのね。
「ラムセス。薬師も捕まえたのか?」
「ええ。ギルバード様。チャールは生き証人ですからね」
ラムセスは当たり前だという表情だ。
ラムセスが優秀な側近だというのは本当のようだ。
「なるほど。これでルクセル竜王も言い逃れができまい」
ギオンはそう言って捕まえたチャールを見た。
チャールは観念したかのように項垂れている。
私たちは王宮に着くとルクセル竜王に会いに行く。
ギオンがルクセル竜王の居場所を聞くと今はルクセル竜王の私室にセランドールと一緒にいるらしい。
セランドールも一緒なら丁度いいわ。
ギオンを先頭にルクセル竜王の私室に向かう。
ルクセル竜王の私室に着くと扉の側で警備をしていた兵士が慌てた様子で部屋の中に入ろうとするギオンを止めようとする。
「お待ちください。ルクセル竜王様が誰も通してはならぬと申しております」
「うるさい!竜王家の存続に関わる案件だ。邪魔するな!」
ギオンは強引に扉を開けた。
部屋の中に入るとルクセル竜王とセランドールがいた。
「いったい何の騒ぎだ!ギルバード!」
「父上。いや、ルクセル竜王よ。先代セルヴィス竜王殺害容疑でお前を捕らえる!」
「なんだと!?」
ルクセル竜王は心底驚いたようにギオンを睨みつける。
「ギルバード兄さん。父上を罪人扱いするなら証拠があるんでしょうね?」
セランドールは落ち着いた様子でギオンに尋ねる。
「無論だ。ルクセル竜王が王位に就く前に妖族の薬師を使い「死の華」という毒物で先代竜王を殺したことはこの帳簿が証拠だ」
ギオンは私が渡した帳簿をルクセル竜王とセランドールに見せる。
「死の華の効果を出すためにルクセル王子の命令で「青い貴婦人」という花を大量に購入した記録が残っている。それだけではない。この薬師が生き証人だ」
ギオンの言葉でチャールがルクセル竜王の前に引き出される。
「チャールの家からはルクセル王子から「死の華」を作るように頼まれた手紙類も押収している」
「貴様……」
ルクセル竜王は憎々し気にチャールを睨みつける。
「それだけではありません。ルクセル竜王並びにセランドール王子にはギルバード王子の命を狙うようにロイバルト王子をけしかけたことも分かっています」
今度はラムセスがロイバルトをルクセル竜王の前に引き出す。
「父上!私を利用したというのは本当ですか!?」
ロイバルトはルクセル竜王に対して悲痛な叫びを上げる。
「うるさい!ギルバードの命を狙ったのはロイバルトが勝手にやったことだ」
「そんな!?父上が私を差し置いてギルバードを王位に就けるなんてことを言うから私は……」
ロイバルトは必死にルクセル竜王に訴えるがルクセル竜王はギオンを睨みつけて言った。
「そもそも先代が私の妻のレオラを寝取ってお前を産ませるから悪いんだ!ギルバード!お前がレッドドラゴン種だったから私は……」
「先代のセルヴィス竜王はあなたの妻を寝取ったりしてませんよ。ギルバードは間違いなくルクセル竜王。あなたの息子です」
それまで黙っていたスルヴィスがそう発言した。
え?ギオンがルクセル竜王の実子って本当なの!?
「何を言ってる!レオラは頻繁に先代の宮殿を訪れていたんだぞ!」
「それはそうでしょうね。セルヴィス竜王はレオラ様の侍女である私の母と愛し合っていましたから。レオラ様は私の母とセルヴィス竜王が密会するのを手伝っていただけですよ」
スルヴィスは涼しい顔でルクセル竜王を見る。
「そんな……ではお前は……」
「ええ。私は正真正銘のセルヴィス竜王の息子のスルヴィスですよ」
ええ!?スルヴィスは先代竜王の息子なの!?
「馬鹿な……では私がしたことは……」
「そうですね。全てはあなたの勘違いです。セルヴィス竜王が王位に就けたかったのはギルバードではなくこの私です」
「お前は……レッドドラゴン種なのか?」
「ええ。ギルバードよりは力は劣りますが私は間違いなくレッドドラゴン種です。セルヴィス竜王がレッドドラゴン種に王位を譲りたかったのは本当の話です。ただそれは孫のギルバードではなく息子の私だっただけ」
「そんな……では私はこの手でレオラも……」
そう言えばギオンの母親も殺されたかもって言ってたわよね。
ギオンのお母さんは不貞なんてしてなかったのにルクセル竜王の勘違いで殺されたなら可哀想だわ。
「これで分かりましたか。あなたは王位をギルバードに譲り罪を償ってください」
スルヴィスが静かにそう言うとルクセル竜王は取り乱したように叫び出した。
「うるさいうるさい!私は竜王だ!誰がなんと言おうと最強の力を持った「竜王」なのだ!」
その瞬間ルクセル竜王の身体が光りルクセル竜王は本来の「竜」の姿を現した。
その全身は黒い鱗に覆われており翼もある。
これが竜族の本来の「竜」の姿なのね!?