第45話 赤い縄を作ったのは誰ですか
「スルヴィス!?」
私は声のした方に顔を向けて思わず声を上げた。
そこに悠然とした笑みを湛えて立っていたのはスルヴィスだった。
何でスルヴィスがここにいるの?
「スルヴィス!お前まで俺を騙したのか?」
「人聞きの悪いこと言わないでよ、ギオン。ラムセスに「協力してくれ」って言われて協力しただけだよ」
「じゃあ、「赤い縄」はやはりお前が作ったのか?」
「他にこんな稀有な物を作れる奴がいるかい?」
ギオンの質問にスルヴィスは苦笑いを浮かべる。
「ね、ねえ、ギオン。「赤い縄」って何か特別な物なの?」
私が尋ねると三人は顔を見合わせる。
なんだろう?何か聞いてはいけなかったことなのかな?
「この「赤い縄」にはレッドドラゴン種の血が混ざっているんだ。レッドドラゴン種以外のドラゴン種の「力」を封印する特別な力のある縄なんだ」
ギオンはそう答えてくれた。
「レッドドラゴン種の血で作るの?」
「ああ。そんなに大量の血はいらないがレッドドラゴン種は竜族では最強のドラゴン種だからな。この縄の呪縛から逃れられるのは同じレッドドラゴン種ぐらいだ」
「ふ~ん、だからロイバルト王子を捕まえられたの?」
「そうですよ、ミア様。いくら私でもロイバルト王子に竜の力を使われたら捕まえられませんからね。でもなぜミア様がここに?」
ラムセスは今気付いたかのように私に聞いて来る。
「あ~、えっとマクシオン商会のシャナールからの情報で襲撃のことを知ったの」
「シャナールが依頼内容に関することをミア様に話したのですか?」
ラムセスは不審そうな顔をする。
「マクシオン商会のシャナールへの依頼は私を通じてするようになっているからシャナールは必要最低限のことは私にだけ教えてくれるのよ。もちろん私は誰にも言わないわ」
「そうでしたか。まあ、マクシオン商会が雇っているシャナールですからね。会長のミア様がある程度のことは知っていても不思議はないですね」
ラムセスは納得してくれたようだ。
ふう、さすがに私がシャナールですとは言えないもんね。
「納得してくれたところでさっきの話に戻るけど「赤い縄」を作ったレッドドラゴン種ってまさかスルヴィスのこと?」
「そうですよ」
「え?本当にスルヴィスなの!?」
私は驚いてスルヴィスを見る。
スルヴィスがレッドドラゴン種?
でもスルヴィスは銀髪に青い瞳でギオンのような赤い髪に赤い瞳じゃないのに。
「スルヴィスはギオンみたいに赤い髪に赤い瞳じゃないのにレッドドラゴン種なの?」
「レッドドラゴン種は人型の姿の場合に必ずしも「赤い髪に赤い瞳」というわけじゃないよ。力の強いレッドドラゴン種が「赤い髪に赤い瞳」なだけさ」
「え?そうなの?」
「ああ、ミア。スルヴィスは俺とは姿は違うが「竜の姿」の時はレッドドラゴン種なんだ」
私の疑問にスルヴィスとギオンが答えてくれる。
そう言えばディオンも「力の強いレッドドラゴン種の特徴」って言ってた気がするわ。
ということはドラゴン種というのは見た目では判断できないのね。
「スルヴィスがレッドドラゴン種なんて知らなかったわ」
「まあ、私の母はブルードラゴン種だったし私はレッドドラゴン種でもギオンのような力の強い者でもない」
「そうだったの」
「とりあえず私の話は置いておいてロイバルトを王宮に連れて行った方がいいんじゃない?」
スルヴィスはそうギオンに言う。
「そうだな。マクシオン商会のシャナールのおかげでルクセル竜王の悪事も分かったことだしな。一気に片を付けるか」
「そうですね。その方がいいでしょう。時間が経てばルクセル竜王に言い逃れのチャンスを与えかねないですからね」
ギオンとラムセスは頷き合う。
「ねえ、ギオン。私も王宮に連れて行ってくれない?」
「ミアを?」
だって、ここまで来たら竜王家の騒動がどう解決するのかが見たい。
「私だってもう部外者じゃないわ。ルクセル竜王やロイバルト王子がどうなるか知りたいの」
「しかし……」
ギオンは私の同行を渋っている。
「ミアの言う通り、もうミアは竜王族の騒動に関係している。それにミアを将来「妻」にする気ならミアにも真実を見せておくべきだ」
そう言ってくれたのはスルヴィスだ。
ギオンの「妻」になるって部分が気になるけど今はそこを突っ込むところではない。
「分かった。ミアにも真実を知る権利はあるよな」
「じゃあ、ついて行っていい?」
「ああ。よし、ラムセス。王宮に戻るぞ」
「承知しました」
ラムセスはギオンに頭を下げる。
「ギオン。私も同行するよ」
スルヴィスがギオンに言う。
「お前はあまり王族に関わるのは好きじゃなかったんじゃないのか?」
「ああ、本来ならあまり関わりたくないけどね。そうも言ってられないだろ?」
「……分かった。ついて来い」
私たちは拘束したロイバルトを連れて王宮に向かう。
さあ!ルクセル竜王との最終決戦よ!