表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

44/96

第43話 ラムセスが危険です

 私はある場所に来た。

 そこはマクシオン商会のシャナールが先代竜王の死に関する証拠を渡すために私が指定した場所だ。

 アイルスを流れる川の岸辺にある大きな木の穴が開いてる部分に私はギオンに渡すために証拠品と手紙を二通入れた袋を置いた。

 二通の手紙には一つは先代竜王の死に関する報告書でもう一つは視察の時にロイバルトがギオンを襲撃する計画があるので視察を中止にした方がいいということを書いたモノだ。


 王宮にはマクシオン商会の手紙を装ってギオンに「例のモノをお渡しします」という連絡はしてある。

 もうすぐ証拠品を取りに来るだろう。

 私は「透明人間」なってちゃんと受け渡しができたかの確認をするために待機した。


 40分ほど待つと受け渡しの場所に一人の男性が現れた。

 その男性はギオンではない。ギオンの側近のラムセスだ。


 ラムセスが来たのね。まあ、ギオンが来ると目立つ可能性もあるしね。


 ラムセスは袋を木の穴から取り出し代わりに自分が持って来た袋を置いた。

 見なくても中身は分かる。

 シャナールへの報酬だ。


 私はラムセスの姿が消えてから木の穴に置かれた袋を取り出した。

 袋には「金貨」がたくさん入っていた。

 

 私としてはシャナールの報酬よりもこれから起こるだろう竜王家の騒動の方が気がかりだった。

 証拠を手にしたギオンはルクセル竜王の悪事を暴露するだろう。

 現竜王が先代竜王を殺したとなったら大きな問題になる。


 ギオンならうまくやるとは思うがそれにギオンの身も心配だ。

 無事にシャナールからの忠告を受け取って視察を中止してくれるといいけど。


 私は「透明人間」の時間が切れるのを待ってマクシオン商会に戻った。




「これで取引は成立ですね」


 私はニコリと笑顔で取引相手の商人に話しかけた。


「ありがとうございます。会長様」


 その商人が帰って行き私は溜息をつく。

 表の商売の方もちゃんと会長としてやらなければならない。

 今朝、ラムセスに証拠品は渡ったからギオンは真実を知ったことだろう。


 ギオンの様子を見に王宮に行きたかったが他の商人との重要な取引があって行けなかった。

 でもそれもようやく終わった。

 私が会長のテントで帳簿を確認しているとテントの外から声が聞こえた。


「ミア。いるか?」


 私はその声に驚く。

 この声はギオンだ。

 慌ててテントの外に出るとギオンが立っていた。


 なんでギオンがここに?

 シャナールの報告を聞いてルクセル竜王の悪事を追求してるはずじゃなかったのかな。

 それとも私の報告と証拠じゃ不十分だったのかしら。


「ギオン。今日はどうしたの?」

「ああ。今日は視察に出る予定だったんだがラムセスが代わりに行って来るって言うから時間ができてな。ミアの顔を見たくなって」


 え?今、なんて言ったの?

 ラムセスがギオンの代わりに視察に行ったですって!?


 私はギオンに視察でロイバルトが襲撃予定だから中止にするように手紙に書いたはずだ。

 なのに中止じゃなくてラムセスを代わりに行かせるなんてラムセスが襲撃を受ける可能性がある。

 それともギオンは視察に行っていないことになってるのかな。


「ねえ、ギオン。シャナールからの手紙をもらった?」

「ああ。読んだよ。おかげで大体の真実は分かった。いずれルクセル竜王とは決着をつける」


 ギオンが言ってるのは報告書の方よね。


「もう一つの手紙も見た?」

「もう一つの手紙?いや、シャナールからの手紙は一通だったが」


 私はその時にラムセスの顔が頭を過ぎった。


「今日の視察はなぜラムセスに行かせたの?」

「ラムセスが俺が行くほどの視察じゃないって言いだしてな。昨日までは何も言わなかったのに「貴方はミア様に会いに行ってください。私が代わりに視察に行きます」って言ったからミアに会いに来たんだ」

「ギオンは今日は視察に行ったことになってるの?」

「ああ、その方がミア様にゆっくり会えるでしょうと言われて視察に行かなくなったことは周囲には話してない」


 ギオンの言葉で私は確信した。

 ラムセスはギオンに手紙を渡す前に内容を見てギオンの身代わりに自分が視察に行くことにしたのだろう。


「今すぐラムセスを追わなければダメよ!今日の視察でロイバルト王子がギオンを襲撃する予定だったのよ!」

「なんだって!?」

「きっとラムセスはギオンを危険に晒さないように自分が身代わりになったんだわ!」

「あの、馬鹿!」


 ギオンはそう言って自分の馬に戻り走り出した。

 私も近くに繋いであった自分の馬に乗りギオンの後を追った。


 ラムセス!無事でいて!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ