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第38話 売買記録は膨大です

 私はマクシオン商会に戻って一度チャールの家から持ち出した証拠の手紙を秘密の箱にしまって置いた。

 するとディオンがやって来て私に「来客が来た」と伝えた。


 来客って誰だろう?


 私がそう思ってディオンにテントに通すように言うと男性が入って来た。

 スルヴィスだ。


「なんだ、スルヴィスか」

「なんだはないだろう、ミア。愛しいギオンじゃなくてごめんね」


 スルヴィスは相変わらず軽い調子で話してくる。

 私はスルヴィスに椅子を勧めた。

 ディオンは部屋を出て行く。

 スルヴィスが私の知り合いだと知って二人にしても問題ないと思ったのだろう。


「ミアって本当にマクシオン商会の会長だったんだね」

「あのねえ、昨日はここにスルヴィスの馬も預けたじゃない。マクシオン商会の関係者以外の馬を預かるわけないでしょ?」

「ハハハ、確かにそうだけど、マクシオン商会の関係者と言っても「会長」かどうかは分からないだろう?」


 スルヴィスは肩を竦めて答える。


 意外とこのスルヴィスって男は抜け目がないようね。

 でも慎重な人物の方が信頼はできるわ。


「それで何か収穫はあったかい?」


 スルヴィスの言葉に私はハッとなる。

 どうやらスルヴィスはチャールの家を探った結果どうだったかを聞きに来たらしい。


「まあ、シャナールからは「良い証拠」は手に入ったと報告は受けたけど、まだ証拠が必要みたいよ」


 私はあくまでお抱えの「シャナール」からの情報としてスルヴィスに答える。


「そうか。収穫ありか。でもまだ他にも証拠が必要なのかい?」

「ええ。例の薬は「青い貴婦人」という花がないと効力は発揮しないらしいの。だからその当時「青い貴婦人」を王宮が購入した記録が欲しいらしいわ。それも誰の命令で購入したのかが分かればバッチリよ」

「なるほどね。では今度は王宮への調査か」

「まあね。私の所のシャナールは優秀だからすぐにその証拠を見つけられると思うわ」


 王宮に「透明人間」のスキルで潜入して売買記録を調べるならそんなに難しいことじゃない。

 私はそう思ってスルヴィスにそう返事した。


「そう簡単に行くかな?」

「え?どういうこと?商品の売買記録を調査して手に入れればいいんでしょ?シャナールならそれぐらいはできるわよ」


 スルヴィスったら「シャナール」の力を見くびっているのかしら。


「う~ん、シャナールって確かに秘密の情報を探したり証拠を見つけたりするのが商売なのは知ってるけど。王宮に納入される品物の売買記録の量って知ってる?」

「売買記録の量?」

「ミアだってマクシオン商会の会長だから商会で売買する帳簿は持ってるだろう?」

「そりゃ、もちろんよ」

「それってかなりの量になると思うんだけど、違う?」


 私はそこで思い出した。

 確かにスルヴィスの言う通りに商売の売買記録を書いた帳簿はかなりの量になる。

 だけどそれは必要な物なので必ず保管するが旅先には必要最低限の帳簿類しか持っては来ない。

 お父様の時から旅が終わる度に商人の町の商会の倉庫に旅で溜まった帳簿類をしまっていた。


 そして新たな旅に出る時は必要最低限の帳簿だけを持つ。

 しかし行く先々で帳簿類は増えていくのでマクシオン商会の馬車の一つは帳簿類を運ぶだけのモノもあるぐらいなのだ。


「そうね。かなりの量にはなるわね」

「だからさ、王宮に納入される商品の売買記録ってものすごい量が保管されてると思うんだよね。その中からその証拠の部分を探して手に入れるのはいくら優秀なシャナールでも時間かかるんじゃないかな」


 そうね。売買記録の倉庫に忍び込んでも膨大な書類から探すのは大変な作業よね。

 チャールの家の本棚を探すのとはわけが違うだろうし。

 シャナールは別に魔法使いでも何でもないから、単純に私が倉庫の中で書類をひとつひとつ見ていたらいつ証拠の書類が見つかるか分からない。


「でもそういうのはどこに何の書類が置いてあるかを管理している管理簿があるんじゃないの?」


 私はマクシオン商会の帳簿類の管理方法を思い出す。

 どこの棚にいつ頃の帳簿があるかは管理簿に書かれている。

 だから私やディオンは昔の帳簿類を簡単に見つけられるのだ。


「そう思うのが普通だよね」


 スルヴィスは人の悪い笑みを浮かべる。


 なんか、嫌な予感がするんだけど。


「実はね。今から一年前に王宮で火事があってね。それまでの管理簿が焼けてしまう事件があったんだ」

「え?火事で管理簿焼けちゃったの?」

「そう。売買記録の書類の方は別の場所に管理されてたから残っているけど、どこにどんな売買記録があるかは分からなくなってしまったんだ」


 マジで?それなら「青い貴婦人」の売買記録を探すの大変じゃない。


「それが本当なら確かにシャナールでも時間かかりそうね」

「だろ?でもひとつだけ簡単に見つける方法はある」


 方法?何かしら?


「管理簿を「記憶」している人物に聞けばいい」

「管理簿を記憶してるって……まさかどこにどんな売買記録があるか記憶している人物がいるってこと!?」


 そんな化け物みたいな記憶能力を持つ人物なんているの!?


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