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第37話 毒薬依頼の手紙を発見しました

 私は酒場のフォルトに聞いた場所へと向かった。


 確か第三通りのファッカスの宿屋の角を曲がるのよね。


 私はファッカスの宿屋の角を曲がり細い道に入る。

 人通りはない。

 そして目的の妖族の薬師の家を確認した。


 あそこがそうね。まずは「透明人間」にならないとね。


 私は自分の血を舐めて透明人間になった。

 自分の服を脱いで道の横に置いてある樽の陰に隠した。


 私は薬師の家の扉をそっと開けた。

 そして中に滑り込む。

 中はいろんな薬が入った瓶が棚に並んでいる。

 家の外見は普通の民家のようだが中に入ればここが薬屋なのが分かる。


「はい、どちらさん?」


 部屋の奥から一人の男性が出て来た。

 人の姿をしているが竜族の国民のように身体に鱗の部分はないようだ。

 妖族も基本的には人の姿をしているとディオンからは聞いている。


「ん?扉が開いた気がしたが。気のせいか」


 当然その男には私の姿は見えない。


 この男がチャールね。


 チャールはまた奥の部屋へと引っ込んだ。

 私は奥の部屋に足を踏み入れる。

 そこは薬を作る「調剤室」のようだ。

 いろんな材料がごちゃごちゃと棚に置いてある。


 この中に「死の華」の毒薬があるのかな?


 私は「死の華」を見たことはない。

 仮にこの部屋に「死の華」があっても見分けがつかない。


 う~ん、どうしようかしら。


 チャールは椅子に座り手紙を見ていた。


「はあ、もっと効き目の長い瞳を赤くする薬を作れだと?あのルクセル竜王も人使い荒いぜ」


 チャールは手紙を見て溜息交じりに文句を言う。


 え?今、ルクセル竜王って言った?


 私はチャールにそっと近付く。

 ルクセル竜王とのやり取りの手紙ならこの薬師とルクセル竜王が繋がりがあることは証明できる。


「まあ、あの竜王が高く薬を買ってくれるおかげで俺も儲けられるんだが。前に「死の華」を売った時は定価の3倍で買ってくれたしな」


 チャールは人の悪い笑みを浮かべる。


 やっぱり「死の華」をルクセル竜王はチャールから買っていたのね。


 私が考えた通りルクセル竜王は「死の華」を使って先代竜王を殺害した可能性が高い。

 あとはルクセル竜王が「死の華」をチャールから買ったかもしくはチャールに作らせた証拠があればいい。


 チャールは手紙を持って部屋の奥にある本棚に向かう。

 そして本棚の本を一冊取り出して本を開く。

 その本は普通の本ではなく外見は本だが内部がくり抜いたような空間が作ってありチャールはそこにルクセル竜王の手紙をしまった。


 なるほど、人に見られたくない依頼の手紙などをこうやって隠しているのね。


「仕方ない。材料の買い出しに行くか」


 チャールはそう言って外套を着て家を出て行った。


 チャンスだわ!


 私はその本棚の本を取り出して調べると他の本の中にも書類が隠してある。

 一つずつその書類を確認して私は目当ての書類を見つけた。


 それはルクセル竜王がまだ王子だった頃にチャールに依頼した手紙だ。

 『死の華を作って欲しい。値段はそちらの言い値を出す。しかしこの依頼があったことは他言無用だ。他の者に話したらお前の命はない』

 そして他の手紙もある。

 『約束通りに金を用意したので死の華を渡してもらいたい』

 それと同じくチャールがルクセル王子とどこで死の華を渡したことなどがチャールのメモとして残っている。

 メモの中にはルクセル王子に死の華を渡した次の日に竜王が亡くなったのでおそらく死の華を竜王に使ったのだろうと書いてあった。

 そしてその証拠としてその日にルクセル王子の命令で死の華を使用するための特別な花「青い貴婦人」が王宮に大量に入荷されたとも書いてある。


 死の華の毒薬が効力を発揮するために必要な「青い貴婦人」と呼ばれる花はこの世界では妖族の住むマリンダ王国の一部でしか栽培されていない特殊な花だ。

 マクシオン商会の商品の中にその「青い貴婦人」から作る香水があるのだがそれはものすごい希少な品物の一つだ。

 そんな希少な花を大量に王宮が購入したのならその売買記録は今でも王宮に保管されているに違いない。

 「青い貴婦人」の花自体は有害でも何でもない。

 おそらく先代竜王の部屋にだけ「青い貴婦人」が飾ってあったら目立つかもしれないがその当時に王宮全体に「青い貴婦人」が飾ってあったら誰も「死の華」のことに気付かなかっただろう。

 

 きっとその売買記録とこの手紙があればルクセル竜王が「死の華」を使って先代竜王を殺害したという証拠になるわ。


 私はその証拠の手紙を手に入れてチャールの家から脱出した。


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