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第33話 特殊な毒です

 私はマクシオン商会の自分のテントでお父様の遺した「妖族」の「毒薬」についての書物を読んでいた。

 お父様は優秀な「シャナール」として働く中でいろんな種族に関するモノについて自分で書き記していた。

 もちろんこの書物は他の者には見せられない。

 お父様が亡くなる時に最後に私にこの書物を渡して言った。「シャナールとして困ったことがあったらこれを参考にしなさい」と。


 私はページを捲りながら妖族の関係する場所を読む。

 やはり妖族はいろんな薬に関する知識が豊富で他の種族にはない薬も多く取り扱っているようだ。

 マクシオン商会でも妖族の薬の取り扱いはあるがそれらは専ら病気を治すような薬だ。

 「毒薬」は表の流通ルートでの取り扱いがない。


 まあ、そりゃそうよね。毒薬なんてものが簡単に手に入るようなら混乱が起きるわよね。


 私が読み進めていくと「毒薬」の売買は基本的に妖族の王である「鬼神王」の許可が必要らしい。

 しかし妖族の王である「鬼神王」が自ら先代竜王を殺すために毒薬の売買を認めたとは思えない。

 そんなことをすれば「竜族」と「妖族」の戦争になってもおかしくない。


 きっと、鬼神王が認めてない妖族の薬師がいるんだわ。


 そこで私はふと書物の文字に目を止めた。

 そこにはある「毒薬」について書かれている。


 「死の華」と名付けられた毒薬だ。


 この毒薬は毒殺する相手の近くにある種類の花を花瓶に活けてその花瓶の水に溶け込ませればよいもの。

 毒薬を溶かした水を吸った花は花の香りと共にその毒素をまき散らす。

 僅かな量で対象物を死に至らしめる毒薬だが効き目は約一時間しか続かず一時間を過ぎた後は普通の水と変わらないものへと変化するので証拠は見つけにくい。

 また香りの毒も約一時間で効力がなくなるのでそれ以上の時間をおけばその花瓶のある部屋に入っても問題ない。


 これってめっちゃ怖い毒薬じゃない。

 ほとんど完全犯罪できる代物よね。

 さすが異世界ってことかしら。


 私の前世の世界では考えられないような「毒薬」だ。


 でもこれって証拠を掴もうとしても毒が消えてしまうなら証拠なんて残らないじゃない。


 私はジッと考える。

 もしこの毒薬が使われたのならルクセル竜王と取引をしている妖族の薬師がこの毒薬を持っている可能性はある。

 だけどそれをルクセル竜王が妖族の薬師から購入した証拠がなければならない。

 普通に考えればそんな取引の証拠を妖族の薬師が保管しているはずはない。

 先代竜王の死に関わったことがバレれば薬師の命にも関わるからだ。


 いえ、待って。この薬師はまだルクセル竜王と瞳を赤くするための薬の売買を続けているはず。

 それなら逆にこの毒薬の売買記録を隠し持っている可能性があるわ。

 だってそれがあればルクセル竜王は易々とその薬師を殺せなくなるもの。


 薬師が自らの保身のためにわざと証拠を持っている可能性があると気付いた私はその妖族の薬師を突き止めようと思った。


 そこへディオンがやって来た。


「ミア様。今日の商売の取引の帳簿をお持ちしました」


 私は書物を箱に入れてからディオンに言う。


「ありがとう。チェックしておくわ。それとディオン。このアイルスに妖族の薬師がいるか知りたいんだけどどうすれば分かるかしら?」

「妖族の薬師ですか?」

「そう。裏の仕事で調べなければならないの」


 ディオンは少し考えていたが口を開いた。


「商人の広場で商売している者に今現在妖族の薬師はいません。なのでやはりアイルス在住の竜族に聞き込みするしかないかと」

「そうよね。それしか方法はないわよね。でもその辺の竜族に聞きまくるわけにはいかないわよね」

「そうですね。裏の商売関係者のことなら公に探すとその妖族の薬師が姿を消す可能性がありますからね」

「どうしたらいいかな?」

「一番、情報が集まりやすいのはどこの国でも「酒場」ですが……ミア様がお一人で酒場に行くのは不自然ですし、私もまだこれから商売の取引の事務処理があるので今夜はお付き合いできません。私が手が空いたらでいいなら協力しますが」

「そうねえ」


 さすがに14歳の少女が一人で酒場に行くわけにはいかないし、透明人間になったとしてもその妖族の薬師についての話をそこの人間に聞けないなら酒場に潜り込んでも意味がない。


「それに私もミア様も人間族ですから警戒される恐れもあります」


 そうか。すると一緒に「竜族」がいた方がいいわよね。

 でもギオンはあの姿じゃ目立つしなあ。


 私やギオンの関係者でありながら協力してくれる人がいればいいんだけど。

 そこで私はある人物を思い出した。


 そうだ。彼なら協力してくれるかも。


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