表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/95

第30話 母親も不審死です

「この馬だよ」


 スルヴィスが見せてくれたのは青鹿毛の馬だった。

 体格もよく足もしっかりしている。


「軍馬として調教したんだけどスピードも体力も他の馬より群を抜いていてね。試しに騎乗してごらんよ」


 スルヴィスはそう言ってその青鹿毛の馬に鞍を載せる。


「へえ、なかなか良さそうな馬だな。お言葉に甘えて少し乗ってみるか」

「ああ。その辺を一周してみなよ」


 ギオンはスラリとその青鹿毛の馬に跨る。

 私にはその姿がとても美しく見える。

 まさに人馬一体という感じだ。


「ミア。少し走ってくるから待っててくれ」

「分かったわ。ギオン」


 ギオンはその青鹿毛の馬を走らせ始めた。

 その様子を私とスルヴィスは柵に寄りかかりながら見つめる。


 今はスルヴィスと二人きりだからスルヴィスのことが聞けるかな。


「ねえ、スルヴィス。スルヴィスとギオンってどうして幼馴染になったの?」

「ん?気が合ったからだよ」

「いえ、そうではなくてスルヴィスは平民でしょ?どうやって幼い王子のギオンと知り合ったのかと思って」

「ああ、それなら私とギオンはある人物に可愛がられていてね。それがきっかけで知り合ったのさ」


 ある人物に可愛がられていた?それって誰のことだろう。


「そのある人物って誰のこと?」

「それは秘密。ミステリアスの男の方がカッコいいだろう」


 スルヴィスは笑いながらそれ以上のことは言わない。


 やれやれこのスルヴィスも一筋縄ではいかないわね。

 まあ、でも本人が話したくないのを無理に聞き出すのは悪いわよね。


「そういえばギオンって王太子になりたくないらしいけど、何か理由があるのか知ってる?」

「ミアはギオンのことが知りたいの?」

「ええ、まあ」

「まあ、好きな男のことを知りたいのは当たり前だよね。ギオンは子供の頃母親が病死したんだ。ギオンはそれから少し変わったかな」

「へえ、そうなんだ」


 そういえば前にギオンが「母親もいない」って言ってたのを私は思い出す。 


「まあ、表向きは病死だけどギオンは母親が殺されたのではと疑っている」

「え?」


 先代竜王だけじゃなくて母親まで殺されたってこと?


「何でギオンはそんなこと思っているの?」

「ギオンの祖父と母親の死に方が似ていたせいだよ」


 それって二人とも「毒殺」ってことかな。

 可能性としてはあるわよね。


「それって何か証拠とかはなかったの?」

「そうだな。最初は「毒殺」を疑って調べたらしいが結局「毒」は発見されなかった。少なくとも竜族の世界で出回っている「毒」はね」

「じゃあ、スルヴィスは竜族が持っていない「毒」を使ったと思っているの?」

「可能性はゼロじゃない。私はよくは知らないが「妖族」には特別な「毒薬」があるって聞いたことがあるしね」


 私はハッとした。


 そうだ!妖族はいろんな薬を作る者が多い種族だ。

 確かお父様の遺した商売記録にも妖族の「毒薬」について書いてあったはずだわ。

 よし、帰ったら確認してみよう。


「この国にも妖族はいるの?」

「ああ、人数は少ないがいるよ。だいたいが商人だけどね」


 なるほど。妖族の商人と話せば何か分かるかもしれない。


「さっきギオンは母親が病死してから変わったって言ってたけどそれはなぜなの?」

「ギオンは母親がレッドドラゴン種だったから殺されたんじゃないかって以前言っていたが私もその意味は分からない」


 レッドドラゴン種だから殺された?

 ギオンもレッドドラゴン種で命を狙われている。

 そんなにレッドドラゴン種であることに意味があるのかな。


 そこへギオンが私たちの方に帰ってきた。


「どうだった?その馬は?」

「ああ、なかなか素晴らしい馬だ。ぜひ俺の馬にしたい」

「そうか。じゃあ、そういう手続きをするよ」


 スルヴィスとはもっと話したかったが夕方になっていたので私とギオンは王都へと戻る。


「ギオンってお母さんも亡くなったって前に言ってたけど、おじいさんやお母さんがいなくて寂しくない?」


 好きな肉親は死んで父親のルクセル竜王や異母兄のロイバルト王子に命を狙われるギオンが寂しいのではないかと思って尋ねてしまう。


「平気だ。俺にはラムセスやスルヴィスがいるし、今はミアもいるしな」


 そう言ったギオンは特に寂しい顔はしていない。


 そうか。ギオンにラムセスやスルヴィスという友人がいてくれて良かったわ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ