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第29話 馬には種類があります

「まったくお前はいつまで経っても食えない男だな。スルヴィス」

「そう言うなって。ギオンとミアは子馬を見に来たんだろ?」

「ああ、そうだ」

「じゃあ、案内するよ。こっちだよ」


 私とギオンはスルヴィスの後をついていく。

 スルヴィスは馬が繋がれている馬屋に案内してくれた。


「これが先日産まれた子馬だよ」


 そこには母馬と共に鹿毛の子馬がいる。


「うわあ、可愛い!」


 私はその産まれて数日だと思われる子馬を見て思わず声を出した。

 子馬は大きな瞳で私たちを見ている。

 人を怖がってはいないようだ。


「この馬はね、父馬が竜王国内で行われた競技大会のスピード部門で優勝した馬なんだ。だからこの馬も成長すれば十分名馬になる可能性はある」

「へえ、そうなのね」

「それは楽しみだな」


 スルヴィスの言葉に私とギオンは返事をする。


 確か、馬は血統が大事とかディオンが言ってたような。


 マクシオン商会では大型の生き物の取引は扱っていないが商隊が旅をするために馬は必要不可欠なものなので時々馬の売買はする。

 その時にディオンは馬の血統を必ず確認していた。


 そうだ、良い馬がいたらスルヴィスと取引をして購入してもいいかもしれない。


「スルヴィス。マクシオン商会と取引する気ない?」

「マクシオン商会と?」

「今回は長旅なの。馬は荷物を運ぶのに必要なのよ。力がある馬とかはいないの?」


 私がスルヴィスに聞くとスルヴィスは笑顔で答える。


「いるよ。この馬とは種類が違うけど荷物を運ぶ馬ならいる。本来は私は人間族とは取引はしないんだがミアとなら取引してもいいよ」


 ん?それって何か昔人間族との取引で何かあったのかな。


「スルヴィスは人間族と何かあったの?」


 するとスルヴィスはどこか苦々しい表情になる。


「昔、グドリアーナ帝国に住む人間族がやって来て「取引したい」って言ってきたから取引したんだけど人間族は「馬」というモノが分かってない」

「え?どういうこと?」

「馬はいろんな種類がいてそれぞれ「競争」に向いている馬、「馬車」を引く馬、「軍馬」、「荷物用」の馬、「寒冷地」に向いている馬などがいる」

「そうなのね」

「だが人間族は足が速い馬に「馬車」を引かせれば馬車も速く走れると思っている奴らが多くて「競争」用の馬に馬車を引かせたりする。「競争馬」はスピード重視でかけ合わせてるから足が細くて馬車なんか引かせたら骨折しやすくなる」


 骨折?それは可哀そうだわ。

 それに馬は基本的に骨折したら安楽死させるとディオンも言っていた。


「自分たちが馬を滅茶苦茶に使っていながら馬が使いモノにならなくなると「骨折するような馬を売った」とこちらを責めるんだ。そんなことで文句言われるのは嫌だし、なにより馬が可哀そうだからな」


 スルヴィスの言葉にはどこか怒りが感じられた。


 そりゃ、大事に育てた馬がそんな扱いを受けたら怒るわよね。


「マクシオン商会にはディオンという馬に詳しい人物がいるからスルヴィスの大切な馬をそんな扱いはしないから安心して。もし心配なら直接ディオンと話をしてみてディオンが信頼できる人物だと判断してからの取引でいいわ」


 商人の取引は「信頼」が大切だ。

 まずはスルヴィスにマクシオン商会が「信頼」できる商売相手だと思ってもらわなければならない。


「へえ、随分そのディオンって奴をミアは信頼してるんだな」

「ディオンは私の父の片腕だったの。まだ若いけどマクシオン商会で私が一番頼りにしている人物よ」

「早くもギオンのライバル登場か」

「は?」


 ディオンがギオンのライバルですって?

 それって恋愛感情での意味よね?


「ディオンとはそんな関係じゃないわよ!」

「でもそのディオンとはずっと一緒に長旅をしてるんだろ?」

「そ、それはそうだけど」

「スルヴィス。そのぐらいにしとけよ」


 それまで黙っていたギオンが低い声で威嚇する。

 スルヴィスはギオンに威嚇されても動じない。


「分かったよ。ギオン。それよりギオンに献上したい馬がいるんだ。ぜひ乗ってみてくれよ」


 スルヴィスはまた歩き出す。


 それにしてもこのスルヴィスは人をからかうのが好きみたいね。


 そこで私はふと思った。

 ラムセスは今もギオンの側近をしているぐらいだから竜王家に近い身分の人物の可能性は高い。

 だって王子のギオンの乳兄弟でもあるのだから。

 じゃあ、このスルヴィスはなんでギオンの幼馴染なのかな。

 牧場経営をしていてもスルヴィスは平民だ。

 平民のスルヴィスが王子のギオンの幼馴染になった理由はなんだったのかな。


 私は前を歩くスルヴィスの背中を見ながら考えていた。


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