表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/89

第2話 赤毛の男はイケメンです

 私が森の中に入ると森は遠目に見た時と違い中に入っても木々の隙間から太陽の光が差し込んで暗くはない。

 これなら充分に森を堪能できる。


この異世界に転生して思ったことの一つにはこの世界は自然が多いこと。


 前世が日本の東京で暮らしていた私にとっては田舎は憧れの場所だった。

 どこに居ても周りがコンクリートジャングルの世界。


 この世界より確かに移動も便利でいろんな食べ物がありお金さえあれば贅沢な暮らしができた前世の世界。

 でも私にはその世界よりもこっちの世界の方が性に合ってる気がする。


 ここには心を満たしてくれる何かがある。


「あ、ウサギだわ!」


 私の前を茶色の野ウサギが横切る。

 動物がいるってことはこの森はさほど危険な森ではない。


 この異世界では植物も人を襲うモノがある。

 だがそう言った植物がある森はあまり動物がいないのが常識だ。


 まあ、これはあくまで本から得た知識で私は本物は見たことがない。

 私は前世で小説が好きだったからこの世界でも好んで本を読んでいた。


 そのことを知っていた父は行商から帰る度に私に新しい本をお土産に買ってきてくれた。

 おかげで私はこの世界で話される言語のほとんどを話せるようになったけど。


「お父様が亡くなった時は寂しかったけど、こうやって商売しながら旅に出れたから良しとするか」


 私は元々気楽な性格ではある。

 ディオンには「気楽過ぎる」って注意もされるけど。


 私がルンルン気分で森の中を歩いて行くと水の音が聞こえる。


「小川でもあるのかな」


 私は水の音が聞こえる方へと歩いて行った。

 茂みをかき分けると川があった。


 そうだ。水筒の水を入れておこう。


 私はそう思って川に近付こうとした時に人がいるのに気付く。


 誰?


 私はサッと木の影に身を隠す。

 そして改めてその人物を見る。


 上着を脱いで上半身裸になった人が川に布のような物を濡らしている。

 こちらには背中を向けているから顔は分からないが男性というのは分かった。


 髪の毛は燃えるような赤い髪だ。

 父親の所には竜族の人も多く訪ねてきたけどこんな赤い髪の人は見たことない。


 そして私はハッとなる。


 その男性の背中には大きな傷跡があった。

 するとその人は私の方を振り返り言った。


「そこにいるのは誰だ?」


 私は自分のことを言われているのがすぐに分かった。

 なんか盗み見てしまった形になって気まずいが「奥の手」を使って逃げるような危険は感じない。

 だから私は素直に木の影から出て行った。


「ごめんなさい。ちょっと水が欲しくて川に来たんだけど貴方がいたから驚いて隠れたの」


 私は正直に話す。


 すると赤毛の男は上着を着ながら呟く。


「なんだ。子供か」


 子供ですって!?私は確かに未成年だけどもう14歳よ。

 大人の知識もある女性なんだからね!


「子供じゃないわ!私はもう14歳よ!」


 私がむきになって言い返すのが面白かったのかその赤毛の男は笑った。

 私はその笑顔を見て心がドキドキと高鳴った。

 そしてその赤毛の男は瞳も燃えるような赤い瞳だった。


 なんて素敵な笑顔だろう。こんなイケメンはそうはいないわ。


「14歳なんて竜族で言ったら赤子のような年齢だ」


 むう、確かに竜族は人間より数倍は長生きするからそう言われても仕方ないけどさ。

 私は人間族なんだから。


「私は人間族よ。だから14歳は子供ではないわ」

「ほお。人間族か。だが人間族も成人は18歳じゃなかったか?」


 赤毛の男は赤い瞳を細めて笑う。


 うっ、確かにそうなんだけど。


 私が悔しそうな顔をするとその赤毛の男は私に言った。


「水が欲しいんだろ?自由に水を汲めばいい」


 私は無言で川に近付き水を水筒に入れる。


 これで王都までは水が持つだろう。


「お前、名前は?」

「ミアよ」


 私は苗字は名乗らなかった。

 マクシオン商会の娘と分かれば危険が及ぶことがあるとディオンに教えられていたから。


「ミアか。大予言者と一緒だな」

「そうよ。貴方の名前はなんて言うの?」

「俺か……ギオンだ」


 ギオンも苗字は名乗らなかった。


 このギオンという名前も本名か分からない。


 でもそんなことはどうでもいいわ。

 別れてしまえば二度と会えない人だろうし。


 その時私は自分がそのことをとても寂しく思っていることに気づく。


 なんでだろう。ギオンとはもっと一緒にいたいな。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ