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第28話 ギオンの幼馴染です

 牧場の小屋に行くと一人の青年がいた。

 青年はギオンに気付くと頭を下げる。


「お久しぶりです。ギルバード様」


 青年は銀髪に青い瞳だ。

 ギオンの正体を知っているらしくギオンのことをギルバードと呼んだ。


「スルヴィス。今はお忍び中だ。ギオンと呼べ。それにお前にそんなかしこまった話し方されると気味が悪い」


 ギオンは苦々しい表情になる。


「フフフ、酷いなあ、ギオン。女性が一緒だから気を使ってやったのに」


 スルヴィスと呼ばれた銀髪の青年は笑いながら口調が変わる。


 ギオンのことをギルバード王子と知っていながらこんな話し方が許される人って誰なんだろう。


 スルヴィスは私を見た。


「ギオン。君の奥さんを紹介してくれないのかい?」

「まだ結婚してない」

「でも君が熱愛してる女性がいるってラムセスには聞いたけどこの彼女じゃないの?」


 私はスルヴィスに「ギオンが熱愛している女性」と言われて顔を赤くした。

 ギオンの気持ちは王宮に忍び込んだ時に聞いたがギオンはそのことを知らないはず。


「間違ってはないが……余計なことを言ったのはラムセスか。あいつ、後で覚えてろよ」


 ギオンは軽く舌打ちするもののスルヴィスの言葉を否定しなかった。


「ミア。こいつはスルヴィス・ダウン。この牧場の経営者で俺の幼馴染の一人だ。スルヴィス、彼女はミア・マクシオン。マクシオン商会の会長だ」

「へえ、マクシオン商会の会長さんか。ミア様、スルヴィスと申します。ギオンとは幼馴染です。よろしくお願いします」

「はい。ミア・マクシオンです。どうか私のことはミアとお呼びください」

「そうですか。では遠慮なくミアと呼ばせてもらうよ。私のことはスルヴィスと呼んでね」

「分かりました。スルヴィス」


 私はスルヴィスと握手をした。


 スルヴィスはギオンの幼馴染だからギオンの前でもこんなに気さくな態度なのね。

 さっき私が王宮で見たラムセスって人の名前も言ってたけどラムセスって人ももしかしてギオンの幼馴染なのかな。


「ねえ、ギオン。さっき言ってたラムセスさんて誰なの?」

「ん?ああ、ラムセスは俺の乳兄弟で優秀な側近だ。俺とラムセスとスルヴィスは幼馴染で昔からいろいろと一緒に行動してたんだ」

「へえ、そうなのね」

「そうだね。ギオンとラムセスとはいろんなことをしたよ。おかげで「大人の遊び」も三人で楽しんだよね」

「おい!ミアに変なこと言うな!」


 ギオンが慌ててスルヴィスに注意する。


 「大人の遊び」ってつまりあのこと?

 ギオンは大人の男性だし見た目よりも歳はとってるはずだから経験豊富でもおかしくない。

 でも私は心の中がもやもやする。


「ギオンは大人だもんね。「大人の遊び」を楽しんでも仕方ないわよね」


 私は知らず棘のある言葉が出る。


「違う!ミア。俺はそんなことしてない!」

「でもスルヴィスとラムセスさんと「大人の遊び」をしたんでしょ?」

「だから勘違いだ。ミアが思っているようなことはしてないって!スルヴィス!誤解を招くこと言うなよ!訂正しろ!」


 ギオンがスルヴィスに向かって怒鳴る。

 スルヴィスは「面白いモノを見た」という表情だ。


「へえ、ラムセスには聞いてたけどギオンは本気でミアのことが好きなんだな。分かった、分かった。ミア、私たちがした「大人の遊び」ってのは各国のお酒の飲み比べのことだよ」


 へ?お酒の飲み比べ?

 「大人の遊び」って「飲酒」のこと?


「お酒の飲み比べのことなの?」


 私がスルヴィスに確認するとスルヴィスは笑顔で頷く。


「そうだよ。ギオンやラムセスや私はお酒が好きでね、よく夜明けまで飲み明かしたもんさ」

「そうなんだ、ミア。こいつの言葉には気をつけろ。昔から相手が誤解するようなことを言って楽しむ悪癖があるんだ」

「酷いなあ。誤解するほうが悪いんだろ?私は嘘は言ってない」

「お前のその性格の悪さ直さないと身を亡ぼすぞ」

「ハハハ、私は意外としぶといからそんなに簡単には死なないさ」


 ギオンとスルヴィスは言い合いしてるがその姿は二人が仲が良いとしか思えない。


 それにしても「誤解するほうが悪い」なんてスルヴィスって人もいい性格をしてるわね。


「分かったわ、ギオン。誤解してごめんなさい」

「いや、ミアが謝る必要はない。元凶はこの男だ」


 ギオンはスルヴィスを睨むがスルヴィスは気にしてない。


「へえ、ミアは「何」と誤解したの?」

「え?それは……」


 私はスルヴィスの言葉に顔が真っ赤になる。


「ミアって初心なんだね。ギオンと「一晩一緒に過ごした」って聞いたからてっきりもうギオンとそういう「関係」なのかと思ったけど違うのかな」

「違います!」


 私はスルヴィスに大きな声で訂正してしまった。


「いい加減にしろ!スルヴィス」

「冗談だよ。そう怒るなってギオン」


 スルヴィスはあくまで笑顔でギオンと私を見ていた。


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