第23話 ルクセル竜王が怪しいです
私はルクセル竜王の言葉に驚きを覚えた。
なんでルクセル竜王はギルバードを殺そうとしてるの?
だってロイバルトがギルバードを狙うのは王太子になりたいからでしょ?
ギルバードが嫌いなら普通にロイバルトを後継者にすれば問題ないのに。
「しかし、あのくそ親父がギルバードを自分の後継者にしたいなんて言い出した時には焦ったが、まあ亡き者にできたから良かったが」
ルクセル竜王はお酒を飲みながら人の悪そうな笑みを浮かべる。
くそ親父?それってルクセル竜王の父親の先代竜王のことかな?
もしかして先代竜王を殺したのはこのルクセル竜王なの!?
私はルクセル竜王をまじまじと見る。
ルクセル竜王の言葉が正しいなら先代竜王は自分の息子のルクセル竜王より孫のギルバードを後継者にしたがっていたということよね?
なんでそんなことを思ったのかしら?
私の頭にはいろんな疑問符が浮かぶ。
ロイバルトがギルバードを殺したい理由はルクセル竜王がギルバードを王太子にしたがっているから。
しかし現実にはルクセル竜王はギルバードを殺したいと思っている。
その理由は分からないけど少なくとも先代竜王はルクセル竜王ではなくギルバードを竜王にしたがったのでルクセル竜王は先代竜王を殺した可能性が高い。
そもそもなんで先代竜王は息子のルクセル竜王を差し置いて孫を後継者にしたかったのか?
まずはルクセル竜王とロイバルトが共謀してギルバードの命を狙っているのかどうかを確認しようかな。
以前、庭で出会ったロイバルトはルクセル竜王がギルバードを王太子に指名する前にギルバードを殺せって言ってたからこの二人が共謀してる可能性は低いと思うけど。
そこでルクセル竜王は呼び鈴で侍女を呼んだ。
扉が開いたのをチャンスと思って私は隙を見て一度ルクセル竜王の部屋から出た。
さて、次はロイバルトの部屋を探してみようっと。
私は廊下を歩きそれらしき部屋がないか探索を始める。
するとある部屋の扉を少し開けて中を覗くと聞き慣れた声が聞こえた。
「ラムセス。例の件はまだ報告はないか?」
それは間違いなくギオンの声だ。
私は胸がドキドキする。
だって見えてないと言っても私は今全裸だし、やはり少し恥ずかしい。
「はい。ギルバード様。マクシオン商会のシャナールはギルバード様の依頼を受けたことは確認してますがそのシャナールからの報告はありません」
マクシオン商会のシャナールと聞いて私の体が緊張する。
そしてもう少し扉を開けて私は中を見る。
そこにはギオンと黒髪に黒い瞳の青年がいる。ラムセスと言うのはこの黒髪の青年のことらしい。
「マクシオン商会のシャナールは腕は確かだと聞いてるが……。どれくらい期間がかかるのか分からないのか?」
「ギルバード様。シャナールは受けた仕事は必ずやる者です。それにマクシオン商会のシャナールはその道では優秀ですので焦らずお待ちになった方がよろしいかと」
少し苛立っているギオンをラムセスが宥める。
確かにラムセスの言うようにシャナールは受けた仕事は必ずやる。もちろんその過程で命を落とさなければという条件はあるが。
ギオンは先代竜王を殺した犯人を捜しているのよね。
今の段階では推測だけどルクセル竜王が本当に先代竜王を殺したのなら犯人はルクセル竜王ということになるけど、証拠が無ければ意味はないわね。
証拠もなく依頼したシャナールからギオンに先代竜王を殺したのはルクセル竜王ですと報告してもギオンは納得しないだろう。
「まあ、仕方ないな。だが、最近はロイバルトの手先がやたらとうるさい」
「仕方ないでしょう。ロイバルト様はギルバード様さえいなければ自分が王太子になれるって思ってるんでしょうから」
「俺は別に王太子になりたいなんて言ってないぞ」
ギオンは不愉快気な顔になる。
「何を言われますか。竜王家の関係者でレッドドラゴン種で一番若いのはギルバード様なんですよ。ギルバード様が次代の竜王になられるのを望む者は多いですよ」
ラムセスは苦笑いを浮かべる。
へえ、ギオンってレッドドラゴン種の中で一番若い者なんだね。
レッドドラゴン種は強い力を持っているから皆がギオンを次代の竜王にって考えるのは当たり前なのかな。
でもルクセル竜王はギオンには王位を譲りたくないんだよね。
私はいろいろと頭で考えているとラムセスがギオンに話かけた。
「そういえば今朝は朝帰りしていたようですが例の女性の方と一緒だったのですか?」
その言葉に私は心臓が止まるんじゃないかというぐらいにドキリとした。
昨夜、ギオンと一緒にいたのは私だ。
何もなかったとはいえ仮にも一国の王子と一夜を共にした事実は変わらない。
私はドキドキする胸を手で押さえてギオンの様子を見た。