第21話 ギオンは王子です
私はその後にギオンと朝食を食べてマクシオン商会に戻った。
もちろんギオンに馬で送ってもらったのだ。
ああ、ディオンになんて言おうかな。
いくらギオンから外泊させるとディオンに連絡が云ったとしてもきっとディオンは怒るに違いない。
私がギオンの馬から降りるとディオンが私の姿を見つけて駆け足でやって来る。
「ミア様!」
私はディオンに怒られると思って覚悟する。
だがもしディオンがギオンに抗議するようなら止めなければならない。
お酒を飲み過ぎた自分が悪いのだから。
しかしディオンは私の横にいるギオンを見るとギオンに頭を下げた。
「私どもの会長がご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」
「え?」
なんでギオンにディオンが謝ってるの?
「別にこれぐらいかまわない。だが伝令にも伝えたが俺とミアのことは内密にな」
「承知しました」
ギオンとディオンの会話に私は頭に疑問符が浮かぶ。
なぜディオンは初対面のギオンに丁寧に対応してるんだろ?
「じゃあ、ミア。またな。時間があったらここに来るから」
ギオンはそう言って馬に乗り去って行った。
「ねえ、ディオン。なんでギオンに頭を下げたの?」
「はあ!?ミア様はあの方がどなたかも知らずにあの方と一晩を過ごされたのですか!?」
「ちょっと!変なこと言わないでよ!ギオンとは何にもなかったんだから」
私は慌ててディオンに注意する。
「ミア様の天然は今に始まったことではありませんが……今回ばかりは私も驚きです」
「なによ。人を馬鹿にしてるの?」
「……あの方がどなたか本当に知らないんですか?あの姿を見ても?」
え~と、それはギオンが赤い髪と赤い瞳のレッドドラゴン種のことかな。
「あの人はギオンと言って偶然知り合ったのよ。ギオンはレッドドラゴン種だけど。知ってるのはそれぐらいで……」
「むしろそれだけ知っていてあの方が誰か分からないミア様が不思議ですよ」
ディオンは心底呆れた様子だ。
なによ。本当に人を馬鹿にしたその言い方は。
するとディオンが懐から紙を取り出す。
「昨日。ミア様を外泊させると言って来た者から渡された伝書です。名前の所にあの方の名前がありますよ」
え?それって起きた時にギオンが言ってた伝書よね。
私はその紙を受け取りサインされた名前を見て驚愕した。
そこには美しい文字で名前が書かれていた。
『ギルバード・レギオン・ドラ・アインダル』と。
「ええええーーー!!」
私は思わず叫んでしまった。
「ギルバード・レギオン・ドラ・アインダルって、まさか!?」
「そうです。あの方はこのアインダル王国の第二王子のギルバード殿下です」
「うそ!マジで?」
「サインの後にちゃんとアインダル王家が使う印章もありますし、本物です」
そんな、ギオンがギルバード第二王子だったなんて。
「ミア様は本当にあの方のこと知らなかったんですか?」
「そんなの分からないわよ。ギオンと知り合ったのは偶然なんだから」
「レッドドラゴン種はもうほとんど王族関係者しかいないんですよ」
「え?そうだったの?」
そこで私はハッと王宮でのことを思い出した。
そうだ!ロイバルト第一王子はギルバード第二王子の命を狙ってたはず。
ギオンがギルバード王子ならギオンの命が危ないかもしれない。
「ディオン!ちょっと出かけてくる!」
私はそのまま王宮に向かって走り出した。