第15話 ギオンはレッドドラゴン種です
次の日。私はギオンとの待ち合わせ場所にやって来た。
ギオンがどこに連れて行ってくれるか分からないが移動する時はギオンの馬に乗せてもらおうと私は自分の馬は置いて来た。
私は広場のベンチに座ってギオンを待つ。
私の前を竜族の家族連れが歩いている。
竜族の子供は母親とみられる女性と楽しそうに手を繋いでいた。
私は幼い頃亡くなったこの世界での母のことを思い出した。
父親は商売の旅に出るとしばらく帰っては来ない。
だからその間は母と一緒に父の帰りを待っていた。
前世では私は一人っ子で転生したこの世界でも私は一人っ子だった。
そのせいか母は私を可愛がってくれたが病気になって父が旅に出ている間に亡くなってしまった。
もちろん母が病気になった時点で父に手紙を送ったのだが父は母の生きてる間に戻って来れなかった。
母が亡くなった次の日に帰って来た父は泣き崩れてた。
その光景を忘れられない。私も悲しかったが父が本当に母のことを愛していたのが分かったから。
前世では私は両親よりも自分の方が先に死んでしまったから親の死に直面したのはこの時が初めてだった。
そう思うと前世で私が死んだ時に私の両親はどれほど悲しかったことだろう。
私を車で轢いたあのくそ親父のことは絶対忘れないわ。
「ミア。遅くなって悪かったな」
私はその言葉で我に返る。
目の前にギオンがいた。
「ギオン!おはよう」
「ああ、おはよう。出がけに少し野暮用が出来て遅くなっちまった。待ったか?」
「ううん。そんなに待ってないよ」
私は笑顔で答える。
ギオンは燃えるような赤い髪が太陽の光を受けて輝いている。
そういえば赤い髪に赤い瞳は力の強いレッドドラゴン種の特徴だって言ってたよね。
「ねえ、ギオン」
「なんだ?」
「ギオンはレッドドラゴン種なの?」
「……それを聞いてどうするんだ?」
「赤い髪に赤い瞳はレッドドラゴン種の特徴だって聞いたから」
ギオンは僅かにその赤い瞳を細める。
聞いてはいけないことだったのかな。
「別に言いたくないなら言わなくていいよ。今の質問は忘れて」
私は慌ててそう言った。
人には聞かれたくないことだってある。
「いや……別に隠すことでもないが。まあ、こんな姿をしてれば隠しようがないしな」
「じゃあ、やっぱりレッドドラゴン種なの?」
「ああ、そうだ。ミアはドラゴン種に興味あるのか?」
「興味あるというか、今は勉強中なの。竜族のことを知らないと竜族相手の商売はできないから」
「それもそうだな。だったら後で少しだけ竜族の歴史でも話してやろうか?」
ギオンは私にそう提案してきた。
竜族の歴史かあ。竜族のことを聞くなら竜族に聞くのが一番だよね。
「ホント?それなら嬉しいな」
「そうか。とりあえずここからは移動しよう」
「どこに行くの?」
「このアイルスの都には川が流れているんだ。川にはボートで遊覧できる場所があるからそこに行こうかと思ってな。水上から都を眺めるのもいいぞ」
ギオンは自分の馬に私を乗せた。
私は乗馬は得意だからうまく馬上でバランスを取る。
「それじゃあ、行くぞ」
「うん」
ギオンは馬を走らせるが街中なのでそんなにスピードは出さない。
そして街の建物が突然途切れたと思ったら大きな川に出た。
川には大きな橋が架かっていて人々はその橋を渡っている。
「ボートの乗り場はもう少し先だ」
ギオンは馬を更に走らせる。
するとたくさんのボートが置いてある乗り場のような場所に着いた。
「ここが乗り場なの?」
「ああ、そうだ。よし、馬を預けるから降りろ」
私はギオンに手を貸してもらいながら馬から降りた。
へえ、かなり大きな川が都の中に流れているんだね。