第11話 デートに誘われました
ギオンは私を小さな広場まで連れて来た。
「ここまで来れば大丈夫だろう」
そう言ってギオンは私の手を離した。
私はなぜかもう少しギオンと手を繋いでいたかったがギュッと拳を握って耐える。
「それでミアの仲間たちはどうしたんだ?」
「あ、え~と、「商人の広場」にいるわ」
いろんな商隊が商売をする場所はどこの国でも「商人の広場」と呼ばれている。
「そうか。商隊にいるってのは本当だったんだな」
ギオンの言葉に私はまた反発してしまう。
「なによ!私が嘘をついたと思っていたの?」
「そういうわけではないさ。ミアのような少女もちゃんと商隊で働いているんだなって感心しただけだ。まだお前の年齢で旅は大変だろう?」
私はギオンの気づかうような言葉に胸がドキドキとした。
なに、これぐらいの言葉で動揺しているのよ、私。
でもこれでギオンに商隊の主は私ですなんて言ったらギオンは驚くでしょうね。
あ、でもまずはちゃんとお礼を言わないと。
「ギオン。助けてくれてありがとう。この間の森の中でも助けてもらったし、何かお礼がしたいんだけど……」
「別に今回はたまたま通りかかっただけだし、この間の時に巻き込まれたのはむしろお前の方だろ。礼なんかいらん」
「そういうわけにはいかないわ。私のお父様は恩返しは必ずしなさいって言ってたもの。何か、欲しいモノとかない?商隊の品物なら安く分けてあげるわ。ううん、タダであげる」
「そんなことしたら商隊の主にミアが怒られるだろう?」
ギオンはそう言って少し考えていたがやがて私に言った。
「ミアがどうしてもと言うなら今度俺とデートしないか?」
「は?デート?」
ギオンとデートですって!?
そりゃ、確かにギオンのような美形の男性とデートなんて前世からの夢だけどさ。
マジで私でいいのかな?子供だって馬鹿にしてたのに。
「俺とデートするのは嫌か?」
「ううん、そんなことはないけど……ギオンは私でいいの?」
「ああ。ミアとデートしたいから誘っているんだが。俺にお礼をしたいんだろ?」
「分かったわ。えっと、明日はちょっと用事があるから明日以外だったらいいわよ。私の商隊もしばらくはここに滞在するし」
明日はルクセル竜王に謁見の予定が入っている。
それ以外なら時間は取れるだろう。
「そうか。じゃあ、明後日にこの広場で待ち合わせでどうだ?」
「いいわよ。どこに行くの?」
「ミアはここに来るのは初めてか?」
「ええ、そうよ。竜族の国もこの王都も初めてなの」
「だったら俺がいい場所を案内してやる。俺の馬に乗せてやるから」
私は自分でも馬に乗れるがギオンが案内してくれるならギオンの馬に乗せてもらった方がいいだろう。
ギオンがどこに連れて行ってくれるか分からないがすごく楽しみだ。
それにまたギオンと会える。
「それじゃあ、「商人の広場」まで送ってやるよ」
「え?でも」
「女は黙って男の言うことを聞いておけ」
ギオンってちょっと俺様なところがありそうね。
まあ、でもまた変な男に絡まれても困るし。
「ありがとう」
「よし、じゃあ、行くぞ」
ギオンは当たり前のように私と手を繋ぐ。
私は少し緊張してしまう。
前世でも今世でも異性と接触することに慣れていないのだから。
その日は「商人の広場」の入り口でギオンと別れた。
マクシオン商会の自分のテントに帰るとディオンがやって来た。
「ミア様。明日のルクセル竜王様への手土産の品物を選んでくださいませんか?」
「分かったわ。商品を確認するわ」
仮にも竜王への手土産に粗末なモノは贈れない。
私は竜王への献上品の品物を吟味し始めた。