第10話 竜族の力を見ました
三人の男たちが声のした方に振り向く。
私も男に押さえられながらもそちらに目線を向けて驚いた。
そこにいたのは赤い髪に赤い瞳の男性で腰には剣を下げている。
その印象的な容姿を忘れるはずがない。
この間森であったギオンだ。
「誰だ!てめえ!」
男の一人がナイフをちらつかせながらギオンに声を上げる。
「いや、たまたま通りかかった者だ。名乗るほどの者じゃない」
ギオンはわざと気取った感じに話して男たちを煽る。
男の一人が腰の剣を抜いた。
「てめえ、俺たちを馬鹿にしてるのか?おとなしくいなくなれば見逃してやろうかとも思ったが気が変わったぜ。ぶっ殺してやる!」
「おや、見逃してくれなんて俺は頼んだ覚えはないけどね」
あくまでもギオンは男たちを馬鹿にする態度を取る。
私は森の中でギオンの強さを見ているからギオンがこんな奴らに負けるとは思わないけど世の中何が起こるか分からない。
ギオン!無理しないで!
「ムググ……」
私は男に口を押えられているから声にならない声でギオンに言った。
「あれ?お前はあの時の……」
ギオンが私の顔を見てそう言った時に剣を抜いていた男がギオンに切りかかった。
「死ねえ!!」
ガキーン!
男の剣とギオンが素早く抜いたギオンの剣がぶつかり激しい音を立てたと思ったらギオンは既に次の動作に入っていて剣を持っていた男の右腕を斬りつけた。
右腕から血が迸る。
「ぎゃあああ!!」
男は剣を落として蹲った。
私を押さえていた男ともう一人の男が顔色を変える。
そして私の首にナイフを突きつける。
「それ以上、近づくな!そしたらこの娘の命はないぞ!!」
私は自分の首に突きつけられたナイフが今にも自分の首を傷つけそうで動けない。
これではギオンの足を引っ張ることになっちゃう。
私が何とか男たちの隙がないか探しているとギオンは赤い瞳で私を見た。
その瞳は「大丈夫だ」と言っているように感じた。
「ほお。そういう卑怯な手を使う者に手加減は不要かな」
その瞬間ギオンの赤い瞳が輝いた。
そしてギオンから目では見えないが圧倒的な力の波動のようなモノが私と二人の男たちに襲いかかった。
私の体ではそれが風が吹き抜けるような感じしかなかったが、二人の男の体はその力に弾き飛ばされて近くの壁に叩きつけられて二人とも動かなくなった。
「え?何が起こったの?」
私は今の瞬間何が起こったのか分からなかった。
ギオンはさっきから立っていた所から一歩も動いてない。
その時私はお父様から聞いた言葉を思い出した。
『竜族はね。相手を攻撃する時に特別な力を使うことがある。それは目には見えない「気」のようなものだ。もちろん力の強い竜であればあるほどその「気」は強くなる』
今のがお父様の言っていた竜族の「気」の力なのだろうか。
「大丈夫か?ミア」
ギオンは何事もなかったかのように私に近付いて私の頬を手で触った。
私は思わず赤面してしまう。
だってしょうがないじゃない。ギオンのようなカッコいい男性に触られたら恥ずかしいに決まってる。
「だ、大丈夫よ!助けてくれてありがとう」
「ケガが無くて良かった。だが王都でもこいつらのような奴らはいる。不用意に一人で外出するな」
ギオンは子供に言って利かすような口調になる。
なので私はついまた反発してしまった。
「わ、私はもう14歳よ。一人で街を歩くぐらいできるわ!」
「それで今回こんな目にあったんだろう?」
「うっ!」
ギオンの言葉に私は言葉が詰まった。
「14歳は性的対象になり得る。だから余計に気を付けないといけないんだ」
ギオンの言葉は正しい。
自分には「透明人間」のスキルがあるからと油断した結果がこの様だ。
「とにかくこの場所から離れるぞ」
ギオンはそう言うと私の手を取って路地裏から出た。