表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/96

第9話 暴漢に襲われました

 私たちがルクセル竜王に商売を王都で始めることの挨拶をしたいと王宮に伝えるとルクセル竜王に謁見するのに数日かかるとの返事だった。


 私は自分のマクシオン商会が広場で商売を始めたのを確認してからディオンに一声かけた。


「ディオン。ちょっとこの王都の様子を見て来るわ」

「どこに行かれるんですか?」

「どこって決まってないけど。私はここに来るのは初めてだから少し街を見たいのよ」


 そう。私は旅に出るのは初めてでもちろんこの王都アイルスに来たことはない。

 竜族の都とはどんなところなのか気になって仕方がない。


 そもそも竜族に関しては知識では学んでいるが実際に彼らがどんな生活をしているのか見てみたい。

 それによって商売の商品の仕入れや販売などに何か良い案が浮かぶかもしれない。


 シャナールとしての商売はさておき、マクシオン商会の会長としての仕事も重要だ。

 商売は情報が命。


「王都は治安がすごく悪いということはありませんが不用意に路地裏とかには入らないでくださいね」

「分かったわ。注意するわ」


 ディオンの言葉に私は頷く。


 自分が「透明人間」になれるとはいえあまりその力に頼ってばかりもいられない。

 私だってどこの国や種族にも悪人たちはいることぐらい分かっている。


 私は外出用の上着を着て広場を出た。


 道なりに歩いて行くとたくさんの人たちとすれ違う。

 基本的に竜族と言っても人間の姿とあまり変わらない。


 だが力の強い者は完璧な人型を取れるが一般の竜族になると身体の一部に鱗がある部分があるのが普通だ。


 すれ違う人々の顔や腕や足に一部鱗の部分が見えたりしているからやはりここが竜族の国だと実感ができる。


 そういえばギオンは竜族だと思うけど完全な人型だったよね。

 それだけ強い力を持ってるのかな。

 あ、でも服で見えない部分に鱗があるのかも。


 そこまで考えて自分がギオンの上半身裸の姿を見たことを思い出す。


 逞しい身体だったわ。筋肉がほどよくついていてだからと言って筋肉モリモリってわけでもなくって……って何を考えてるのよ、私ったら。


 前世でも今世でもそんなにハッキリと男性の身体を見たことはない。


 前世では一度も彼氏いなかったし。

 もちろん知識としての男の身体の構造は分かっているけどさ。


 そんなことを考えながら私は道沿いに並ぶお店の中を見ていく。

 売っているものはどんなものか。珍しい品物はないかなどを調べる。


 そのことに夢中になっていた私は誰かとぶつかった。


「わ!」

「痛てえ!」


 私はなんとか倒れずに自分とぶつかった人物を見た。


 真っ赤な顔をした竜族の男性だ。

 しかもお酒臭い。


「よお、姉ちゃん。俺様にぶつかって来るとはいい度胸じゃねえか」


 男はそう言って私の右腕を掴んだ。


「ちょっと!放してよ!」

「いいじゃねえか。ちょっとだけ俺と付き合えよ。天国にいかせてやるぜえ、ハハハ」


 私は男に掴まれた腕を振りほどこうとするが男の力が強くてどんどん男に連れられて路地裏に引き込まれていく。


 このままではヤバいわ!

 でも男の目の前で透明人間になるわけにはいかないし。

 隙を見て逃げて身を隠したら透明人間になって逃げるしかないわね。


 私は相手は一人だしなんとか逃げる隙を伺った。

 だが路地裏に入ると二人の男がいた。


「よお、上玉を連れて来たじゃねえか」

「ああ、まだまだ体は子供だがなかなか可愛い顔をしてるだろ?」


 私の腕を掴んで路地裏に引き込んだ男とその路地裏にいた男が会話する。


 こいつらも仲間なの?

 さすがに三人相手に逃げるのは難しいんじゃない?


 ここは大声で助けを呼んだ方がいいかも。


 私が助けを呼ぼうと声を出そうとした瞬間男の一人に口を手で押さえられた。


「ムグ……」

「おっと、お嬢ちゃん。声を出したらこいつでケガするぜ」


 その男は持っていたナイフをちらつかせた。


 この卑怯者!誰か助けて!


「おいおい。昼間から女の子相手にいたずらとはそんなに欲求不満なのか?」


 その場にそぐわないぐらいに呑気な声が響いたのはその時だった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ