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精霊少女の世界旅  作者: 雨森 裕也
第1章 精霊の住処編
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精霊魔法を教わる

食事を食べ終わると、「ご馳走様でした。」と言ってからお皿を持って席を立った。


台所にいるお母さんにお皿を渡して手を洗うと、階段を上って2階に行き、左側にある自分の部屋に入った。


私の部屋はシンプルなものだ。部屋に飾り付けなど一切無く、机、椅子、ベット、タンス、棚など必要なものだけが揃っている。


普通の女の子はもっと可愛い部屋を好むものだろうとお父さんが言っていたが、男性であるお父さんにはそれが真実なのかどうかは分からないだろう。お父さんは多くの時間を剣を振ることに費やしており、女心が分かるとは思えなかった。


私からすればそれは否である。私は無駄な飾り付けは邪魔なだけだと判断したのだ。全員がそうという訳では無いだろうが、私の意見に反対という人が何人いようが考えは変わらない。私以外が反対しようと変わらないだろう。


そもそもそれは人間世界を生きてきたお父さんが言っていることで、精霊は人間とは全く違う考え方をして生きているわけで、半霊半人である私からすればお父さんの話が真実なのかなんてものはどうでもいいことなのだ。


精霊は家は生活をする場所であってわざわざ飾る必要が無いと考えているわけだ。それなら、精霊の血が流れている私が精霊と同じ考えを持っていたとしても何ら不思議なことではないのだ。


部屋には棚があるが、中には何も置かれておらず、本は全て書架に置かれていた。机や椅子も置かれてはいるが本を読むのは書架で読んでいるので、ほとんど使うことがなかった。タンスには服が綺麗にしまわれており、毎回お母さんが綺麗に畳んで片付けてくれていた。服も機能性重視で変な飾り付けなどは何も無く、同じようなものばかりだった。

私は部屋にあるタンスの中から着替えを取り出して一階にあるお風呂へ向かう。風呂場に入る前に、お父さんとお母さんに言う。


「先にお風呂に入ります。」


少しして返答が返ってくる。


「ゆっくりしておいで。」


「1人で入るのか?俺も一緒に入ろうか?」


お母さんもお父さんもいつも通りの返答だ。


お父さんは何故そんなことを何度も聞いてくるのだろう?と疑問に思いつつ、返答は変わらない。


「お断りします。」


いつものようにそれだけ言うと風呂場へと入った。


頭の上からシャワーを浴び、シャンプーで頭を洗う。次に石鹸とタオルを使って体も洗い、再びシャワーを浴びてまとめて流すと綺麗になった身体を湯船に浸からせる。


明日はお母さんに魔法を教えてもらう約束だ。しっかりと気持ちを整えて置かなければならない。その為には心身の疲労回復が必要だ。


お風呂に入ることも1つの方法だろう。湯船は身体を温め、疲労回復の効果もあり、脳をリラックスさせてくれる。しかし、リラックスしていても身体能力強化魔法は常時発動させたままだ。


魔法を学ぶために魔法の練習をやめるというのはおかしなことだろう。まだ慣れていなくて維持するのは大変ではあるけど、早く強くなって1人でも生きていけるようになりたい。


しばらくの間湯船に浸かってから上がり、タオルを使って身体や髪の毛を拭いていく。歯磨きも済ませると21時まで読書をすることにした。


精霊は体の成長が早く幼い頃に成長が止まるため、今の時期は睡眠を多く必要とする。一日に10時間は寝ることになるだろう。


夜はぐっすりと眠ることができた。



次の日


朝起きると、服を着替えてから下の階に行く。リビングに行くと、お母さんが朝食の準備をしていた。お父さんはまだ起きていないようだ。


お母さんはいつも私より1時間も早く起きて朝食の準備をしてくれている。朝起きるとすぐに朝食を食べることができるのだ。嬉しいことだが、少しだけ申し訳ない気持ちになる。


「いつもありがとう、お母さん。」


申し訳ないと思いながらも今の私には感謝の言葉を述べることしかできない。料理はできないし、そもそもこれ以上の早起きはできる気がしなかった。


「急にどうしたの?朝食のことならいいのよ。子供には沢山寝てもらわないとね。」


お母さんは優しくそう言ってくれた。


「料理ができるようになったら私も作ってあげますから。」


毎日お母さん1人に任せる訳にはいかないだろう。


「その時はお願いしようかしら。ユミルが作った料理も食べて見たいしね。でも、無理はしちゃダメだからね。」


お母さんは本当に私のことを思ってくれている。いつでも私の意見を尊重し、心配してくれる。本当に素晴らしい母だと思う。母というものは皆こういうものなのだろうか?答えは分からないが、私はこの人がお母さんで幸せだと思った。私はお母さんに笑顔を向けてこう言った。


「無理はしませんよ。」


無理をしてお母さんを困らせるようなことはしたく無かった。ただでさえ私のために時間を使ってくれているのにこれ以上お母さんの時間を削る訳にはいかないだろう。


しばらくの間話していると、お父さんが起きてきた。


「みんな揃ったわね。じゃあ食べましょうか。」


「やっぱりご飯はみんなで食べる方がいいですよね!」


私が言うと、お父さんが険しい表情になっている。


「どうしたのですか、お父さん。」


気になったので聞いてみた。


「実はな、昨日にユミルに言われたことをルナと話し合ったんだが、丁度1週間後から2週間ほど家を開けようと思うんだ。」


お父さんは険しい顔のまま答えた。


「昔からの仲間たちに会いに行くんですね!いいことじゃないですか。どうしてそんなに険しい表情をしているのですか?」


「本当にユミルを1人で家に残して行ってしまっていいのか、と思ってな。」


もし人間ならまだ産まれて数週間の子供を1人残してどこかに行ってしまうことは無いだろう。しかし、そんな心配は無用だ。精霊は普通なら産まれた時から一人で生活できるのだから。


「なんだ、そんなことですか。私は大丈夫だと言ったじゃないですか。」


1人で過ごすのは寂しいと思いつつも、1人で生活してみたいと思っている自分もいる。いずれは親元を離れ、旅に出たいと思っていた。旅に出れば1人で生活していくことになる。その練習にもなるだろう。


「そうだな。でも、いずれは独り立ちするとしても、今はまだ子供だ。1人にするのは心配なんだよ。」


「私も心配だけど、ユミルなら大丈夫だと信じてるから。だから2人でアルメニア王国に行くことにしたのよ。」


「分かりました。ならアルメニア王国に行く前に魔法を教えて下さい。」


2週間の間お預けになってしまうのは時間が勿体ないと思ったのだ。2週間のあれば、色々なことを覚えることができる。産まれてすぐの時期なら尚更だ。


「そうね、魔法は1人で練習することができるし、生活するのにもとても便利なものだから覚えておいた方がいいわね。じゃあ、まずは魔法について詳しく教えましょうか。魔法が使えるようになるには、魔法についての知識が必要不可欠だから。トールは少し別だけどね。」


そう言って少しだけ笑った。


お母さんは魔法について色々と教えてくれた。


まとめると次のようになる。


精霊魔法

・火属性、水属性、風属性、土属性の四属性がある

・空気中の魔力を直接使用して瞬間的に発動する

・体内にあるゲートを通す必要が無いから沢山の魔法を同時に使える

・空気中に魔力がある限り魔法が使える

・魔法陣や詠唱も必要無いから素早く発動できる

・精霊王は特別だが、基本的には1人の精霊につき1つの属性しか使うことができない


人間の魔法

・火属性、水属性、風属性、土属性に加えて様々な属性がある

・体内に溜められている魔力を使用して詠唱しながら魔法陣を構築して発動する

・極めると魔法陣の構築を頭の中でして詠唱もせずにイメージするだけで発動できるようになるが、発動速度では遥かに劣ってしまう

・発動に時間がかかる代わりに高威力の魔法が多い


二つの魔法の評価

・魔力を使用している点では同じだが、全くの別物

・精霊魔法の方が強いと言われている

・精霊魔法は自分の体に直接作用する魔法は使うことができないから身体能力強化や回復などは難しく、魔法の幅や種類では人間の使用する魔法に遠く及ばない


簡単にまとめるとこんな感じになる。話を聞くとわかるが、魔法といっても人間と精霊では全く別の方法のようだ。


「そんな違いがあるのですか。とても興味深い話でした。ところで、私は精霊魔法を使うことができますか?」


私は椅子から降りてそう言った。


「もちろんできるわよ。私の血が流れているんだもの。なら次は外に行って実践しましょうか。」


2人で一緒に家を出て少し歩いて昨日お父さんが剣を振っていた場所まで行くとお母さんが振り返る。


「精霊魔法は空気中にある魔力の流れを感じ取りそれを操作して集めて魔法を使うの。大きくなれば自然とできるようになるけど、今はひとつひとつの工程を意識して行わないとできないから少し時間がかかるわよ。何回も使って慣れてくるとだんだん早く発動することができるようになってくるわ。最初はできないと思うけど、頑張ればすぐにできるようになるわよ。」


(お父さんと同じようなことを言うんだな。流石お似合いの2人だな。)


そんなことより魔法の練習だ。


「分かりました。やってみます!」


まず空気中の魔力の流れを感じ取ろうと試みる。周りには多くの魔力が漂っており、集中して意識を傾けると流れを感じ取ることに成功する。


次は魔力をコントロールする。これは身体の中の魔力をコントロールする練習をしていたので、簡単にできた。どうやら体内より空気中の方が操作しやすいようだ。集めると、次の瞬間水の塊が発生した。


それを飛ばしてみると、初めてにしてはすごい威力だった。思っているよりもずっと威力があった。これで人間の使う魔法よりも威力がないって、人間は普段からどんな魔法を使っているんだろう。


「凄いですね。初めてでこんな威力が出るのなら極めたらどんなに凄い威力になるんですか?」


魔法が使えて私は大はしゃぎだ。予想以上に迫力もあり興奮を抑えられなかった。


「ユミル、これはあなたが規格外なだけで、みんな初めからこんな威力なんて出ないものなのよ。そもそも1度目で精霊魔法を成功させるなんてこと普通にできることでは無いわ。やっぱりユミルには魔法の素質が高いようね。」


そう言ってお母さんは喜んで私の頭を撫でてくる。


「精霊魔法が使えるようになったから、他の属性の魔法を使ってみて、どの属性が得意か、どの属性が苦手かを把握する必要があるわね。」


「精霊1人につき1つの属性までなんじゃなかったんですか?」


「そうね。でも私は全属性扱えるからユミルにも使えるかもしれないわよ。水属性は使ったから、あとは火属性、風属性、土属性の魔法を使えばいいわよ。」


そういえば、さっきもそんなことを言っていたな。精霊は親がいないが、人間は親からの遺伝で使える属性が決まることが多い。稀に親が使う属性以外を使う人が産まれることもあるが、それは本当に希少でほとんどが遺伝である。私もお父さんからの遺伝で無属性魔法が使えた。それならお母さんからの遺伝で全属性の魔法を使うことができても何も不思議なことはない。四属性の精霊魔法を使えるのは世界中を探しても精霊王と呼ばれるお母さんだけだが、本当に私にも使えるだろうか。


残りの三属性を使ってみると他の属性は水属性の魔法ほど上手くいくことは無かった。


得意な属性は、水属性>風属性>火属性>土属性という順番になっている。使えない属性が無いのはお母さんと一緒だ。そして、得意な属性も一緒だった。


まずは得意な水属性の魔法を練習することにした。せめて1つの属性くらいは早く上手く使いこなせるようになりたかったのだ。今の私では魔力を上手く制御ができず、生活の中で使うには威力が高くて危険だから、体内と体外合わせて魔力制御の練習をする。


今日は一日中、体の中では身体能力強化魔法の練習を、外では水属性精霊魔法の練習をしていたのだった。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

自分のペースで書き進めて行きますが、これからも読んでくれると嬉しいです。

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