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バーチャルバ美肉おじさん

作者: 大貞ハル

どうしても実在のVtuberさんのエピソードとか勝手に使わせてもらう形になってしまって、どこまで許されるのか分からないので、気に障ったらごめんなさい。Vに中の人とか居ない派の人もごめんなさい。

「んー?「ボイチェン何使ってますか?」だ? 地声じゃぁ!! 正真正銘女ですー!」


視聴者コメント欄が騒がしくなる。


「「女の子は驚いた時にうおっとか言わない」? 私、そんな事言わないし?」


コメント欄に「言っとる」が一斉に流れる。




3機の人型の戦車パンツァーが重低音を置き去りにして飛び去っていく。

おかしな事を言っているのは間違っていない。

戦車が人型をしている必要はないと言うか、それはもうすでに戦車ではないし、飛行するものを戦車と呼ぶのもどうかしている。だが、そこはロマンなのだ。


そしてそのただひたすらロマンでしかない矛盾が実現されているのはこれがゲームの映像だからに他ならない。AFD -装甲航空師団- 多人数同時接続型バトルロイヤルシューティングゲームだ。


ブースターが切り離されて急減速、いや、ブースターがパラシュートを開いて減速する事で慣性によって放り出された無数のパンツァーが降下していく。最大60機、20チームが侵食されて巨大なエリンギの様な形になった岩柱の立ち並ぶ砂漠地帯へ突入した。


パンツァーの上昇力はギリギリこの石柱の上に出れないくらいだ。


「なんでこんな激戦区に非武装で降下するんですかね」

『それがバトロワのお約束ってやつだからなぁ』


武器は自分たちと一緒に降下したコンテナかドローンから入手する。

入手した武器やらなんやらを設定したりしつつ呟くとボイチャからイケボが流れた。

本田ぷりまる先生。イラストレーター兼配信者だ。

配信画面にはゲームの画面とコメント、それに配信者を示すキャラクターが表示されている。

キャラクター、アバターは本田が仕事で描いているような可愛い少女だが声は完全に男だ。


『この先に3機、たぶん1チーム』


今度はアニメ声優もびっくりの可愛らしい声が流れてくる。

蒼井ゆうき、ボイチェン、ボイスチェンジャーおじさんである。可愛らしいアバター以上にリアクションや笑い方が可愛らしすぎて、自分をおじさんだと思い込んでいる女児だと言われいてる。


「え? 何が見えてるの?」

『何って、敵?』


先頭を飛行する蒼井の機体が武装を変更して長距離砲を装備するため、折り畳まれた砲身を砲本体をグルリと回しながら展開して構え、すかさず発射した。


『へっしょ』


相変わらず声が可愛い。いや、声と言うかもう喋り方が可愛い。


「アリスちゃん」

「索敵圏外です」

「だよねぇ」


AFDは高速高機動戦闘ゲームで、ぶっちゃけ全てをプレイヤーが操作するとなると無理がある。

と言うわけでカジュアルモードには3種類の支援AIが用意されていて出撃前に選ぶ必要がある。


射撃支援AI アリス

操縦支援AI エルザ

両方とも少しずつ支援するAI クロエ


これにより、操縦を自分でして、エイムアシスト強めか、ラフに動きを決めて自分は攻撃に集中するか、両方少しずつ支援してもらい、両方とも自分で操作するかを選べる。


『先生、緊急回避!!』

『えっ、はいいっ?!』


緊急回避は操縦支援型AI エルザの支援機能で、回避ボタン+Lスティック操作で適切な回避運動を行ってくれる。


『うわーっ』


物凄い勢いですっ飛んでいく機体を別の方角から撃ち込まれた曳光弾の光が追いかけていく。

曳光弾は連射系の砲で何発かに一発破壊力を二の次にした発光する弾を撃ちだす事で着弾を分かり易くする弾だ。つまり、実際には光と光との間に見えにくい弾が無数に飛んでいるわけである。


『たっ助けろ蒼井〜』


本田がイケボで可愛らしい?叫び声を上げながら逃げ回る。


『おりゃー』


蒼井が長距離砲で反撃する。


蒼井機の装備に対処するためか敵のうち2機が一気に距離を詰めて来た。

急降下で逃げる蒼井機。追いかける敵機。

両肩の装甲をエアブレーキにして急減速、地表スレスレを蛇行する。


「おら、『ぴー』ねーっ」


逆に上を取った田邊がガトリングで一機を撃墜、1機は離脱、蒼井の長距離砲も他の1機を貫いた。



「先生っ! ナイス囮」

『うれしくないよ』


ほとんど逃げてるだけだった本田先生に声を掛けた。

割とイケメンボイスなのになんとなく可愛いと評判の先生。


この2人とコラボしているせいか田邊はコメントで女子2人とチームを組んでいるおっさんと呼ばれていた。本来は紅一点だ。アバターもしっかり美少女イラストだと言うのにバ美肉おじさん扱いだ。


ちなみに田邊の配信名は田邊で下の名前はない。




結局、いきなり2チームに挟まれたものの3機撃墜、3機逃走と言う形になった。

開始早々1人になってしまった人には頑張ってとしか言いようがない。

それがバトルロイヤルだ。


「あー、楽し。こんなに楽しいのになんでこのゲームは人気ないんだろ」


コメントがわっと流れる。


「「AFDが楽しいのはおっさんだから」ってなんじゃい。女子じゃ」


さらにコメント。


「可愛い要素あるじゃんか、パンツァー可愛いだろ。いや、だからおっさんじゃなくてもこの可愛さは分かるやろがい」


『うーん、可愛いかどうかは別として、昔からロボットFPSはちょこちょこ出ては短命で終わるんよ〜』

『そうだなぁ。AFDは頑張ってる方だ』

「そうなんですか? ぐぬぬ」




もともと田邊には相棒とも言える配信者が居た。

当初は2人でアスレチック系ネトゲを配信していたのだが、お互い系統の違うゲームにハマってしまい一緒に配信する機会がなくなってしまったのだった。


「1人でも楽しいっちゃ楽しいけど、なんで流行らんの。チーム組んでやりたいのに…」


そんなある日、配信中の出来事だった。


「蒼井ゆうきさんがどうした? え? コメントに? …あ、死んだ」


画面にリザルト画面が表示されている。


蒼井ゆうきは田邊の尊敬すると言うか、大好きな配信者で、上手すぎるエイムと立ち回りをする美少女アバターの配信者なので当初は女の子が別で声だけ当てているコンビ配信者だと思われていたが、その正体はボイチェンおじさんだった。いや、当初から自分のことをおじさんと言っていたが今でも信じていない視聴者は多い。


「え、えええ、え、コラボ、いえ、願ってもないですが、は? あ、じゃ今日の配信はこれで、え? 待て? 落ち着け? これが落ち着いていられるかいっ。ゆうきちゃんからのお誘いやぞ」




そんなこんなで、今日のコラボ配信だったわけだが、3人1チームのゲームなので、2人パーティーだと1人野良が入ることになる。まあそれはそれでちゃんと遊べるようになってはいるわけだが。


『だいじょぶ、だいじょぶ』

「はあ」


相変わらずの可愛い声に何を言う気にも慣れずにいると、通話ソフトから聞き慣れてはいるが面識、いや、通話経験のない声が聞こえて来た。


『おい蒼井、AFDやるなら誘えって』

『あ、せんせー、今日暇ぁ?』

『おい』

「え? もしかして本田ぷりまる先生? え? え?」

『え? どなた?』

『あははははは、今日は田邊ちゃんとコラボなんだ〜。1人足りないけど、開けとけば先生くると思って、にゃははははは』

「本田先生がゆうきちゃんのストーカーって本当だったんだ…」

『ちょ、まって、ストーカーは流石に…』

『否定できなくなぁい?』

『うぐぐ』


そんな感じで3人でチームを組む事となったのだった。




『そろそろ最終円だよ』

『りょ』

「あ、ちょっとガトリングの弾欲しい」

『この先にドローンが居るから、行ってみよ』

「何が見えてるの?…」


バトロワ系ゲーム定番の円だが、高速空中戦が売りのこのゲームは最終円がかなりデカい。マップの1/4程度でサイズの縮小は止まってしまうが、そのまま移動を開始して、最終的にはパンツァーの移動能力を超える。つまりそれまでにファイナルを手にしなければ最後の1人以外ゲームオーバーだ。


『ちょっと中に寄りすぎだから、外周に回るよ』


蒼井が支持を出す。

砂漠の中に突如現れたビル群を抜けようとすると攻撃を受けた。

2人に任せて後ろを取りに回り込む。


『チームキル、今ので最後かな』

「いや、もう1チーム来てる」

『逃げるよー』

「え?」

『円が来てる』

「あっ」


巨大な壁のような砂嵐? がすぐそこまで迫っていた。


『あーっ、やられたーっ。ごめーん』

『蒼井ーっ』

「ゆうきちゃん?!」


蒼井の機体が敵を道連れに円の外に出て爆発する。

既に円の移動速度はパンツァーと同じくらいだ。このままどんどん加速して行く。


「前方に3、6機」

『やばーい』


おそらく円に近い2人を先に片付ける事が暗黙の了解で決まったのだろう。

違反チーム、ゲームとは別にボイチャを用意して複数のチームで結託するズルもあるが、この場合はその可能性は低い。もう円に飲み込まれるまで時間がないから、円に近いチーム、人数の少ないチームから潰すのは定石だ。あえてそれをしないで手近な相手を攻撃するのもそれはそれで戦略だが。


「まだまだーっ。アリスちゃん、ミサイル全弾発射!!」

「レディ」

『は?』『え?』


ミサイルのロケットモーターの噴射の光とそれに伴う煙を引いて4連装×4の16発のミサイルが飛んでいく。この機体の必殺技的なやつだ。ずっと温存していた。

無数の爆発が起こる中、田邊機が手近な軽装備の機体に取り付いた。

このゲームの近接攻撃は相手の機体を奪う事が出来るのだ。


ここまで戦ってきた自分の機体が煙を吹きながら降下していくのを眺めながら、相手の機体に乗り込んだ。


ミサイル攻撃で与えたダメージも加算されて必殺ゲージがマックスになった。

なぜか必殺ゲージは機体に関係ない。


「おらーっ、首よこせーっ!!」


軽装備のこの機体の必殺技は居合。

短時間超加速と共に敵を斬り付ける。


一番遠い敵をターゲットに選んだ。


敵を一刀の元に切り倒すと、武器変更と回避を同時に操作して硬直をキャンセルして、さらに高速移動小技を駆使して加速する。


「どりゃーっ!」


コントローラーの操作が激しすぎてガチャガチャ音が放送にまで乗った。


本田機を含む、田邊機以外全機が円に飲まれた。


『まじかー』

『うっそー』

「やりました」




「ぐぬぬ、どうしてこうなった…」

「おじさんやぞー」


田邊の中の人は蒼井の中の人の車に乗っていた。

背が低く、後部座席が狭くておまけ程度の隙間しかないスポーツタイプのマニュアルトランスミッション車だった。


あの日、3時間ほどプレイした後、本田ぷりまるが締め切りがあると言ってログアウトした後、2人で雑談していた時の事だった。


「先輩の結婚式に行くんですけど、乗り換えが結構めんどくさそうなんですよね」

『もしかしてひろぽん先輩の結婚式? 車で行くけど、乗ってく?』

「え、でも…。はっ?!」

『ロータリーのところの山羊の前で良い?』

「山羊じゃなくて犬ですよアレ、って、ちょっ、まっ。えええええええええ。待って待って待って、イヤイヤイヤイヤイヤ」


後日切り抜かれてバズった。




「えっと、実はホモとか女装趣味とかなんですか?」

「んー、そう言うのはないかなぁ」

「オタク、なのは間違いないです?」

「そだねー。アニメ絵のイラストとか好きだね〜」

「女の子になりたい、とか?」

「あまり考えた事なかったけど、技術オタク、なんだよね。たぶん」

「技術…」

「架空の女の子を生み出すためにどうしたら良いかなって考えるのが楽しかったんだけど、せっかくだからって動かしてたらそこそこ人気出ちゃってさー」


声はイケボだが、どことなく面影があった。


「運転代われなくてすみません…」

「構わないけど、もしかしてAT限定?」

「はい。と言うかペーパーです」

「自動車学校では慣れるほど練習できないから仕方ないと思うけど、慣れればMTの方が楽だし安全なんだよね、ほんとは。今の車はクラッチに油圧入ってるから渋滞で足が疲れるとかもないし…」

「?」

「あ、気にしなくて良いよ」


何か語りたそうにしているけど、気がつかない振りをするのだった。




「どーもどーも」

『おはこんこん(おはようこんにちはこんばんわ)おじさんやぞー』

「ふっふふふふふふふふふふ。声優アイドル時代世代を舐めないで欲しいですね」


かなりの棒読みだったが嘘ではなかった。


「キャラはキャラ、声優は声優なんですよ」

『アニメ観てて声優の顔が浮かんだりしないタイプ? 羨ましい。にゃははは』


『蒼井と実際に合った、のか?…』

「合ったと言うか、もともと知り合いでしたよ。がっかりだ」

『にゃー、がっかりって』


蒼井がたまに「にゃー」とか「にゃは」とか言うのはボイチェンの癖で、実際には普通に笑ったりしているだけらしい。


『今度は先生も一緒にラーメン食べに行きましょうよ』

『絶対やだ。出来れば一生直接は会いたくない』

『ひどーい』


コメントが『分かる』で埋め尽くされた。

田邊も同意せざるを得ない。



普段書いている異世界モノも9割方他の人の考えたネタだったり経験談を元にしているので、これで怒られたら私の小説は全部ダメって気もするけど、どうなんでしょうか。と言う心配をしているフリをしつつ、公開する時点で気にしてないとも言える(


先生はほぼ某先生そのままって気もするけど、一応、複数の配信者を混ぜてみたつもり。


Vtuber警察の人も見て見ぬ振りしてもらえるとありがたいです(オ

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