小夏の冒険
ずっとなにかが足りないような気持ちだった。
家族は特別仲が悪い訳でもない。
ごくごく普通の家庭だ。
ある日、お父さんが犬を飼おうと言い出した。
柴犬としか決めておらず、ホームセンターやペットショップを見てまわったなぁ。
小さな夏と書いて小夏ちゃん。
豆柴とペットショップの店員さんがいうほどに華奢でちっちゃい愛くるしい子犬。
おとなしくて、温厚な性格の小夏ちゃんの楽しみにしてる時間がある。
「こなちゃん、お散歩のじかんだよ〜」
おばあちゃんが、小夏に話しかける。
小夏は散歩が大好きだ。
暑い日も寒い日も変わらず、てくてくと歩く姿に勇気をもらう私たち。それは、月日が経っても変わらず……。
「まるっこい犬だねぇ、かわいいね〜」
近所のおばさんが小夏に笑いかける。
小夏が太り気味になっておばあちゃん犬になって大夏になっても。小夏は無邪気に歩く。
共に散歩をする私のおばあちゃんはいう。
「小夏は家族も同然だよ。一緒に長生きしようね、ね、こなちゃん」
まもなく今年も終わる。
おばあちゃんが優しく頭を撫でると、小夏はうれしそうに目を細めた。
小夏は来年も私たち家族を陽だまりのように照らしてくれる。そんな気がしたーー。