98.あれだけ言っておいて駄目ならメイドに戻る気は全然ある
広く人の集まった会場。その中央、特別に設けられたステージの上に何人かが集っている。
領主とされている白髭のお爺ちゃん、その護衛、そして私達花嫁候補。
「さて次がいよいよ最終審査になります」
進行役の女性が声高らかにそう告げた。
「最後の審査は『告白審査』です!!!」
ばあああんと盛大に銅鑼がなる。おい、料理審査は随分前に終わっただろう。
観客席からは楽しそうな歓声が沸き起こった。気のせいかこのイベント、審査が進むごとにフリーダムになってないか?
「さて告白審査といえばもうすっかりお馴染みですね」
女性はそう言って観客に話しかけた。
――残念ながら私はお馴染みではないけどね。
私は自虐的に口元を緩ませた。
それどころか完全に初見プレイである。
欲を言うならば、初心者に優しく攻略サポート情報でも付けて欲しいくらいだ。
「ルールは簡単! 花嫁候補の皆さんがコルトン様に熱い愛の言葉を捧げるだけ!」
――どこが簡単なんだ。どこが。
一番目立つ所に腰掛けるコルトン様を目で確認しながら、心の中で盛大にツッコミを入れた。
だってどこをどう見ても白髭のお爺ちゃんですし。
私の恋愛価値観は恐らく一般的なものだと考える。対象年齢は年の離れ過ぎない人。だからにお爺ちゃんに愛の告白っていうのは、フリにしたってやっぱり難易度が高すぎる。
――あの時はレイズ様の手前強気で出たけど、やっぱり勘弁してくれないかなぁ。
淡い期待を込めて私は左手奥の観客席を確認した。そこにはベルさんにマリアさん、そしてレイズ様が座っている。
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一方、観客席。
「ちっあいつ」
「レイズ、どうしたの?」
「最初から勘弁してくれないかなって顔でこっちに同情を求めてきてる」
「まあまあ、状況が状況なんだし仕方ないよ」
「最初から弱気でどうするんだよ、馬鹿」
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……とか言ってるんだろうなぁ。
「はぁ」
思わずため息も出てしまう。
状況が状況なんだし大目に見てくれてもいいのにね。
こうして何食わぬ顔で立っている私だが、実はマリアさんの魔法の影響で現在進行形で精神的にかなりのダメージを受けている。やはりコルトン様とやらを前にするのとしないのじゃ話が違うらしい。
出来る事なら今すぐ逃げ出したい気分だ。
――ほんと割に合わない仕事だよ。
完全に他人事で高みの見物を決めている我が雇い主を私は心の中で恨んだ。
もしヤツのメイドに復帰する状況になったら、絶対に給料割り増し請求してやる。
「それではこちらの女性から告白してもらいましょう、どうぞ!」
そうこうしているうちに早速一人目の告白が始まった。




