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96.告白に必要なものは真心ではない


 ところで今回の最大の問題はマリアさんの魔法とか、ベルさんの女性好きな思考とか、そういうところにある訳ではない。

 最終審査の内容が『告白審査』ってところにあると思う。


「で、告白の台本はどこですか」


 マリアさんの魔法にかかって数十分。ようやくこの不安定な感情にも慣れというものが出てきた。おかげでこうして今後の段取りについても割と冷静に話が出来ている。


「は?」

「台本……?」

「うん、台本」


 それが無くちゃ始まらないでしょ。

 自分がこれから演じるであろうシナリオを受け取るべく、私は片手を差し出しだした。


「……?」


 台本が出てくる事はなかった。

 代わりに二人の顔に鳩が豆鉄砲を食ったようなきょとんとした表情が浮かんでいた。

 え、何、何か不味いこと言った? それともお腹でも壊した?

 嫌な予感が押し寄せる。

 

「えっと、私これから告白するんですよね。だったらそれなりの台本とかの用意を……」

「……」

「……」

「?」

 

 何故か空気が変わらない。何言ってんだコイツ的な微妙な空気がその場に漂い続けていた。

 おやおやおや、なんでそんなに呆然としているのかな。

 私は部屋をぐるっと見回す。部屋に異常なし。


「もしもーし」


 あれだけ意気揚々と作戦会議したんだ、当然最終審査の内容から、その告白のセリフに至るまで完全にセッティングしてたんじゃ……ないのかね?

 相変わらず空気が重い。重いぞ。


「えーっと」


 どうしたものかと話題を切り替えようとしたタイミング。ようやくここでベルさんが口を開いた。心なしか困っているように見える。

 うん、大丈夫。落ち着いて言ってみて。聞くから。


「あのね、ルセリナちゃん」

「んなもんあるか」

 

 ベルさんが言葉を選んで何かを告げるよりも早く、その空気を破ったのはレイズ様だった。

 いやお前には聞いてない。私はベルさんを待っていたんだよ。というか今、不穏な宣言しなかった?


「はい?」


 つい反射的に私の口は疑問符を浮かべていた。

 レイズ様は面倒臭そうに口をへの字に曲げた。


「なんで告白ごときで台本なんか用意しなきゃならないんだよ」

「なっ」

「そんなもん適当に言えばいいだろ」


 おいおいおい嘘だろ。告白ごとき? まさかの台本無し? まさかのアドリブ要求?


「む、無理ですよ、私」


 そんなの無理に決まってる。

 おずおずとその提案を却下すべく私は非難の声をあげた。


「マリアの魔法が原因なら我慢しろよ」

「そうじゃなくて」


 レイズ様が言わんとすべきことを察した私は、すぐさまそれを否定した。


「マリアさんの魔法に左右されてる訳じゃなくて、普通に無理です、告白」


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