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95/151

95.ここで回答によっては好感度が上がっていたかというとそうでもない

 

「で、次の審査はさっき相談した通りでいいな」


 そう言ってレイズ様は紅茶を一口含んだ。

 勿論その紅茶は私が入れたものである。


「うん、告白審査だね。これ以上長引かせてもあれだし、これで最後になるように中央には連絡しておいたよ」

「そうか」


 さらりとこのイベントの進行に介入するような発言をしたベルさん。やはり冗談じゃなく本当にこの国の重要人物なんだなあ。


「本当は審査なしにルセリナちゃんが優勝ですってことにしてもいいんだけどさ」


 はははと日常会話のごとく笑いながら付け加える。

 権力凄すぎだろう。


「それだとこのイベントを楽しみしているお客さんをがっかりさせちゃうからね」


 なんてエンターテイナーだよ。完全にお客さんをおもてなしする立場じゃないか。

 全く貴方様とは大違いだよ、ねえレイズ様。


「ところで」


 ティーカップを片手で弄りながら、おもてなしの「お」も感じない男はベルさんに訊ねた。


「前から思ってたけど、どうしてお前が領主として表に出ないであの爺さんにやらせてるんだ?」


 それを聞いて、ベルさんはあっさりとした口調で答える。

 

「そりゃ勿論、結婚する気が無いからだよ。だって一人の女性としか仲良く出来なくなるなんて俺嫌だし」


 清々しいほどのクソ回答である。


「別に結婚後も、愛人でもなんでも作ればいいんじゃないのか」

「えー、奥さんがいるのにそんな酷い事出来ないよ」


 ……一途なんだか違うんだかよく分からないな。


「結婚しなければほら、そこは自由、フリーダムに恋愛出来るでしょ?」

「あっそ」


 そっけない返事。自分で聞いたくせにあまり興味が無いのかこの人は。


「ってこの話、前にしなかったっけ?」

「忘れた」


 またこの反応。

 さっきの時といい、レイズ様ったらもしかしてベルさんの人間性を私にも一応伝えておこうと思ってたりする?

 ……あーいや、そんな訳無いか。

 私の無意味な邪推の最中にもベルさんは言葉を続ける。


「花嫁を決めるっていうこのイベントさえ無くなれば、俺は晴れて自由の身になると思ったんだけどな」


 なるほど、だから潰したいってあんなに言ってたのか。

 テーブルに伏せるようにしてだらけているその様子は、なんだか本当に落胆しているようだった。


「今までは結婚相手が爺さんだったし一か月同棲してやっぱり無理でしたとか、愛よりもお金を選ばせるとか、そういった方法で回避出来てたんだけどね。いつか正式に花嫁が決まるかもって不安はあったよ」

 

 そんなに結婚したくなかったとは。

 じゃあ今回のこれはベルさんにとっても相当苦渋の選択だったのかもしれない。


「ごめんなさい」


 このごめんなさいは割と理にかなったごめんなさいだ。


「あ、いーよいーよ」


 想像以上に軽い返事だった。


「ルセリナちゃんのこと嫌って訳じゃないし」


 そりゃどうも。

 ベルさんのヘラッとした笑みに頭を下げる。


「それに」

「?」


 何、どうした。

 彼はぐっと前のめりになりレイズ様の顔を見つめた。


「ルセリナちゃんと俺が結婚したら、もっとお前が遊びに来てくれるだろ、レイズ」


 ……え、そうなの? 私がいるかいないかでレイズ様、そんなに変わっちゃうの?

 ベルさんじゃ無いけど、私も興味深くレイズ様の反応を確認する。


「……」


 レイズ様の手の動きが止まった。私達二人の顔をじっと見つめる。

 まさか本当に……。


「いや、変わらないけど」

「変わらないかー」


 変わらないかー。


 結論、どうやら別に変わらないらしい。


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