91.気になる言葉
本当に私がそこまでする必要はあるのか。
マリアさんのそんな問いかけに私は動揺してしまう。
その思いを知ってか知らずか、彼女はつらつらと言葉を続けた。
「だってそれなら、私から参加権をはく奪すればいいだけだと思うの。まして、彼が本当の領主なら尚更」
「それは……」
思わず返答に詰まる。
言われてみればそうかもしれないと思ったからだ。
「そうしないのは、他に何か理由があるんじゃない?」
「理由……」
理由。
そう言われて心に引っかかった意識を手繰り寄せる。
確かベルさんは出会った当初から、このイベントを潰したいと言っていた。優勝して花嫁になってこのイベント潰そうって。それってつまり、過程は違えど今の状況が当初の計画まんまってことか?
でもいや、まさか、そんな。まさか、そうしたいがためにこうなる方向に誘導されていた?
「えぇー……」
偶然だと思いたい。
「ふふふ、心当たりがあるみたいね」
「はっ」
つい漏れてしまった嘆きを慌てて両手で押し止めて、私は大きく首を振った。
――こんなのマリアさんの思う壺だ。これ以上、余計なことは考えない!! もう何も考えず、二人のやり方にそのまま従おう、うんそうしよう。結婚は嫌だけど!
「なーんて」
「?」
「ごめんなさい、ちょっとふざけてみただけ」
「へ?」
ふざけた、だけ?
「このまま終わりってのもつまらないかなって思って」
マリアさんはふんわりと悪魔のような笑みを投げかける。何となく嫌な予感がする。
私はすぐさま塞いでいた口から手を離し会話を遮った。
「いっ、いやいやー」
この期に及んでそんな心を揺さぶるおふざけはいりませんって。
ほんと、この人は何を考えているのか分からない。
「私は全然終わってもらって構いませんが!」
「そうかしら」
「そうそう!」
この人、なんか怖い。
こんなに大人しそうなのに、こんなに清らかそうなのに。
その時だった。
「おーい、ルセリナちゃん。大体話は煮詰まったよ」
ベルさんが私に声をかける。
――よかった、助け船。
彼の声に天から蜘蛛の糸が降りてくるような救われた気持ちになったのは言うまでも無い。
「あーそうですか。決まりましたか、よかったよかったー」
ベルさんが介入すれば、この二人だけの何とも言えない空気も終わってくれるだろう。今の話も流れる。
花嫁になることはちっとも良いとは思わないけど、それでも空気に包まれるよりはいくらでもましだ。
「それで今後なんだけど」
「お任せください、このルセリナ。花嫁だろうが花婿だろうがいくらでも……」




