81.犯人が手のひらを返してそのままお縄についた!?
「そう言われると、そんなやり取りがあった気がするね」
レイズ様の言葉を受け、名指しされたベルさんも首を小さく縦に振った。
「だからなんだよ」
レイズ様が促す。
「つまりですね」
その流れに乗りながら私は言葉を続ける。
暴いてやろうじゃないか、そのカラクリを。
「そこに仕掛けがあるんじゃないですか、マリアさん?」
「ええ、そう、そうね。その通り」
にっこりと柔らかな笑みを浮かべたマリアさんはそう言って話を認めた。……あれ、認めた。うん? 認めた?
「認めたぁ!?」
今聞き間違いじゃなきゃ「その通り」って肯定したような。
「ええ、認めるわ」
にっこりと笑顔のまま彼女はそう口にした。
口にしちゃったんかい!
「ちょちょちょ、ちょーっと!」
いやいやいや、待て待て認めるの早すぎじゃない?
「ここはもうちょっと粘ったりする場面なんじゃないですか? しらを切るとか何かもっとある場面でしょう!?」
「アホか、なんだよ場面って」
「いやいや、レイズ様。アホじゃないですって!」
これだから素人は。
こんなにあっさり犯人が犯人だと認めてしまったら、お話の展開的にどうなのよってなるじゃない。私がここでカッコよく犯人を追い詰めて、真相にたどり着く展開じゃないのこれは。
「ごちゃごちゃうるさいな。別に本人がやったって認めるならそれで決着つくだろ」
「そうですね、決着ついちゃいますね!」
「じゃあいいだろ」
「いいですね!」
でも良くない!
レイズ様の言っていることに間違いはない。でもこれじゃ、私のこれまでの緊張感とか気苦労とかが消化不良になってしまう。
「ったく、何なんだよお前は……」
君にはこの気持ち、一生分からないだろうね。
「まあまあ、詳しい理由はよく分からないけどルセリナちゃん元気出して」
「……はい」
ありきたりな言葉だけど、ベルさんのその優しさが骨身に染みた。
「んで、マリアが何か仕掛けてたってことでいいんだな?」
「ええ、いいわ」
落胆した私の隣では何事もなかったかのように次の会話が続けられていた。
「ドレス審査で暴言を吐いた花嫁候補がいたのも、料理審査で暴走してしまった花嫁候補がいたのも、さっきのダンスでそこの彼がルセリナちゃんを放置してしまったのも、みんな私のせいよ」
「俺のも」
「ええ」
マリアさんはベルさんに笑いかけた。
「全ては私の魔法の力よ」
「魔法の」
「力……」
魔法。この世界では何故かあまり重要視されていない力。それがあればもっと世の中を快適に過ごせるはずなのに、みんな何故かあまり極めようとはしない。
その力を彼女は使っている。
「大した魔法じゃないの。感情をね、増幅させる魔法」




