79.緊急謝罪会見
「本当にごっっっっめんね、ルセリナちゃん」
頭を地面に擦り付けそうな気迫で謝罪をするベルさん。
「いや、そこまで謝らなくても」
私をダンス会場に放置したはずの彼は、逃げることも避けることも無く、とてもあっさり簡単に捕獲することが出来た。
私がやった事といえば簡単。彼の元に足を運び、名前を軽く呼んだだけ。しかしそれだけでも彼の反応は手の平を翻すがごとく瞬時に変化した。
「ルセリナちゃんをエスコートすると言っておきながらこの状況、どう考えても最低最悪でしょ。ごめんね、本当に」
この反応である。
様子から見るに、私を放置した自覚はあるらしい。そしてそれが悪いことだとも理解している。
「反省するなら最初からこいつを最後までエスコートすればよかっただろうが」
全くその通りである。
「そ、それはそうなんだけどさ」
途端に動揺し出すベルさん。しどろもどろになりながら言葉を続けた。
「俺だってそんな事しようと思ってしたんじゃ無いよ。でもあの時は、何故か頭の中にモヤモヤとした感情が沸いてきて、そしたら体が妙にルセリナちゃんを避けたくなって……なんだろう、困らせてやりたい、みたいな?」
「困らせたいぃ?」
困らせたいねぇ。
何言ってんだコイツと言わんばかりのレイズ様の視線に苦笑いを浮かべたベルさん。若干気の毒だ。
「あ」
「うん?」
「分かった」
「何が」
「レイズ、お前のせいだ」
「あーなるほど俺ね、俺のせ……なんでだよ」
「レイズがルセリナちゃんと仲がいいのが悪い!」
「はぁー!?」
ま、そうなりますわな。
私はあくびを噛み殺しながら、仲良し二人組による熱い恋の行方を巡る青春の1ページのような物を傍観した。
「ベルが何を言ってるのか俺にはさっぱり分からないんだけど」
「はー、これだからなんでも手に入るお坊ちゃまは困るね」
「いやお前も似たようなも……」
「いいかい、レイズ。君は実家を追放されて、本来なら不幸のどん底を彷徨う状態のはず。それなのに、蓋を開けて見ればルセリナちゃんとなんだかんだ楽しそうにしてるじゃないか」
「「どこが」」
「そういうとこだよ!」
いや、今のはたまたま私達のツッコミが被ってしまっただけだろう。そりゃあツッコミたくなるでしょって。
はーはーと息を切らせながら言い切ったベルさんをレイズ様は怪訝な表情で見下ろしている。
もうこれ以上は可哀想だな。
「落ち着いて下さい」
私は椅子から立ち上がるとレイズ様の隣に並んだ。ちょうど椅子に腰掛けているベルさんを二人で見下ろした形だ。
「ベルさんのその気持ちはきっと、そうなるようにコントロールされているんですよ」
少しだけ声を張り、周りにも聞こえるように告げる。
「そうですよね、マリアさん」
「あらあら、見つかってたのね」
艶のある黒髪の女性はゆっくりと廊下の端から姿を覗かせた。




