68.好感度による分岐発生という幻覚を見た
その場の勢いで怪しいことを羅列していたら、名探偵みたいになっていた。
いや、なっていると思っていた。
「別にその発言があったからって、マリアが怪しいとはならないだろ」
……はい、そうですね。
名探偵編、完。ご愛読ありがとうございました。
「マリアに限らずそんな言葉、どこの誰でも普通に出るんじゃないか?」
「うっ」
確かにね。
マリアさんの発言はその後の騒動とシンクロする部分がある。
けれどその発言が、彼女が事件に関与するほどの怪しい人物であると証明するほど特徴的なものかと尋ねられれば、そうでもない。
「おっしゃるとおりですよ」
つまり対外的には、これ以上マリアさんを怪しいとする根拠はない。
あるとすれば、それはもう私の勘だけだ。
でもどこの誰が、『私の中の嫌な予感レーダーがマリアさんは怪しいって警告音を発しているんで疑って下さい』と言って話に乗ってくれるだろうか。病院に連れていかれるのがオチだ。
「いやしかし」
なんだ、誹謗中傷なら受け付けないぞ。
「フェリクスの爆弾の時も馬車が故障した時もそうだけど、お前よくその程度の出来事で他人を警戒出来るよな」
その程度の出来事ね。
何気なくそんな台詞を口走るレイズ様をぼんやりと目で追った。
そりゃあ異世界転生する前の世界では、色んな漫画や小説を読み漁ってきたからね。ちょっと変なことが起これば、裏で何か起こってるのかな、ってついそう思っちゃうっていう。なにせ初っ端が異世界転生ですからね。眠っていた私の中二病な心もうずくってもんだ。
「どっちも私の見立てに間違いはなかったじゃないですか」
フェリクス様は餞別と偽って爆弾で命を狙ってくるし、馬車が壊れて立ち往生したときに現れる女の子は盗賊だったし。どっちも嫌な予感がした時には、大体そういう結果が返ってきた。
どっちもバットエンドをギリギリ回避出来ただけで、被害ゼロってわけじゃなかったけど。
「……」
「ほら。今、確かにって思いましたよね?」
「うるさいな」
そうは言っても、一瞬図星をつかれたような表情だったの見逃しませんでしたよ、面白いから。
さすがに自分のことしか考えないレイズ様でも、これまでの事は若干頭に入ってるらしい。
とはいえこの手の味方を増やそうとする行動は、現行犯を押さえるぐらいの確実な証拠を掴まないとダメらしい。仕方ない、今回は諦めて別のプランを考えるか。
「……分かったよ」
「ん?」
「お前のその話。一応肯定的に考えておいてやる」
え、嘘、本当に?
絶対駄目だと思ったのに、意外な展開。一緒に行動するうちに好感度でも上がってた?
「急に笑って気持ち悪いな。どうしたんだよ」
「こ、これはもしかして、日頃の信頼の勝利……ですか?」
「どうしてそこまでうぬぼれられるんだ、お前」
やっぱり辛辣。
その後も結局態度は相変わらずだったので、好感度は別に上がってないんだなと思いました。まる。




