65.誰か一人を選べと言われたら
突然、ステージに乱入し怒り散らした女の子。
突然、審査用の料理を自分で食べてしまった女の子。
料理審査も難なく通過し、今は次の審査が始まるまでの待機時間。ロビーで休憩を取りながら、私は一次と二次の審査で遭遇した奇妙な出来事について考えていた。
「やっぱあれはおかしいでしょ」
「おかしいって何が?」
「うわっベルさん」
目の前に唐突にベルさんが現れた。いや、私が気付かなかっただけか。そういえば料理審査が終わった後、会場の外で待っててくれたんだっけ。
だから今この場には、ベルさんとレイズ様、そして一緒に会場を出たマリアさんが揃っている。
「真剣な顔してどうしたの?」
ベルさんが覗き込む。
さて、どうしたものか。
この審査、絶対何か変なことが起こってる。いくら世の中には色んな人間がいるとはいえ、審査をぶち壊すような破天荒な人間、同会場に二人も三人もいていいものじゃない。
だとすれば、自分の身を守るためにも仲間は欲しいところ。
「あー……」
ベルさんを見上げた。
相変わらず胡散臭そうな雰囲気を除けば、今のところ彼にこれといって怪しいところはない。胡散臭い雰囲気にしたって、それは単なる私の印象に過ぎないだろう。でもな。
シュタイン先輩の忠告がなんとなく気になった。
「えっとー……」
仕方ない。ここは一つ腹をくくるか。
「えっと、そうそう。やっぱりレイズ様はおかしいなって思って」
「え、レイズ?」
「はぁっ!?」
「あら」
三者三様の反応をありがとう。
その中でも、何故かさっきからこちらに対して我関せずといった表情を決め込んでいたように見えるレイズ様が、手に取るように露骨な反応をみせた。自分のことですし、まあそりゃそうなりますよね。
「おい、お前今なんて言った」
持たれていた壁から身を起こし、こちらを睨みつけるレイズ様。
「聞こえませんでした? レイズ様はおかしい。そう言ったんですよ」
「なんでいきなりお前にそんな事言われなきゃいけないんだよ!」
「え、なんでってそりゃあ……」
しまった。その辺は特に考えてなかった。あー、どうしよう。えっと、うんと。
「そっ、そうだ、そうです、レイズ様はさっきから、お疲れ様の一言もなくずーっと静かだったし!」
静かだった気がする。確か、きっと、そうだった……はず!
「うるさいな。俺だって静かになる時くらいあるだろ」
「ああ、ルセリナちゃん。それはきっとさっきの審査で」
「ベルは黙ってろ」
「御意~」
よし、ここまではなんとか上手く会話を運べた。あと少し。
「とにかくっ、今のレイズ様は何かおかしいです!」
そうして何気なく席をたって、レイズ様の元に歩み寄る、っと。
ベルさんとマリアさんに背を向けながら、レイズ様の前に立ってそれから――
「は?」
「『は?』じゃなくて。分かりましたか、レイズ様!」
分かって貰わなきゃ困る。
口パクで伝えた『この後、二人だけで話がしたい』というメッセージ。
頼むよ、本当に。




