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63.それはあなたをずっと見ていたからに他ならない


~観覧席~


 ルセリナの調理した鍋から、カレーではなく別の料理が出てくる様子を、ヒューベルとレイズの二人は遠く離れた観覧席から眺めていた。


「あ、ルセリナちゃんがこっち見てる」


 ルセリナに向けてにこやかに手のひらをひらひらとさせるヒューベル。


「いや、どう考えてもおかしいだろ」

「うん?」


 隣では対照的にレイズが眉間に皺を寄せ、怪訝な表情を浮かべていた。


「カレー作ってたはずなのに、蓋を開けたら別料理になってるって」

「あー凄いよね、彼女の魔法。あんな風に魔法使える子、俺初めて見たよ」


 うんうんと頷くヒューベル。


「そうじゃなくて」

「?」


 問題はそこじゃない。レイズは人差し指で相手の胸元を一押ししすると、キッと端正な顔でみつめた。


「そんなルール違反、見つかって失格になるに決まってるだろ」

「なるほどルール違反かー」


 そう言葉を呟いたヒューベルの表情には、レイズの指摘に動じる様子がなかった。その代わりに。


「誰がそれを見てるの?」


 余裕のある薄い笑み。ヒューベルは、幼子の未熟な疑問に対する答えを導くように、レイズに向けてそう訊ねた。


「……っ」


 妙に透き通った声。

 まるで全ての答えを見透かしたような問いかけに、レイズは言葉にならず視線を落とした。


「この審査、会場内にこれだけ料理をしている子がいるんだよ」


 一次審査で思いのほか脱落者が多かったとはいえ、会場内にはそれこそ余すことなく特設のキッチンが並べられている。ざっと見ても50人。そのくらいはこの審査で料理をしているだろう。


「おまけに僕たちを含め、花嫁候補じゃない人の席は彼女達からこんなにも離れてる」


 そう言うと軽く2~30メートルはある距離の床をヒューベルは視線で謎った。


「でだ。そんな中、パートナーでも無い人間が、『特定の女の子一人』をずーっと見ている可能性って、一体どれくらいなのかな?」

「……っ」


 しかもルセリナに至っては、昨日突然に花嫁選びの参加が決まっている。事前情報や過去の経歴から注目される要素も全くない。

 無名だからこそ生きるダークホース。

 レイズは心の中で小さく舌打ちをした。整った顔が再度不快そうに歪んだ。


「つまりさ」


 慎重に料理を運んでいるルセリナ。彼女の行動を微笑ましく眺めながら、ヒューベルは言葉を続けた。


「仮にルセリナちゃんが何かをやっていたとしても、それを見ている人間なんて、普通はパートナーの俺しかいない。もし他にいるとしたらーー」


 落ち着いた言葉。

 言葉はレイズに、まるで何十分も過ぎたかのような錯覚を与える。


「いや俺は」


 言葉が続かなかった。

 中途半端に会話を止めてしまった友人の代わりに、ヒューベルが別の言葉を口にした。


「そんな変わり者は……レイズ、君くらいだろうね」




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