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60.あなたの忘れられないその味は、実は私が作りました


「ったくお前こそ、人の心配してる場合じゃないだろ」


 耳にはっきりと届く溜息。レイズ様は呆れたように私を見下ろしていた。


「次の審査、なんだか分かってるよな」

「ええ、分かってますよ。料理審査でしょう」


 私も負けじと相手を見上げた。

 一瞬だけ目が合った。


「……なんでそんなに自信ありげなんだよ」


 レイズ様はそう言うとすぐにそっぽを向いた。悪かったな、自信があって。

 料理審査。それはその名の通り、料理の腕前を披露する審査である。ベルさんの話によると小料理屋を経営出来る腕の人がゴロゴロいるらしい。


「だいたいお前、料理下手だろ」


 うわ、ストレートな言葉。ちょっとはこう、オブラートに包まないのかね。ダイレクトアタックかよ。


「まあそうですね、ご存じの通りです」

「ご存知の通りって……大丈夫なのかそれ」

「……」

「おい、メイド」


 ふう、やれやれ。そんなに答えを急かすなって。困ったお坊ちゃんだ。


「ルセリナちゃんなら大丈夫だよ!」

「大丈夫、みたいです」

「なんで料理を作らないベルの意見が優先されるんだよ」


 いやほんと、なんででしょうね。


「作るのはお前だろ」

 

 ごもっともで。


「ふふっ」


 隣でマリアさんが肩を震わせていた。


「おい、マリア」

「あらごめんなさい。おかしくってつい」

「お前な」


 眉間にシワが寄るレイズ様。でもマリアさんはあまり動じているようには見えない。


「ふふふっごめんなさい。でも私、ルセリナさんなら大丈夫だと思うわ」

「何を根拠に」

「なんとなく」

「なんとなくぅ?」


 すごい。なんとなくで味方増えた。


「ほらレイズ様。マリアさんもそう言ってますし」


 だから多分大丈夫。


「……ったくお前らは。こいつの作ったカレーを食べたことが無いからそういう事が言えるんだ」


 カレー、そんな時もあったなぁ。


「懐かしいですね」

「懐かしいか、馬鹿! おかげで俺はしばらくカレーという存在を脳内から抹消したんだぞ」


 それは可哀想に。


「あの頃は大変でしたからね。使用人がついに私とシュタイン先輩以外みーんな辞めて、仕方なく私が料理を作らなきゃいけなくなったりして」


 おまけにそれ以外の家事も自分一人でこなさなきゃいけない状況で、いやー地獄だったなぁ。


「お前、何仕方なかったような雰囲気出してるんだよ。どう考えてもそんな事じゃ済まされないからな?」

「はいはい、まーまーまーレイズ。そんなに怒らないで。これだからお金持ちのお坊ちゃんは贅沢で困る」

「誰が贅沢だ」

「だってカレーでしょ? 誰が作っても美味しいに決まってるじゃない。それに文句を言うとか贅沢以外の何者でもないよ」


 うんうん、ベルさんは良いことを言うなー!


「あのなー……毎日だぞ」

「毎日」


 そう。あの時は色々面倒すぎて、とりあえずカレーでいいやって、連続で同じカレー出してたっけ。


「い、いやいや」

「……」

「カレーなんてのは、一日二日寝かせると美味しくなるって話で……」

「六日連続だぞ」

「………………六日?」


 うん。それはなんというか、本当に申し訳無い。私もさすがにやりすぎたなって思ったよ。

 それでもみんながお腹を壊さなかったのは、私の魔法のおかげです。

 あってよかった防腐魔法!

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