47.仲良し従者コンビ(仲良し度★★★)
「まさか、参加されるおつもりではありませんよね?」
え、え、え、待ってちょっと、やだ、これどう答えたら正解ルートなの???
えーっと、えーっと、この場合は……。
「い、いえ、私は」
「……」
「別に参加しなくてもいい……いえ、参加なんて大反対なんですけどね! レイズ様はそれで納得してくれないような気がするんですよ。ほら、あの人昔から私達下々の意見なんて聞かないでしょう? きっと参加しないと、ご本人の欲求的に国外に出るのは無理かなぁ~なんて」
どうだ、これでどうだ。大丈夫、嘘はついてない。
シュタイン先輩も怖いけど、レイズ様も怖いもん。先輩は流石に犯罪行為は侵さないし、正当な理由があれば見逃してくれるけど、レイズ様は気に食わなかったら本気で剣を抜く可能性だってあるもん。私まだ死にたくない。これが正解のハズ……
「……分かりました」
「!」
よしっ!!!!
あーよかった。この返しが最適解だった。そうだよね、シュタイン先輩はレイズ様と違って人の心が分かる先輩だもん。むざむざとレイズ様の反感を買うなんてことするはずがないよ。
それにこの状況なら、理由もはっきりしているし、気乗りしない私は花嫁候補として出る必要も無くて一石二鳥……
「ルセリナさん、貴女、明日参加してください」
「はい!?」
今、なんと。
「しゅ、シュタイン先輩……? 聞き間違えでなければ、今、参加しろと」
「言いました。明日は貴女も花嫁候補として参加するのです」
「本気ですか!?」
おいおい、それはさすがに手のひらクルーだとしてもやり過ぎじゃない?
そんなに意志がブレブレの人だなんて思いませんでしたよ、私。
「いいですか、明日はいい具合に高評価を得て、花嫁の候補に残り続けて下さい」
「そっ、それって」
それって何、私は用済みだからここで花嫁になって安泰に暮らせってお達しですか。そんな簡単にかつての同僚の切り捨てるのですか!? 酷い! 冷たい! 悲しい!
「……何か頭の悪そうなこと考えていそうですね。いいですか、貴女は花嫁候補に残り続け、いいところまで残ったレイズ様の花嫁候補もろとも敗北へと叩き落とすのです」
「叩き、落とっ!?」
「中途半端な小細工だとレイズ様は勘付く危険がありますからね。程よい具合に数が減ってきたところで、ドラマチックに退場してもらうのがいいでしょう」
「ドラマチックにって」
そういうのってドラマチックとか関係あるの。そんなリアル体感型恋愛バラエティドラマじゃないんだからさ。そして何より、その発想が怖い。
「そうすれば、レイズ様は程よく諦めてこの街を出て行きますし、ルセリナさんはお供するのに遜色ない優秀なメイドだということも証明できます。よかったですね」
「う、あ、えっ」
そ、そりゃあ優秀なメイドだって評価されるのは嬉しいけどさ。
「私がいい具合まで候補に残れるって保証が何処にも……」
確かにレイズ様の手前、自分が花嫁にもなれるとか言っちゃったけど、本当になれるかは別の話で、ましてやドラマチックを演出するほどの余裕も知恵も無――
「ルセリナさん」
「は、はい」
「出来ないのではありません。やるんです」
それ、どこのブラック企業の発想!?
「大丈夫。貴女はとてもとても優秀なメイドです」
「そ、そりゃどうも」
心が全然こもってない! ちっとも嬉しくない!
「お屋敷での汚名、ここで返上してもいいのではありませんか?」
「うっ」
この人、それを引き合いに。
「そうすればきっと――――」
……。
先輩は、小さな子供をあやすように、優しい口ぶりで私の耳元で囁いた。
「…………分かりました。任せてください」
「ああ、それはよかった。期待していますね」
「はい。このルセリナ、見事花嫁候補として勝ち残り、ドラマチックにレイズ様を蹴落としてみせましょう」




