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33/151

33.相手を放置して平然とデートに行っちゃうのがこの物語です。

「お姉さん、俺と一緒にお茶しませんか?」


 典型的なナンパの誘い文句。

 ああ、どうして私がこんな状況に。


 それは数時間前にさかのぼる。


===



「恋愛の街アロマスク?」


 レイズ様に従うまま移動魔法で辿り着いた先は、国境に最も近いとされる街アロマスクだった。別名『恋愛の街』。


「そんな街初耳ですね。レイズ様は一体どこでそんな情報を」

「情報も何も、普段から時々遊びに出向いたりしていただけだ」


 こんな遠い街まで!?

 うっわーこれだからお金持ちはやることが違う。高価な移動魔法を紙切れのごとく使うんだから。

 とはいえ今回の情報は、国外追放への大きなショートカットになったわけだから良しとするか。


「で、ここで国外を出るのに備えて、色々揃えるって訳ですね」

「いや、そういうつもりはない」

「え」


 そういうつもりは、ない? じゃあ一体どういうつもりで。


「ちょっと遊んでくる」

「はい?」

「今までは真面目に堅苦しく生きていたからな。少しここで羽を伸ばしても罰は当たらないだろ」


 真面目ってどこが。ちょっと前に普段から時々遊びに出向いて~とか言ってたよね。全然、少しばかりの羽を伸ばす機会でもなんでもないよね。


「あのー」

「なんだ」

「それで私はその間何をしてれば」


 かたや遊んでるのに、こっちは真面目に国外追放の準備とか絶対嫌だぞ。


「お前も遊べばいいだろ」

「え?」

「言っただろ、ここは恋愛の街。歩いているだけで自由に恋愛が楽しめる。そうだな……俺が100人くらい相手が見つかるんだから、お前のような残念なメイドでも1人や2人は声ぐらいかけてくるだろ」


 私がレイズ様の百分の一って。


「し、失礼な! 私だってこのメイドという器を脱ぎ捨てて真の力を発揮すれば100人や200人くらい余裕です!」

「メイドの器を脱ぎ捨てたら、いよいよお前はただの住所不定無職だろ」


 イラッ。ほほう、そういうこと言っちゃう? いいよ、それならこっちだって言ってやる。


「いいですか? 今までレイズ様に声をかける相手が多かったのは、どう見てもその容姿と財力のおかげです! しかしあなたは今、追放されて財力を失った身! その魅力は半減、いいえ財力がない顔だけの男なんて論外ですよ! 理解したのならさっさと国外を出るための準備を……いない、だとっ!?」


 イッツア空洞。漫画みたいにさっきいた場所にぽっかり空間が開いてるぜこんちくしょー。


『ああお姉さんたちも旅の人だったんですね。俺も丁度旅をしていて……』

『あらそうなの。よかったら一緒にお茶でもどう?』

『是非。ご一緒出来て光栄です』


 なんて奴だ。早速あっちの方で女の人達と軽快なトークで盛り上がっちゃってる。

 ……ああそうか。そうだよこの人、元々あのお屋敷でも複数の女性を連れ込んでワイワイしてたんだった。余りにも状況が変わり過ぎて忘れてた。

 でもそうだからって許容するわけにはいかないんだな。残り少ない資金を女性とのお茶に使われちゃたまったもんじゃない。


「ちょっと待って下さいよ。レイズさ……うっ!」


 さ、殺気!? 

 これはあれだ、滅茶苦茶温厚に会話してるけど、邪魔するものなら問答無用で殺しにかかるやつ。


『あら、どうかした?』

『いえ、野盗かと思ったら野良猫でした』


 ……うわぁ。

 お姉さーん、やめといた方がいいですよー。そいつ、性格極悪ですよー。


===


 という訳で、私は一人喫茶店の片隅でアイスコーヒー片手に三時間ほど粘っている。


「お姉さん、俺と一緒にお茶しませんか?」

「……いえ、結構です」


 見りゃ分かんだろ。こっちはもう既に一人でお茶してるんだよ。


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