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23.心の痛みは誰のせい


「そ、それはマズいです。女性に手をあげるのはさすがに! この物語が終了してしまう……ってあれ?」


 それは移動魔法? 確かこの人達が持ってたやつ。


「なんですぐ暴力的な発想になるんだ、お前は。俺をお前と一緒にするな」

「え、ええー」

「ええー、じゃない」


 いやいやだってこの間、私の足思い切り踏んだじゃん。

 アリスちゃんとの一件、忘れてませんよ私。


「おいこれ。もし落としたら……」


 クビか。


「はいはい」


 ぴらっと紙が一枚宙に舞った。すかさずそれをキャッチする。

 普通に手渡せ、普通に。っていうかよく考えたらこの状況で、落としても別にクビにならないな。ああ、長年のパシられメイド根性が染みついてるらしい。


「これが移動魔法か」

「み、みたいです」


 何の変哲もないA4くらいの一枚の紙きれ。これが移動魔法。

 この世界では魔法を購入するシステムがあり、これがあれば知識も魔力も無しで一回分の魔法が使えるのだ。便利な世の中である。ちなみに私はそんな高価な物に手を出した事は無い。


「それを盗むつもり?」

「えっと……」


 チラッとレイズ様の方を見る。

 これといって答えるつもりはないらしい。


「み、みたいです」


 仕方ないので私が答えた。たぶん間違えてはいないだろう。


「ふふっ」


 彼女は静かに勝ち誇ったような笑みを浮かべた。その表情は笑っているのに何故かとても冷たい。


「あなた達も結局私と変わらないじゃない」

「……」

「やっぱりその血はローザ譲りね。穢れているわ」


 ちくり。ちくりちくり。


 何故か心が痛む。

 確かに私達は移動魔法を盗もうとしている。だからもちろんそれは悪だ。言われたところで心なんて痛まない。


 それなのに心がモヤモヤするのは、きっと――


「いっ言っておきますけどね!」

「あら、何かしら」


 彼女は私を見上げた。

 これは言っておくべきなんだ。


「レイズ様は――」


 たとえ本人が拒んだとしても。

 だってやっぱり腹立つじゃないか。


「ローザ様のもごごっ」

「やめろって言ったろ」


 クッション!?

 え、ちょっと、なんで。今ちょうどヘイトを解消する場面じゃなかった!? 私がこう、今度こそレイズ様をかばってジャジャーンみたいな展開になるはずだったんじゃ。それをまさかクッションって。というか、これは――


「苦しいっての! 殺す気ですか!?」


 もぎ取ったクッションはボフッと音を立てて相手の胸元に当たった。


「あーもう。せーっかく私がレイズ様の株を少ーしでも上げてあげようと思ったのに!」

「そんなもの頼んだ覚えはないだろ。お前は俺の言ったこと理解してるのか?」

「理解ぃ~?」


 なんて面倒臭いやつだ。


「寝てるメイちゃんを起こさないように、余計なおしゃべりをしたくなかったとかじゃないんですか? それでさっさとこの家を出て行こうとしたんでしょ」

「……」


 ほら当たった。

 私が口を開くたびにうるさいとか黙れとか言われたらそりゃ少しはそう思うっての。


「でも腹立つじゃないですか。こっちの気も知らないで。そりゃ一言くらい言い返したくなりません?」


 私はなる。


「大丈夫ですよ、少しくらい。メイちゃんはベッドですやすやと」


ガタン


 ん? 物音。


「……お母さん」

「メイ!?」


 これは。


「…………レイズ様。メイちゃん、起きてるんですが」


 幻覚か何かだろうか。


「そこまで察してて気付かなかったのか」

「ええ、全然」


 ってことはレイズ様は気付いていたのか。


「はぁ……お前って本当に駄メイドだよな」

「……まあ、否定はしませんよ」


 この事態、さて一体どうやって収拾をつけようか。


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