表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

137/151

137.嘘でした。恋愛小説じゃなかったです。


 我儘令息と平凡メイド。

 価値観の違う私達二人の関係は、決して交わらない永遠の平行線、だと思ってたのに。


「一緒に暮らすとなると、まずは住む場所探さないとな」


 噂の我儘令息ことレイズ様は、それがさも当然であるかのように、さらりと言葉を口にした。

 私達二人の間に、仲良く暮らしてハッピーエンド、そんな展開もあるの? えっほんとに?


「え、ええ」


 単調な返事をするだけで精一杯だった。

 どうしてこうなった?


「住みたい場所はあるか? 俺はお前と一緒ならどこでもいいが」


 次々と生み出される言葉たち。

 今までだったら絶対にあり得ない。急なキャラクター改変にも程がある。

 レイズ様そんな性格じゃなかったでしょ。

 ツッコミが周回遅れになっていた。


「あ、はは、そうですか。私と一緒ならどこでもね……」


 やばい、寒気がしてきた。

 きっとこれが少女漫画なら背景に薔薇が舞っている事だろうよ。

 お花畑空間はどんどん広がりを見せていた。


「しかし驚いた、俺の演奏を聞いているやつが居たなんて」


 キラキラオーラを振り撒きながら、レイズ様は更に話を続けた。


「お前と俺にはそういう運命があったんだな」

「……はあ」


 間の抜けた返事が勝手に口から漏れる。

 運命ってなんだ。

 そんなもの普段なら軽く一蹴しそうなのに……いや、待てよ。現に一蹴していなかったか?


「レイズ様」

「うん、なんだ?」


 私を見つめる相手の外見は特に変わらない。無駄に顔だけがいいレイズ様そのものだ。でも。


「本当にこのまま帰らなくてもいいんですね?」

「勿論だ」

「相手にまんまと嵌められて、命の危機まで与えられて、そんな屈辱を受けたままで本当にいいんですね?」

「ああ問題ない」


 レイズ様は笑った。穏やかに。それはまるで本人では無いかのように――

 

「誰にも告げずひっそりと、実は毎晩傍に居てくれた女性と一緒にいれれば、俺はそれで満足だ」

「……」


 涼しい風が吹き抜ける。

 生暖かいその風は静かに私の髪を揺らした。


「どうした?」


 そう言って、目の前にいる整った顔の青年は、不思議そうに首を傾げた。


「具合でも悪いのか? なあ、ル……」


 手のひらがぱしりと音を立てた。

 私の顔に優しく触れようとした右手は、私の手によってゆっくりと外に弾かれる。


「運命?」


 私は口元を緩めた。


「違います。レイズ様はそんなもの間違っても受け入れませんよ」


 だって最初に言っていたじゃないか。 

 そんなもの『つまらない』って。


「帰らなくていい? 問題ない? これも違う。あの人がここまで馬鹿にされたのにそれを見過ごすなんて、絶対あり得ません」


 周囲が彼を宥めても、彼のプライドが許さない。


「そして最後に」


 私はしっかりと前を向いた。


「あなたと”毎晩”一緒に居たなんて、私は一言も口にはしていませんよ」








「ねえ、あなた、一体誰ですか?」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ