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136/151

136.見よ、これが恋愛小説だ!


 恋愛要素とまで言ってしまった相手の正体が、レイズ様だったらあなたはどうする?

 私はもれなく、死ぬ。


「レイズ様、これを」

「なんだこれは」

「遺書です」

「しまえ」


 あっさりと意思は否定され、遺書は行き場を失った。

 事態は最悪。

 これが物語の1ページなら、即刻非公開にしてお蔵入りにするし、やり直せるなら第一話のあたりからやり直したい。


「もうやだ、帰る」


 私はふてぶてしくも椅子に腰かけるレイズ様を一目見ると、その方向とは逆へと体を向けた。


「帰るってどこに」

「お屋敷に」

「何言ってんだ」


 深いため息だった。

 がたりと椅子から立ちあがる音が聞こえる。


「あ、ちょっと」


 背後から強引に手が伸びる。

 レイズ様は私から遺書を奪い取ると、ビリビリと音を立てて引き裂いた。


「俺達、追放されてるだろ」

「……知ってますよ」


 細かくなった遺書が風に飛ばされていく姿を目で追いながら、私は肩を落とした。

 可能なら私も一緒に飛ばされたいものだ。


「じゃあなんで帰るなんて言ったんだよ」


 隣に並んだレイズ様は雑な口調で訊ねた。


「それは」


 私は視線を落とした。


 言えない。

 言えるわけがない。

 気になっていた相手の正体がレイズ様だと知って、ちょっと意識してしまったからだなんて。

 更に加えるなら、そのせいでレイズ様の顔もまともに見ることが出来ない。


「そのー……」

「なんだよ」


 私は地面の砂粒に目を泳がせた。

 まずい。

 これは非常にまずいぞ。

 返す言葉が見つからないのもさることながら、レイズ様が隣にいるだけですごくドキドキする。

 私とあろう者がそれほどまでにこの男を意識しているというのか。


「俺は帰らないからな」


 私が答えを返すよりも早く、レイズ様はそう言葉を口にした。

 それだけじゃない。


「お前を帰すつもりもない」


 そう言ってレイズ様は私の手を力強く握った。


「せっかくこうしてお前と二人になれたのに、また屋敷に戻って主人と従者の関係に戻るなんて俺は嫌だ……この意味、分かるよな?」

 

「……」

「……」


 ………………………………………………っわーーーーーーーーーーーー!


 突然どうした!?

 何これ一体。何展開が始まったの? どこへの忖度?

 この物語、ついこの間まで財産とか陰謀とかが渦巻くクソ展開じゃなかった? 書き手でも変わったか?

 

「わ、わた、わた、わたしは」


 冗談じゃない。こんな展開になるなんて、ほんの数十分前までは微塵も考えてなかったのに!

 サクッとお屋敷に戻る方法探して、あのクソガキお坊ちゃまを一発ぎゃふんと言わせたいとか、そんな事しか考えてなかった私に突然の恋愛展開はハードルが高すぎる!


「このまま二人で一緒に暮らす、いいな?」

「あ、う、うん……はい」


 同棲エンドでフィニッシュですか!


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