134.蛇足
昔々あるところに、異世界転生をしてしまった少女がおりました。
彼女の名前はルセリナ。
身寄りはおろか初期設定ゼロの状態で転生してしまった彼女は、とりあえず生存していくため、裕福そうなお屋敷のメイドとして働くことに決めたのでした。
「……ご都合主義バンザイってね」
けれど現実はそんなに甘くはありません。
「ちょっと、ルセリナさんはいる? ルセリナさーん」
「はいはい、ただいまー」
メイドとして雇われたからには当然メイドとしてのお仕事が待っていました。
「今日はこの辺り一帯の草むしりをお願いね」
「え、でも私、さっき別の先輩から言われた豆のスジ取りの作業が終わってないんですが。それが終わったら、広間の掃除と犬の散歩もあって、それと」
「じゃあそれが終わってからでいいわ」
「いや、それだと日が暮れちゃ……」
「よろしくね」
まるでブラック企業。
新人のルセリナは先輩メイド達に言われるがまま、膨大な雑用をこなすはめになったのです。
「白馬に乗った王子様が来るならここですよ?」
全然来ませんでした。
ああ、なんて可哀想なのでしょう……!
===
「……というわけですよ」
「どういうわけだよ」
時は変わって現在。
過去語りを終え、ふと目を開くとそこにはレイズ様の退屈そうな姿があったのでした。
ま、退屈なんて言っても、この人ちゃっかり座ってるけどね。
レイズ様が腰掛けているのは、私がアロマスクの街であらかじめ購入・魔法で収納していた椅子だ。
この森のど真ん中に、食卓で使う簡易な椅子は明らかにアンマッチかもしれないけど、レイズ様が座りたいって言うんだから仕方ない。
「だからですね」
それでも、そんなことはお構いなく偉そうに足を組むレイズ様に私は話を続けた。
「今回はメイドになるのは止めましょう、と言いたいわけです」
「はあ」
明らかな生返事。
こいつ全然分かってないな。
私は首を大きく横に振った。
「やれやれ。いいですか、私達がまず初めにやらなければいけないこと、それは自分の生活地盤を固めることでしょう?」
私は足で地面を叩いた。
「私達はこの通りこの土地に何の身寄りもありません。このまま何もしなければ野垂れ死んでしまうことは確実です」
改めて確認するのも馬鹿馬鹿しいが、これが追放の一番のデメリットだと私は思う。
「そこで安定した収入を得るために一番手っ取り早いのが、裕福な家の使用人として雇われることだと思いますが……」
本当は雇われるにしたって身分とかスキルとかが関係するのかもしれないけど、そこはそれ、この世界はご都合主義の世界なのである。
私はひょいと人差し指を立てた。
「使用人として一から働くというのは結構しんどいんですよ。レイズ様みたいな人ならなおさら」
「俺みたいな人ってなんだよ」
「レイズ様、人の下で働くとか絶対嫌でしょう?」
「死んでも嫌だ」
「ほらね、そういう事です」
二周目で強くなる系は無しでいく。
「ま、だからって別案がある訳じゃないんですけどね!」
「無いのかよ」
「無いですねぇ」
「ま、俺も無いけどな」
「……」
「……」
まだまだ私達は前途多難なようだ。




