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133/151

133.そして伝説は始まった


「なあ」

「なんです」


 あれから10分。

 私達はぼんやりと大きな木の根元に背中を預けていた。

 別にモンスターに倒されて療養していた訳ではない。ちょっと疲れたから休んでいるだけ。

 さっきまで私達を取り囲んでいた彼らといえば、目の前で一匹残らず地面に臥せっている。


「お前って黙ってサポートだけしてればいいんじゃないか?」

「奇遇ですね。私も今、レイズ様は黙って剣だけ振ってりゃいいのに、って思ってました」

「……」

「……」


 互いの性格は理解し合えないが、戦闘においては負けない事だけは理解した。

 私が魔法で敵を足止め、その隙にレイズ様が剣でさばく。

 割と結構な単調作業だが、安定感は抜群だった。


「これからどうする」

「……そうですね、山賊にでもなりますか」

「ならねえよ」


 即却下された。


「違うだろ。こんな目に合わされて、お前はみすみす泣き寝入りするつもりなのか?」


 とげとげしい口調でレイズ様が訊ねる。


「そりゃ嫌ですけど。だからって報復しようにも、追放されてる身ですしね」


 追放されてる人間がどうして報復できようか。

 一回死ぬ? 幽霊になって呪い殺す?


「ふん、甘いな」

「甘い?」


 その表情はやけに自信に満ち溢れていた。

 何かいいアイデアある感じですか。


「確かに俺達は追放はされた」

「されましたね」


 ここが国外かどうかを確かめる術はないけれど、今のところ私達に追放未成立のペナルティが発生していないということは、きっときちんと私達の体は誓約通り国外追放されているということなんだろう。


「じゃあ後は自由ってわけだ」

「ふむ、つまり?」

「元の国に戻っても問題ない、と俺は考える」

「えっ」


 私の思考は一時中断した。

 追放は達成した。したからといって、その効力ってそこで終わる? 終わるのか? 永年の縛りじゃないのか?


「そ、それはどうでしょうか」


 さすがの私も懐疑的になる。


「それでもし、元の国に戻った瞬間、『追放未成立により死亡』なんてなったら目も当てられませんよ?」

「安心しろ」


 レイズ様は不敵に笑った。

 彼はゆっくりと腕を上げ、そのまま人差し指を私の方へと向けた。


「お前がまず試しにやればいい。そこで安全を確認すれば、俺は死なない」

「……え、嫌ですよ」

「は?」

「だから、嫌ですって」


 嫌に決まってるだろが。

 あまりにも馬鹿馬鹿しい。全てに脱力するような、愚策中の愚策。だけど。


「ま、でも」


 くるりと反転し、彼の方へと体を向ける。

 自身満々の提案を私に否定されたレイズ様は、今にも罵声を浴びせてきそうだ。


 私はそっと差し出されていた手を取った。


「確かにここで泣き寝入りは癪ですよね」


 自分は絶対に間違ってない。

 そんな高慢な考え方も私はたぶん嫌いじゃない。


「いいですよ。一緒に一発逆転狙いましょう」

「お前」

「今日から私達は、仲間です」


 世界が止まる。

 まるで物語を飾る一枚の扉絵のように。

 伝説はここから始まる、なんて。ま、冗談だけど。


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